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Save! Load! Continue?  作者: とっしぃ
最後の戦い
279/300

279 スキルアップ


グラシエールを倒すために誰かを頼れば逆に利用されてしまう

だから誰かと一緒に戦うことはできそうにない

だからといって一人で挑んだところで今のままでは勝てると思えない


グラシエールは言った

黒い魔力を引き出した時『そこまで引き出せるとは』と驚いた

そして、自分と同じ千年という時間を過ごせば一度くらいはチャンスがあるかもしれないとも


俺が一度に使える魔力はまだまだ増やすことができるという事だろう

だから魔力のコントロールをもっと上手にすることでグラシエールに近づくことができる


そしてそれと同じくらい手札を増やすことが重要だ




「って訳だから俺はしばらく書庫に籠ることにする。リオーシスの事は頼んだ。大丈夫これ以上の被害は出ないと思うから」

「朝一番にそんなことを言われてもだな・・・」


朝一番で城へと向かい、メリアムに事情を説明した

かなりかいつまんだ説明になったのでメリアムは戸惑っているが

これから王都に貯蔵している一万冊を超える書物を全て読み漁ろうというのだからのんびりしている暇はない


「頼むメリアム、今は詳しく説明している時間も惜しいんだ」

「・・・・はぁ。確認はこっちでしておこう。だが緊急時には君の力を借りることもあるかもしれない。その時は“騎士として”引きこもらないでくれよ?」

「・・・・わかった」

「まったく・・・」

「ありがとう、メリアム」

「君以外にも優秀な者は沢山いる、だから好きにするといいさ。でもジオラ辺りが気になって様子を見に行くかもしれないが、そこまでは知らないぞ?」

「それくらいならいいよ。自分で何とかする」

「・・・・はぁ、王子をこき使う騎士なんて君くらいなんだからな?」

「それくらいの方が楽なんだろ?」

「・・・まあね」


呆れたようにメリアムは笑う


一国の王子だというのに、本当に良い友人を持った


(グラシエールの件が片付いたら騎士として恩を返さなければならないな)





何度か足を運んだことのある書庫へとやってきた


(さて、端からやっていくか・・・)


ずらりと何列も並ぶ本棚にぎっしりと本が詰まっている


例えるならそこそこ大きめの書店にある本を全て読もうというようなものだ

始める前から気が遠くなる


(何ヵ月・・・いや、何年かかかるか?)


だとしてもグラシエールと対峙するよりは遥かに気持ちが楽だろう


「よし!」


気合を入れ、書庫にある一番端の列の一番左の本棚

脚立を使い、その一番左上の本を手に取った



____

__

_



「ん~・・・」


体が凝ってきたので伸びをする


太陽の位置から見て今は丁度昼頃だろうか

頭を使い過ぎて小腹も空いてきた

脳が糖分を欲している


数年はかかるかもしれないと覚悟したが

既に本棚の一番上の段の半分は目を通している


というのも役に立たなそうな本は流し読みをしたり

既に習得している魔導書なんかは飛ばしたりしていれば、一冊読むのにかかる時間はかなり削れるからだ


と言っても、まだ知らない魔導書なんかを読む場合はその魔法が使えるようになるまで先に進めない事になるのでどうなるかはわからないが


(眠気は今みたいに強化魔法を使うことで無理矢理どうにかできるし、食事は本を読みながらでも摂れる・・・時間のロスになるのは食事の用意とトイレくらいかな?)


現在、本を読むという作業だけなので強化魔法なんて使う必要はないのだが

魔力のコントロールの向上のために強化魔法を掛け続けている

それもできるだけ全力で


その弊害で、ついさっきくしゃみをした際に別の本棚をドミノのように全て倒してしまっていた


(人が居なくて良かった~)


倒れていない今手を付けている本棚の列の全ての本に目を通すには30日近くはかかるだろう

やり直せば本棚も元に戻るので片付けもせず放置していた


(本も・・・これ以上破かないように気をつけないとな・・・)


そして手に取る本も、力加減を誤って何ページか破ってしまっている

少しアクセルを踏むだけで急発進してしまう車で細い路地を走っているように繊細な加減が必要になる

これはこれでいいトレーニングになっていた

もっともここまで考えていた訳ではなかったのだが・・・




「なんだこりゃ・・・」

「あらまぁ・・・凄いことになってるわね」


次の本へと手を伸ばした時

書庫の入り口から聞き覚えのある声が聞こえた

ジオラとクレルティアだ


「お!いたいた。何やってんだよルシオ」

「え!?あれがルシオ君!?これ貴方がやったの?」


書庫に籠り始めて数時間

早速邪魔が入って来た


ジオラはともかくクレルティアは俺を見て凄く驚いていた


(あ、そうか)


「お二人ともこんにちは。因みにクレルティアさん、今の俺ってどんな風に見えてますか?」

「真っ黒!誰かと思ったわ。その魔力って例の“あれ”でしょ?」

「ええ、そうです」

「なんで本を読むのに強化魔法を使ってるの?」

「あん?何の話してんだ?」


俺が使える黒い魔力

その魔力を使って全身に強化魔法を使っているのでクレルティアには俺が真っ黒に見えているらしい

ジオラには普通に見えるからクレルティアとの会話が不思議なのだろう


「書庫の前に居た兵士から『凄い音がしたけど中からただならぬ圧を感じるから怖くて入れない』って報告があってよ」

「あ~すみません・・・音の正体は見ての通りで、ただならぬ圧の正体は俺ですね」


休憩がてら強化魔法を解くと魔力切れの影響で一気にだるさに襲われた


「なんで本読むのにそんな魔力上げてんだ?」

「本を読みながらでもできるトレーニングです」

「なるほど」


ジオラはトレーニングの一言で納得してしまった


「トレーニングって・・・ん?何かしら?私の顔に何かついてる?」

「いえ・・・なんでもないです」


前回、体感でつい半日程前に自分の手でクレルティアを殺してしまっていたので、元気なクレルティアを見て内心ほっとしていた

それと同時に罪悪感もありクレルティアと目を合わせるのが少し気まずい


「なんでもないって感じではないみたいだけど?」

「クレルティアさんが美人すぎてまともに見られないだけですよ」

「なに!?」

「あらあら、今までは普通に接してくれてたと思うのだけど?」

「そうでしたっけ?」

「お前も結局ティアみたいなのがいいんだな!?そうなんだな!?」


(・・・鬱陶しい)「・・・鬱陶しい」(ボソッ)


「っ!?」

「あ・・・」


つい思った事を声に出してしまっていた


本を読み続けていることで頭はボ~っとするし

そこに強化魔法を解いた事でさらに体はいうことをきかない


「・・・・邪魔して悪かったな」


俺から「鬱陶しい」と言われたことが余程ショックだったのか

ジオラはトボトボと書庫の入り口へと歩いて行った


「あ、ジオラ!んもう、ちょっと今のは酷いんじゃない?ルシオ君!」

「ごめんなさい」

「私じゃなくてジオラに謝りなさい」


(めんどくせえ・・・でもやり直したらまた夜が明けるのを待たなきゃいけないしな~)


「ジオラさん!」

「・・・なんだよ」

「えっと・・・本読むのとトレーニングで疲れてただけで、本気で鬱陶しいとか思ってませんから!」

「・・・言い訳はいいって」

「え~っと・・・あ!俺の奥さんに会った事あるでしょ?ほら!マヤって子」

「それがなんだよ・・・」

「マヤってどっちかっていうとクレルティアさんよりジオラさんに似てると思うんですよ。快活な所とか」

「・・・・」

「つまり、俺はクレルティアさんよりはジオラさんの方が好きだってことです!」

「・・・・そ、そうか」


かなり苦しい言い訳だが、それでもジオラは少しだけ機嫌を直してくれたみたいだ


(単純で良かった・・・)


「今度は私が機嫌を損ねてもいいかしら・・・」

「勘弁してください・・・」

「冗談よ」


ジオラの機嫌を上げるためにクレルティアを下げてしまったが、クレルティアは冗談で言ってるっぽいので大丈夫だろう


「あの~・・・そろそろ本を読むのを再開したいんですけど・・・」

「あらごめんなさい、お邪魔しちゃったかしら」

「っていうかお前こんな所で何してんだよ?」

「メリアムから聞いてませんか?」

「リオーシスで大変な事があったってのは聞いたけど、オレ等は待機命令が出ただけだぜ?」

「・・・そうですか」

「リオーシスの件とルシオ君が書庫に籠っているのは関係あるのかしら?」

「はい、だからそろそろ本を読むのに集中したいんですけど」

「そうなの、わかったわ」

「飯食ってからにしないか?」

「話聞いてました?・・・まぁいいですけど」


丁度腹は減っていた

これ以上ジオラの機嫌を損ねない為にも食事くらい付き合っておこう


「よし!んじゃあ腹ごしらえだ!行くぞルシオ!ティア!」

「「はーい」」


夜は強化魔法を使うことで眠らずに無理矢理本を読み続けるつもりだし、食事くらい大したロスにはならないだろう


「ところでこの倒れた本棚どうするの?」

「そのうち直しておきます・・・」

「オレは手伝わねえぞ、めんどくせえ」

「一人でできるからいいです」


また誰かに見つかって読書の邪魔をされては面倒だ

何処かキリの良いところでLoadして本棚を元に戻しておこう


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