06 双子
ディルクの仕事が休みのある昼下がり
「「「は~、可愛い・・・」」」
俺、ディルク、アリシアの三人でベビーベットを囲む
かれこれ一時間くらいこうしている
とうとう赤ちゃんが生まれた
弟かな?妹かな?と思っていたら両方だった
といってもそっくりというほどではないのでおそらく二卵性の双子だろう
「ずっと見てられるね~」
「そうだな~」「そうね~」
すやすや眠る二人を見ていると可愛さのあまり時間が経つのを忘れてしまう
男の子の方がマルク、女の子の方がアリスと命名された
「もしかしてお父さんとお母さんの名前からとってるの?」
名前を決めるときなんとなく聞いてみた
「そうだぞ、ルシオは父さんと母さんから一文字ずつ、マルクは父さんから、アリスは母さんからとって決めたんだ」
「ふ~ん」
「お前たちが父さんと母さんの子供だっていう証みたいなものだな」
「ふ~ん」
「ルシオは自分の名前好きかしら?」
「うん、かっこいいと思う」
「そう、よかった。マルクとアリスはどう?いい名前だと思う?」
「うん、いいと思う」
一応マルクが先に生まれたので兄、アリスが妹だ
「ルシオもお兄ちゃんになったんだぞ」
「ルシオなら大丈夫、いいお兄ちゃんになれるわよ」
双子を見ているとそんなことを言われた
確かにこんなにかわいい弟と妹ができたんだ、頼れるお兄ちゃんになりたい
「魔法の練習してくる」
「気をつけてな~」「気を付けるのよ~」
「はーい」
「ははっ、張り切ってるな」
「ほんと、可愛いわ」
「お兄ちゃんになるからかな?最近剣術の方もどんどん成長してるぞ」
「あら、ディルク聞いて、ルシオったらもう初級魔法を全部覚えちゃったのよ」
「初級って言っても何種類もあるよな?」
「ええ、やっぱり将来は大魔導士になれるわよきっと」
「いやいや剣の腕だってなかなかのもんだぞ、五歳とは思えん」
「やっぱり家の子は天才だな」「やっぱり家の子は天才ね」
「マルクとアリスも立派に育ってくれるといいな」
「ええ、でも元気に育ってくれたらそれだけでいい。なんたってこんなに可愛いんだもの」
「ああ、そうだな」
______
(さて今日は何をしようかな)
俺は普段村の北側にある開けた場所で魔法の練習をしている
因みに北側には大きな山の断崖が壁になっていて南側には川が流れている
東には街につながる街道があり西には大きな森が広がっている
この立地のおかげで南北からは魔獣などに攻め込まれる心配が薄く基本的には西の森を警戒していればいいらしい、自警団の拠点や見張り台も村の西にある
ここはちょっとくらい山肌に魔法をぶつけてもびくともしないし、周りに木もちらほら生えているので村の方から見えにくい
子供だから村から出られない俺の絶好の修行場になっている
今日は中級魔法でも使ってみようか
でもアリシアに一人の時は危ないからまだ使っちゃダメと言われている
「この断崖ならちょっと強めの魔法を当てても大丈夫だと思うけどな~」
Saveしてから一回確かめてみようかな?
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Saveしますか?
►はい/いいえ
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中級の魔法を使ってみるのは初めてだがイメージはしっかりできている
近くに誰もいないのを確認してから
『フレイムバースト』
火の中級魔法の一つ
中~広範囲に炎を発生させる魔法
なんなく使うことができた
魔力も抑えめだったから岩肌がちょっと黒く焦げた程度だ
(ゲームとかやってるとこういうのはイメージするの簡単だなやっぱ、んじゃ次は・・・)
『ブレイズカノン』
同じく火の中級魔法
初級ファイヤーボールの上位互換といったところか
目の前にバスケットボールくらいの火の球ができる、それを壁目掛けて放ってみた
ドゴーーーン
「やべっ」
炎で焼くというよりは物理的に破壊するタイプなのかなかなかの威力だったようで大きな音が響いた
壁も少しえぐれている
村の方まで聞こえたかもしれない
_______
Loadしますか?
►はい/いいえ
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念のためにロードしておく
目の前の壁をみると先ほどフレイムバーストで焦げた跡まで綺麗になくなっている
(ブレイズカノンは魔力抑えててもなかなかの威力だったな)
広範囲のフレイム、一点集中のブレイズって感じか
だけどファイヤーボールに魔力を籠めて撃ったらブレイズカノンになるような・・・
消費魔力が違うのか、それとも単純に強力なファイヤーボールのことをブレイズカノンというのか
「う~ん、色々試してみるか」
念のためブレイズカノンは魔力をさらに抑えて使わないと
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太陽が傾くまで実験に没頭していた
結果わかったことは
ファイヤーボールとブレイズカノンは一応違う魔法のようだ
ファイヤーボールはシンプルな火の球でブレイズカノンは鉄球に火をつけたようなものだ
単純に破壊力が違う
破壊がメインで火もつけられるので城攻めとかに有効かもしれない
そんな予定はないけど
そして初級に比べて魔力の消費量が多い
まあ当然だが
魔力を抑えても三回くらいで魔力が切れてクラクラしてくる
さて今日はもういいかな・・・
家に帰ろうと振り返るとチラッと人影が動いたのが見えた
どうやら少し離れたところの木に隠れているようだ
(アリシアに見られた?)
一瞬そう思ったがチラッと見えた背丈的に子供だと思う
(ブレイズカノンの音やっぱ村まで響いてたのかな?まいったな・・・またLoadするか?)
そう思ったが見ていたのが子供ならそこまで心配する必要もないかもしれない
「隠れてないで出てきなよ、魔法が見たいの?」
そういうとヒョコっと男の子が顔を出す
その男の子のことを俺は知っていた
「なんだウィルフレッドか・・・」
ウィルフレッドはエドワードの息子で確か俺と同い年だったはず
ディルクに連れられてエドワードの家に行ったとき何度か会ったことがある
「どうした?隠れてないで出てきなよ」
「う、うん」
「いつから見てたんだ?」
「ちょっと前、探検してたら変な音が聞こえて来てみたんだ」
「あ~~、村の方まで聞こえてた?」
「ん~ん」
「そっかよかった」
「そんなことよりルシオ魔法使えるの?」
「うん、見てたんだろ?」
「ボクにも教えて!」
「いいけど、エドワードさんに怒られない?」
「どうして?」
「魔法って使い方を間違えると危ないから」
「う~ん、わかんない・・・」
「じゃあ聞いてみたら?今日はもう俺も帰るつもりだし、エドワードさんがダメって言ったら教えられないから」
「わかった、聞いてみる」
「エドワードさんがいいっていったら明日昼過ぎに俺の家においでよ」
「わかった!」
こうして二人で話しながら帰路についた