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Save! Load! Continue?  作者: とっしぃ
最後の戦い
270/300

270 調査と誤解

今更ですが

普通の「」はアヴァングラースの

太枠の『』はタナトスの言葉で話しているという設定です

これは主に二つの言語が入り混じる会話でのみ使用しています


その日の夜は寝付けなかった

元々グラシエールの襲撃を警戒していたため眠るつもりはなかったのだが

考えることが多すぎて全く眠くならなかった


サラやシシルは寝る直前、一向に何も話さない俺に対し「何か力になれることがあれば何なりと仰ってください」とだけ言い各々の部屋へと向かった

同じベッドで一緒に寝ているマヤも心配そうに俺を見ていたが、「おやすみ」と一言交わしただけで大人しく眠りについた


「ごめんな・・・ちゃんと説明しても、きっとまたやり直すことになる・・・だから今は一人で考える時間が欲しいんだ」(ボソッ)


とは言え、結局のところいくら一人で考えてもそれは俺の予想でしかない

確かめなければならないことが沢山ある


(気は進まないけど・・・)



朝になったら直ぐに動こう

幸い考えることが多いから夜が長く感じることもない


____

__

_



朝日が昇り始めるとすぐに行動を始めた


とは言ってもすぐさまグラシエールと対峙する度胸はない

グラシエールの実力は未知数だ、少なくとも俺の最強魔法である『雷槍』を全力で打っても“躱す必要すらない”くらいの実力を持っている

まるで大人と子供のように、こちらの全力をも軽くあしらわれてしまうだろう


実際あいつも「気の済むまで遊ぼう」と言っていたように

グラシエールにとっては俺を相手にする事などただの気分転換でしかないのだろう




そしてそれだけでなく『心を読まれる』という感覚が恐ろしい


こちらは相手の手の内が分からないというのに、相手はこちらの手の内を全て見透かすことができる

同じ格上だったノワールの時よりも厄介だ

どう攻めたらいいのかがわからない


唯一の幸いとしては、グラシエールの目の前でSaveしなかった事だろうか

こうして考え準備する時間を確保できるのはとても貴重だ




(とりあえずまずは・・・クレアの村か)


一番最初にグラシエールと出会った場所

クレアの住む名もない村へと向かうことにした



____

__

_



家にある転移魔法陣を使いクレアの村へと向かう

アヴァングラースとタナトスでは時差があり、こちらは既に昼頃になっていたため

クレアの家に転移しても眠っている所を起こすようなことは無かった

そして俺はクレアへの挨拶もそこそこに、すぐさま村長の家を訪ねることにした




出てきたのはお婆さんで、この人は以前泊まらせてもらった時「村長の娘」と紹介された人だ


俺の事を憶えてくれていたので「村長に会いたい」と頼んだ所

一瞬だけ、ぼ~っとするような、目の焦点が合っていないような感じに見えた


そしてすぐに「生憎村長である父は亡くなりました。今は私がこの村の長を務めさせてもらってます」と返事が返ってきた


(なんだ?今の違和感・・・)


その後少し会話をしてクレアの家へとむかうことにした


現村長であるお婆さんの話では

おそらくグラシエールのなりすましである前村長が亡くなったのは、俺がクレア達を助けた後、イルミラと一緒にラドハルバへと向かってすぐの事だそうだ

タイミングが良すぎることと、お婆さんが前村長の話をする時の機械的な話し方から

おそらくセルドロがサラに使っていた傀儡術のような物で村の人間を操っているのかもしれない




『あ!おかえりなさいルシオさん』

『ただいまクレア。突然ごめんね』

『いえいえ。何か御用だったんですか?』

『ああ、少しね。クレアにも聞きたいことがあるんだ』

『なんでしょう?』


俺はクレアに前村長について話を聞いた


『村長・・ですか?』

『ああ。今のお婆さんじゃなくて、俺達が初めて会った時に村長をしていたお爺さんのことだ』

『・・・ああ、前の村長さんでしたらもう亡くなられています。ご高齢だったので』


村長のお婆さんと同じでクレアも前村長の話をするときは感情の無い人形のような顔をする


(チッ・・村人全員を傀儡にしているのか?でも普段はそんな様子も無かったし、暗示のような物か?)


クレア達村人全てがグラシエールの手先なのか

それとも村長になりすます間だけの為に暗示をかけて辻褄合わせをさせているのか


(そういえば、リオーシスの半分が消滅したのって見回りの途中なんだよな・・・)


Saveをする前に行っている見回りで最初にリオーシスを訪れた際、その時はまだ被害は無かった

だがその後タナトスの国々を見回りSaveの更新をした時にはもうリオーシスの半分が消滅してしまっている


(グラシエールは俺のSave前のルーティンを知っているってことか・・・)


その後イルジオに同様の被害が出た時もSaveしようと見回りを行った日だった

幸い不安が拭えなかったおかげでSaveの更新はせずに済み、イルジオの被害は無かった事にできたが


『・・・・』

『ルシオさん?』


険しい表情で考え事をする俺を心配するようにクレアが声を掛けてくる

その時のクレアはいつも通りで、操られているようには全く見えなかった


『クレア達がグラシエールの目になってたってことか?』

『はい?』

『いや・・・クレア達だけじゃなく、あいつの撒いた種がタナトス中にあるかもしれないってことか』

『あの~・・・』

『まてよ?ブラン達ですら姿を変える魔法を使えたんだ、グラシエールが使えないわけがない』

『ルシオさ~ん?」

『・・・そうやってずっと俺の事を見てたってことか』

『へっ!?す、すみません』


クレアの目を見ながら、その向こうに居るかもしれないグラシエールへと声をかける

そして俺の独り言に対し、なぜかクレアは顔を赤くしながら謝っていた


『必ずあいつの支配から解放してやるから・・・もう少しだけ待っててくれ、クレア』

『は、はい!待ってます!・・・支配?』

『っ!?そうだ!』

『は、はい!?」


良い事を思いついた

クレアが仮にグラシエールの傀儡術か何かで操られているのだとすれば、リアンの指輪が役に立つかもしれない


『クレア。ちょっと来てくれ!』

『は、はい!』


俺自身が傀儡術で操られてしまってはそこで詰んでしまう

だからどこにグラシエールの罠が張られているのかわからないタナトスでリアンの指輪を外すのはかなりリスキーだ

なのでクレアを自分の家へと連れて行ってから試すことにした




クレアの手を引き転移魔法陣へと行く最中

クレアの顔はずっと赤かった


____

__

_



転移魔法陣を使い家へ帰ると、魔法陣のある部屋の中にサラがいた

何も言わず朝早くから俺が居なくなっていたので探していたのかもしれない


「おかえりなさいませルシオ様。そちらは・・・クレアさん?」

『お久しぶりですサラさん』

『クレアこっちに来てくれ』

『はい』


現在シシルやエルダ、イルミラといった家族が増えたことで、立派なこの屋敷にもとうとう空き部屋が無くなってしまっていた

物置にしていたり転移魔法陣用の部屋だったりと、人が常用していない部屋ならまだいくつかあるのだが


なのでクレアの手を引き自室へ向かうことにした


「サラはここで誰も来ないよう見張っていてくれ」

「畏まりました」

『クレアこっちだ』


クレアの手を引き自室へと入る

ベッドではマヤがまだ眠っていた


「う~ん・・・どうしたのルシオ?」


寝起きの悪いマヤでも流石に騒ぎで起きたようで、目を擦りながらこちらを見ている


(ここなら大丈夫か?)


念のため周囲を警戒し、いつでもLoadできるよう意識しながらクレアの方へと向いた

そして自分の左手の小指に嵌めてあるリアンの指輪を外し


『え?え!?』

「・・・・・は?」


クレアの左手の人差し指へと嵌めてあげた

マヤの方から間抜けな声が聞こえた気もするが、今はそれどころではない


『ル、ルシオさん・・これって・・・』

「・・・・・は?」

『何ともない?クレア』

『は、はい』


クレアは顔を真っ赤にしたまま、そしてなぜかうっとりした顔でリアンの指輪を眺めている

どうやらリアンの指輪を装着したことによって術が解けた時の反動のような物はないようだ

あとはちゃんとグラシエールの術が解けているかを確認するだけ

もしかすると後から装着しただけでは術が解けないという可能性もある


『クレア、さっきも話した前村長についてなん・・』

「どう言う事よルシオ!!!」

「っ!?・・はぁ?何?」


突然先程まで眠っていたマヤが叫びだしたので驚いてしまった


「もしかして昨日様子がおかしかったのって・・・こういう事だったの!?」

「・・・こういう事ってどういう事?」

「とぼけないで!何か事件でも起きたのかと思って心配してたら・・・まさかもう三人目!?」

「はあ?」

「どうされましたか!?ルシオ様!奥様!」


部屋の前で待機してもらっていたサラも、マヤの声に驚いたのか許可も取らず中に入って来た


「聞いてよサラ!ルシオが!・・・ルシオが・・・もう三人目を連れてきたの~」

「はい?」


泣きながら訴えるマヤの言葉にサラが俺の方を見る

そこでようやく俺もマヤが騒いでいる理由が分かった


マヤとサラの前には、クレアの手に指輪を嵌め、その手を握っている俺が居る


「違うんだマヤ!これには事情があって!」

「何が違うのよー!今度は開き直って堂々と見せつけることにしたんじゃないの!?」

「んなことするか!!!」




一応女性の手に指輪を嵌めるのだし、左手ではあるが薬指は避けた

そして俺の姿勢も片膝をついたりなんてしていない、二人とも立っているだけだ


プロポーズになんて見えないと思うのだが・・・


どうやら俺の配慮はあくまで前世の世界での常識で

この世界では異性に“装飾品を贈る”という行為そのものが重要なのかもしれない




激昂するマヤと

そして周りの騒ぎもそっちのけでずっとうっとりしているクレアの

二人の誤解を解くのにかなりの時間を浪費することになってしまった


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