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Save! Load! Continue?  作者: とっしぃ
最後の戦い
277/300

277 淡い期待


塔から少し離れた場所に集合し、そこから塔に向かって歩き出す


「ルシオ君・・・あれは何?」


するとクレルティアが口を開いた


クレルティアは驚いた様子で塔の方を見ている


「あれ?塔の事ですか?」

「塔?あの中に塔があるっていうの?」

「あの中?」


クレルティアは生まれつき特殊な目を持っていて、魔力を色付きで可視化できるそうだ

そんなクレルティアには塔の周辺に何が見えているというのだろうか?


「クレルティアさんには何が見えてるんですか?」

「すごく大きい・・・真っ黒な球体。卵のような楕円をしているわ」

「なるほど、それは恐らく先ほど説明した塔を覆う結界です。でもそうですか、真っ黒ですか・・・」


俺が使えるようになった得体の知れない魔力もクレルティアのおかげで黒い魔力という事がわかった

そしてその黒い魔力はグラシエールから寿命を肩代わりする代償として与えられた物

ならば塔を覆う結界が真っ黒と言う事は


「あの結界もグラシエールが張った物だという事でしょうね」


グラシエールの魔力が黒いということか


(でも、だったら俺だけ結界を越えられるのはどういうことだ?リアンの指輪をしてるから?なら戦闘中俺の攻撃を防いだ魔法障壁はどうなる?)


確かめようにもリアンの指輪を外すことは二度とないだろう

そんな危険を冒すわけにはいかない


そうこうしているうちに塔の目前へとやって来た


「それでは皆さん、クレルティアさんの言う黒い結界は俺が消します。その後は予定通りにお願いしますね」

「メリアム様がああ言うから手伝いはするが・・・今回の事も例の天啓とやらで知ったのか?」


塔を目前にしてブラマンシュが質問してくる


「・・・ええ、そうですけど」

「あの場では聞かなかったが、君の話を信じるのなら・・・リオーシスが半壊してからその犯人を特定し、更にそのグラシエールと言う者の強さまで知っている。本当に、天啓と言うのは便利な物だね」

「・・・そうですね」


ブラマンシュは俺の事を疑っているようで、少々嫌味気に聞いてくる

まぁ他人からしてみると俺の行動は出来過ぎているので疑うのも仕方ないだろう


(どうせやり直すことになるだろうから一々説明したり誤魔化すのも面倒なんだけどな・・・)


「ブラマンシュさんだけでなく皆さんが疑問に思うのもわかります。ですがこればかりは『信じてくれ』としか言いようがないので」

「ああ、天啓の事に関して君を疑っている訳じゃないんだ。君が天啓を受けたことは前にもあっただろう?その時も君の言う通りになった」

「じゃあ何が不満なんだよ青鼠」


俺の代わりにジオラがブラマンシュに食って掛かる

だがブラマンシュはジオラの方を見向きもしない


「・・・・いや、無駄に士気を下げることもないだろう。聞かなかったことにしてくれ」

「・・・・」

「チッ、なら最初から言うんじゃねえよ」

「ありがとうございますジオラさん。でも信じてくれるのは嬉しいですけど、この場に居る全員がジオラさんみたいに俺の事を信じてくれているとは思っていません。全てを皆さんに説明できているわけではないし、説明したところで簡単に信じられる話でもありませんから」


ジオラとマホンは俺の事を信じてくれていると思う

それはとても有難いことだ


だが他の面子もグラシエールを前にすれば俺への疑いなんて些細な問題に変わるだろう


そして疑ってくれる事にも意味はある

それが大勢集めた理由の一つでもあった


「まぁ各々思う所はあるでしょうが、グラシエールを前に油断は命取りですよ。事前に説明したように誰かを守りながら戦う余裕はありません。自分の命は自分で守ってください」


俺の言葉に全員が『言われるまでも無い』という表情だ

この辺は流石騎士団の隊長達

俺なんかの心配は余計みたいだ


「では準備はいいですね。少し時間はかかりますが俺が結界を消します。その後は好きに動いてくれて構いません」

『その必要はない』

「「「っ!?」」」

「え?」


俺が声を掛けた後、どの隊長の物でもない声が聞こえた

その瞬間俺だけが声の主の正体に気付いて振り返る


すると背後から胸を手で貫かれているクレルティアの姿が目に入った

クレルティア本人は何が起こったのか分かっていないようで、自分の胸から伸びる手を不思議そうに見ている

隊長達もその光景といつの間にか現れた老人の姿を見て驚いていた


(このタイミングで動いたか!?)


油断した訳ではない

塔の近くへ隊長達を連れて来たところからずっとグラシエールからの不意打ちを警戒はしていた

だがやはり警戒していた所でグラシエールの攻撃を防ぎきれる訳ではない


つい数秒前に『誰かを守りながら戦う余裕は無い』と言いはしたが、クレルティアはクレルティアにしか見えない世界が見える

それに気付いたからこそグラシエールはクレルティアを最初に狙ったのかもしれない

戦力では一番期待できないが、俺が期待しているのは純粋な戦力ではなく情報だ

隊長達の中で一番死なれて困るのはクレルティアだ

助けられるのならば助けたい


(間に合うか!?)


「なんだテメェ!」


グラシエールを確認した瞬間結界のレジストを止めいち早くクレルティアの元へと距離を詰める

次いでジオラが反応し、グラシエールに攻撃を仕掛ける


クレルティアの胸を貫いているグラシエールの手を掴もうとするとグラシエールは一瞬で姿を消した

ふらつくクレルティアを抱きとめ急いで治癒魔法を掛ける

それと同時に自分とクレルティアを覆うように魔法障壁を張った


グラシエールが姿を消した為ジオラの攻撃は空を切る


「上です!」


ブラマンシュが叫び皆が上を見る

すると上空にはグラシエールの姿があった


たったこの一・二秒の出来事で隊長達全員の目の色が変わった

グラシエールのヤバさを理解したのだろう


『またぞろぞろと大勢で来たものだな』

『俺一人じゃ勝てないからな』

『はははっ。君以外の雑魚が増えたところで何も変わらないさ。それくらい気付いているだろう?』

『試してみなきゃわかんねえだろ?』

『足手まといが増えるだけだと分かっていても試さずにはいられないか』

『・・・そうだよ』


そうこうしているうちにクレルティアの治療が終わる


「生きてますか?クレルティアさん」

「え、ええ・・・生きてるみたい、ありがとう」


心臓を貫かれたのだろうが、絶命してさえいなければ力任せに治癒魔法を使うことで助けることはできる

それをクライトを使った実験で知ることができた


『警告のつもりか?』

『何がだね?』

『わざと助かるようにしたんじゃないのか?お前なら一瞬で殺す事もできただろ?』

『ああ、こういう風にかな?』


グラシエールが手をかざすと近くに居たザルトイが姿を消した


否、姿を消したのではない

ザルトイの居た場所には小さな赤黒い球体が浮いている


(重力魔法!?)


『その通り』


グラシエールが手を下げると、圧縮されたザルトイだった球体が赤黒い液体をまき散らしながらはじけ飛んだ


『“それ”にも治癒魔法を掛けてみるかね?』

「合わせいお主等!」


いち早くマホンが声を掛け動き出した

それに反応した隊長達が同時に動き出す




マホンが斬撃に衝撃波を乗せてグラシエールを攻撃する

だがグラシエールは避ける仕草もせず微動だにしない

衝撃波はグラシエールの目の前で何かにぶつかりはじけ飛んだ


立て続けにブラマンシュが火柱をグラシエールの下から立ち昇らせる

同じようにグラシエールは避けもせず火柱に飲み込まれた


更にそこに追い打ちをするようにマルヴェールが斧を振り下ろし巨大な岩の棘を複数伸ばした

グラシエールが居た場所に棘が届いた時、ブラマンシュの火柱を押しのけチラリとグラシエールの様子が見えたが

グラシエールはずっと何かに座った体勢のまま涼しげな顔をしていた


「どけろ!青鼠!」


マルヴェールの出した巨大な岩の棘を足場にグラシエールの元へと駆け上がるジオラ

その反対側からは魔法障壁を足場にしながらアルスパーダが殴り掛かっていた

グラシエールを左右から挟み撃ちする形だ


ジオラの声に反応してブラマンシュは火柱を消す


『面倒臭がらずに少しは動けよ』


それと同時に俺はグラシエールの真上に転移した


マホンの斬撃や火柱を防いでいた様子からグラシエールの周囲に魔法障壁があることは間違いない

読み通りグラシエールの真上に転移すると見えない足場があった

このままではジオラとアルスパーダの攻撃は意味が無い

なので魔法障壁をレジストした

塔の結界とは違いこっちの結界はすぐに消す事が出来た


そしてタイミングよくジオラの蹴りとアルスパーダの拳がグラシエールへと伸びる


『ふぅ』


グラシエールは小さく溜息をつき、鬱陶しそうに両手を払った


「「っ!?」」


まるで羽虫を追い払うように軽く振ったグラシエールの手は

自分へと伸びるアルスパーダの拳とジオラの足を払いのける


払いのけられたアルスパーダの腕は肘から先が変な方向へと曲がり

同じように払いのけられたジオラの足も膝から先が変な方向に曲がっていた


しかしジオラとアルスパーダの二人は勢い余ってバランスを崩しながらグラシエールへと突っ込んだ

そんな二人をグラシエールは払った腕を戻しながら自然な動作で受け止めた


『あまり老体をいじめないでほしいな』


次の瞬間ジオラとアルスパーダは左右にもの凄い速さで吹っ飛んだ


(なんだ?風魔法か?)


なんてことを考えていると俺の背後から何かが飛び出した


(クラウス!?いつの間に!?)


突然背後から現れたクラウスはグラシエールへと刃を伸ばす


俺自身クラウスの存在に気付けなかった

クラウスはグラシエールからも死角に居る


そしてとうとう連携のおかげかクラウスの刃がグラシエールへと届いた


「なっ!?」


だが想像した感触と実際の感触がかけ離れていたからか

クラウスは驚きの声をあげた


クラウスの刃はグラシエールに届きはした

だが届いただけで貫くことはできなかった


まるで鋼鉄に剣を突き立てたかのように

クラウスの持つ剣の刃先はグラシエールのうなじに触れたところで止まってしまう


(強化魔法?それとも魔法障壁か?何にせよ・・・)


『いい加減死ねよ!!』


両拳を握りグラシエールの頭上から振り下ろす

クラウスの剣の柄を殴りグラシエールをそのまま貫こうとした


だがグラシエールは姿を消し空振りに終わる

クラウスの剣がもの凄い勢いで地面に突き刺さった


少し遅れて俺もクラウスと同時に着地する


『期待したかい?「触れることはできる」と、ほんの少しでも望みを持ってしまったかな?』

『ぐ・・・くそっ』


グラシエールの声はまた上から聞こえてきた


『がっかりだよ・・・これが現代の最強かい?千年前の方がまだ強い者が居たのだがね』

『お前から見たらどの時代の人間も雑魚だろうがよ』

『あの双子は私から見ても厄介な力を持っていたよ?』

『そうみたいだな』


これまで一度もリアンの指輪を装備している俺には触れようともしてこない

リアンの指輪には何かまだわかっていない隠された効果があるのかもしれない


『少しは楽しめると思ったのだが・・・って、おやおや。前回の私は失敗してしまったか』

『ああ、残念だったな。もう二度とこの指輪は外さない』

『だから何だと言うのかね?負けはないかもしれないが勝つこともできないというのに』

『・・・・』

『先ほどの一連の攻撃もそうだ。もっと君が中心になって攻撃していればまだチャンスはあったかもしれないというのに』

『思ってもいねえことほざいてんじゃねえよ』

『はっはっは、まあその通りなのだが・・・実際君は周りのゴミに気をとられチャンスを何度か逃しているではないか』

『・・・・』

『足手まといをいくら集めたところで何も変わらんさ。実際自由に動ける君一人の方が私には厄介だ』


隊長達の力を借りれば何かが変わるかもしれないと

そんな淡い期待を持っていた

だがグラシエールの言う事は俺もずっと考えていた事だ


『それと・・・因みにだが、君の作戦は意味がないよ』

『・・・・あ?』

『人を増やし考えを読ませることで私の意識を逸らせようとしたのだろう?』

『・・・・』


グラシエールと戦う直前、俺を疑うブラマンシュを放置したのには意味があった

ブラマンシュだけでなく他の隊長達も俺を疑うことで思考を続けるだろう

そしてグラシエールと対峙し更に考えることは増えるはずだ


もしグラシエールが死神に『人の考えていることが分かる能力』を望んでいた場合

もしその能力がコントロール不可能だった場合

周囲の人間の思考が一辺に流れ込んでくることになれば、と考えていた

そうすれば人を増やすことでグラシエールの思考を阻害することができるのでは、と



『残念だが読む対象は自分で選ぶことができる。そして君以外は警戒するに値しない』

『・・・・く・・そが』




最強の布陣を用意しても駄目だった


俺の予想も悪い方に裏切られた


少しだけ心が折れる音が聞こえた気がした


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