第14話
「ジャック・スケアクロウは、一体何処からが『オレ』なんだろうね…」
自身の服を脱ぎつつ、ジャックは独言る。初めの頃に纏わりついていた藁と泥は、もう身体の何処にも残っていないだろう。殆どが、千切れて使い物にならなくなったり、剥がれ落ちたりしてしまったからだ。
服を脱げば、均整の取れた若々しい肉体が顕になる。だが、それは偽物だ。
「……もう、随分と長い間この肉の皮を使ってるな」
『長い間』と言っても、ずっと同じ皮を使っているのではなく、大体1週間から半月に一度、皮を作ってくれる業者で同じ容姿で作り直してもらっているだけだ。
偽物の身体を少し眺めた後、ジャックはそっと腰の上に手を伸ばし、
『解けろ』
低く、特別な言葉を吐く。
手を充てた辺りから、その背中に切れ目が入ったと同時に、急にその若い肉体の肌の張りは失せ、ずる、とジャックの身体から剥がれ落ちてゆく。背中の切れ目からジャックの本当の姿が現れ、ゆっくりと丁寧に皮から腕を引き抜く。
両腕を引き抜き、両脚を引き抜き、皮を脱いだジャックは、皮を丁寧に専用のハンガーに掛けた後、専用の機械に仕舞い込んだ。
「……はぁ、着るのと脱ぐのだけは、本当に緊張するなぁ」
下手すればすぐに傷んでしまい、すぐに使い物にならなくなる。この皮には割と高い金を払っているので、長持ちするのならば出来うる限り長持ちさせたい。
顔の前に下がってきた髪の束を掻き上げれば、骨としか言いようのない酷く醜い素顔が現れる。長い髪を作業の邪魔にならないように後ろで纏め、そこら辺で拾ってきた、お洒落な蜘蛛の巣柄の姿見の前に立つ。
「……うーん、やっぱり酷い有り様……だよねぇ」
鏡の中で、見窄らしく汚れた骨が此方を見ている。
生身の手は『骨張っている』と言うよりは正に『骨』であり、隙間を埋めるように藁の混ざった泥が詰まっている。
「……さて、動かなくなった所はどうなっているかな」
よく乾燥した長く丈夫な藁と、特別な比率で混ざった藁と泥のたっぷり入ったバケツを姿見の側に置き、下がっている腕の付け根を見る。
「……あ、ここの藁が千切れたのか」
ジャックの身体は、筋肉ではなく藁で繋がっており、藁と骨を、泥が繋ぎ止めている。我ながらよくできている身体だと、藁を関節の辺りに張り付けながら、泥を塗りたくった。




