第19話
「Vaffanculo! ……君には『学習能力』というものが無いのか?」
ドアを半ば蹴飛ばすように部屋に入ると、敢えて撃ち抜かなかった女と目が合う。女は突然動かなくなった男の下から這い出ているところだった。
白い肌に赤い鮮血がよく映える、とジャックは無感情に女を見下ろした。ジャックの存在に気が付き、女の目は恐怖に見開かれる。
「……それとも、」
そして、その目に含まれる
「……とんだクソッタレな気違いにでも目覚めたのかな?」
——少し、期待を含めたような、感情。僅かに頬が上気して赤らんでいる。それに、ジャックは嫌悪を抱く。
本当に、とんだクソッタレな女だ。
×
「じゃあ、君のお望みどおりに……たっぷり痛めつけてあげようか」
ジャックは座り込む女の側まで歩み寄り、
「で、どう酷くされたいのかな?」
転がる男の横っ腹を蹴って退け、にっこりと笑みを貼り付けて女の前に立つ。
×
「あのねぇ……こっちは全然、楽しくないんだよ!」
うつ伏せに転がる女の鳩尾を、ジャックは蹴り飛上げた。
『ゔあ゛っ』
蹴り上げられた女は、ウシガエルのような鳴き声を上げ、床を転がる。腹を蹴られた衝撃で中身を吐き戻し、撒き散らされた。その液体の音と臭いに、ジャックは顔を顰める。
「……汚いなぁ」
そして、床に手を付いて咽せる女の背を踏み付け、生温かい吐瀉物に思い切り押し付ける。
「それ掃除するの、誰だと思ってんのかな」
君は死ぬんだからオレの面倒ごと増やさないでくれる? と女の身体をモップのように床に擦り付けた。
「人の拠点を穢した上に、備品を使えなくした事……どう落とし前つけてくれるのかなぁ?」
それに、とジャックは女を足で転がし仰向けにする。女の栗色の髪が床に広がり、床の嘔吐物を絡め取った。調べたところ、この女には家族は居ないし営んでいる宿屋の店主も金は持っていない。だからと言って、この女を生かして働かせるつもりは毛頭無かった。
「特に、オレを苛立たせたこと」
身体中を腫らし自身の体液に塗れる女は、もう殆ど意識を保っていない状態だった。浅く乱れた呼吸を繰り返し、呻き声すら上げない。痣だらけの色鮮やかなその身体を更に蹴り、ジャックは薄く嗤う。
「決して赦しはしないよ」
×
幾度と無く蹴り上げ踏み下ろされ、殴られ、揺すられて放り投げられた女は、ようやく、動かなくなった。




