潮騒 三島由紀夫
純文学といえば小難しい漢字を多用して、いつまでも自分の内面について葛藤したあげくに自殺か女と別れるか――そんな感じのイメージがあったのだが、この作品については真逆でした。
もう一月も終わろうとしているのにこれで四冊目というと気が遠くなるが、めげない。
本を読むことは目的ではなく、あくまで楽しむのが大事なのだから。
読書が苦痛になったら、なんの意味もないでしょう?
川端康成大先生はいわずもがな、一昔前の作家ってすごく文章のきれいなイメージがあります。
その分ストーリーがあまり進展しなくて面白くないという感じもあるのですが、
まあ夏目漱石なんかはユーモアもあって楽しいですよね。
ほとんど学校で読まされたものばかりですが。
ちなみに私は梶井基次郎が好きだったりします。
パソコンでかたかたやってるのと、原稿用紙に書き起していくのとでは、まるで別物だといいます。
そこは、越えられない道具の壁というか、時代の境というか、
とにかく違ってしまうんでしょうね。
どちらも一長一短です。
さてさて『潮騒』という作品は、単純にいえば小さな島の、若い男女の恋愛話です。
離れ小島の、爽快感あふれる青春を楽しめるという点では現代と何ら変わりはありませんが
文章を追っているだけで自然と風景が浮かんでくるっていうのが素敵です。
特に深いことはありません。
すっきり読んで、すっきり終わる。
その物語を、美しい筆致によって彩っているのが、この作品ではないでしょうか。
――――――――――――――――――――――ここからネタばれあり―――――――――――――――
まあ、ネタばれといっても、特に犯人がいるわけでもなく、ハッピーエンドで終わるのは目に見えていたのですが、いちおう書いておきます。
人間が生き生きしてるというよりは、自然が躍動している感じでした。
いきなりほぼ初対面のふたりが裸で抱き合うのはどうかと思いますが、
まあ若々しくていいんじゃないですか。
べ、べつに羨ましいとかいうわけでは(以下略
それにしても、読んでて心地の良い文体でした。
海と一体になって生活している様子が、ありありと想像できます。
この時代の小説は、なんだか絵本を読み聞かせてもらっているような安定感があります。
個人的には主人公VSライバルという構図がスッキリしてて良かったと思います。
設定に深いこともなく、本当にあっさりと終わってしまう。
プロットだけでなく文章力の大切さを感じさせられます。
それでは、お次の作品で会いましょう(できれば一月中にもう一作品……)