011. 地上への行き方
なんとか書けました。ちょっとご都合主義かもしれませんがお許しください。
本日もお読みくださりありがとうございます。
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世界は知る。人類はまだまだ進化できるのだと。
タクトという前例は、その先駆けなのだと。
市民、冒険者、研究者、企業、政治家。各々が動き出す。
ダンジョン時代はまだまだ始まったばかりだ。
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拓斗は、ふと気になった。
(いま、何日だ?)
もうすでにずっと山フィールドの結構奥地に住んでるし、大分ここらも自分の庭のようなものだった。
(時折見かける、大空を羽ばたく翼竜っぽいのにはまだ会えてないけど)
山フィールドは存外に広かった。あれだろう。円で考えれば、半径が2倍になれば面積は単純に4倍になる奴だ。中心は除くから、少なくとも元の3倍は探索しなければならない。
界隈における疑問、山フィールドの外は何か?については、結局わからなかった。果てしないのだ、土地が。高い山に登った時には、わずかに地平線が円弧を描いていたし、はるか向こうにはきらりと光る大きな海が見えた気がしていた。
まぁとにかく、この長い生活で、地上由来の物資はもうないし、使いまわしてきた日用道具も古くなってきたし買い換えたい。魔力をふんだんに含んだ日用品(中古)は売れるだろうか。魔核を使用していない地上の日用品は魔力を含んでも何にもならない。耐久度も切れ味も変わらない。ゆえに、使い込めばボロボロになった。
ここ数年は、爪切りで爪が切れないので、行儀が悪いが、なんとか歯でかじって魔物の鱗で整えた。足の爪は折るしかなかった。
要するに、自分の強靭化した体に道具がついてこれてないのだ。鍛冶の真似事で単一素材から直剣は作れるが、合金は作れない。そこまでの設備は持ってない。アンビルとハンマーしかない。ハサミや爪切りなんてもってのほかだ。
(今度は魔核で魔力を電気に変換する魔道具を作るか)
拓斗は、すでに地上に帰る気持ちになっていた。
壊れなかった(魔核の制御機能がないためと思われる)マジックバッグに、持って行けるだけの素材と魔核を入れて、準備を整える。
装備は、魔物の皮で作った革鎧のようなものだ。鞣しや硬化とかは適当なので魔力だよりの一品になっている。
ここは、山フィールドの奥地にある広葉樹バイオームだ。この周辺にあるバイオームが鉱山や砂漠、沼地、針葉樹と豊富な素材の土地に囲まれているので、ほぼここが拠点となっている。
拓斗は、増築で立派でいささかいびつな拠点をあとにした。
急ぐ理由もないのでゆっくり散策しながら。
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山フィールドのバイオームをいくつか越え、ちょっとばかり高台になっている荒地にきた。手前の山フィールドの終わりと森フィールドの先には、懐かしき草原フィールドが見えた。
なつかしさがこみ上げる。あの頃は、吐き気と悪寒にさいなまれる日々であった。
森フィールドが近づいてきたとき、体の異変に気付いた。魔力の溶けだす速度が速い。周囲の魔力濃度が低すぎるのだ。溜めた魔力が溶けだすのを防ぐために、魔力の循環と圧縮を最大にすることにして対処した。周囲の魔力による補助がないのはちょっと不便で不安になるが、地上にはここに比べたら魔力はほぼないといっても過言ではないので仕方ない。
体の動きを確かめるように、森フィールド手前で走ったり飛んだりしていると、森フィールドに人間のパーティーがいるのを見つけた。
「人間だっ!!感動する!!」
拓斗は、恐ろしく珍しい珍獣を見るような目でガン見する。多分、こちらには気づいてないだろう。
ここ最近増えてきた独り言をぶつぶつ言いながら、どうしようか迷っていると、向こうがぴょんぴょんしてるこちらに気づいた。
「なんだあれ?新種の魔物か?」
拓斗の強化された耳がわずかな声を拾う。
「ん-ちっちゃくてわからん。サル?トリ?」
「いやいや いないだろそんな魔物は笑」
「ガハハハ! 目にでも埃がはいったか?」
「そんなんじゃねーよ、でどうする?」
急に雰囲気の変わったパーティーがこちらを向いて話し始めた。
(やばい 魔物認定されるっ)
拓斗は急ぎ声を上げた。
「お~~~い、 こんにちわ~~~~~~~~」
おもいきりよすぎて大声を出してしまった。魔力がのった声は、風を巻き起こし、森フィールドの木々を揺らした。
「うおっ攻撃か!?」
「いや、こんにちわって聞こえたぞ」
「どうする とりあえず、待ち構えるか」
「おうっ」
「おっけー リーダァ」
どうやら、冒険者たちは様子を見ることにしたようだ。
拓斗は、わくわくした様子で森フィールドに入った。が、唐突に訪れる倦怠感。周囲の魔力濃度が急激に下がった影響だろう。すぐに持ち直して、冒険者に駆け寄っていった。
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「どうもどうも こんにちは!」
少し困惑した表情の冒険者パーティー。
「こんにちわ? えっと・・・なにか御用ですか?」
ダンジョン内では救援要請や野営地でもない限り、お互いに距離をもって話しかける。それがマナーだ。
拓斗は、返答があることに嬉しいようで、もっと近寄った。しかし、冒険者たちは何かそわそわしている様子。
(えーっと、こういう時どうするんだ。握手だっけ?)
自己紹介をすっ飛ばして、右手を差し出す。
「えと はい」
リーダーらしき男が右手を差し出して握手する。瞬間、リーダーの背筋に汗が出る。握り返すとか手を振るとかせずに、そうそうに手を離した。
「あっ!! 俺、じゃない。僕~でもないな。私か。わたしは拓斗と言います。よろしくお願いいたします。」
自己紹介を思い出した拓斗がニコニコ顔で名前を告げる。しかし、リーダーはいまだ青ざめたままだ。
「おっおい リーダァ?」
「あぁ うん えっと銀翼の風のリーダーの角海です。こっちはシーフの戸隠、んで前衛の寒川です。」
「おうっ」
拓斗は自己紹介を聞いて頷くと堰を切ったようにしゃべりだした。
「いやぁ 久しぶりに人と会えるなんて、いや魔物より珍しいよねここらじゃ。すごいなぁ。今日はいい日かもしれない。うんうん。冒険者かぁ。昔はいっぱい草原であったけど、今も会えるのかな。みんなよくしてくれてね、差し入れとかももらったこともあったな。ほんとに最初の方だけどね。いやぁあのころは、このダンジョンもすごいとこでね、やばかったんだよね。吐き気はするし、悪寒はするしで。いやでもすごいなぁ、やっぱ冒険者ってことは魔力適正も高いんだろうなぁ。すごいよほんと。僕なんて、いや私?んー俺でいっか。もうそんな年じゃないしね。えーっとそれで、あぁそうだ、魔力適正の話ね。魔力適正って結構残酷だよね。あんな子供に現実つきつけてさ。俺なんて、魔力適正Eだったんだから。いやほんと、魔力適正がいい人が本とうらやましかったなぁ。いやいや、そうじゃなくて、そんな話してる場合じゃないよね。なんだっけ、そうそう俺、これから地上に戻るんだけどね、その前に人に会えてよかったよぉ~。うんうん、それでね、~~~」
「ちょっと ちょっとまったーーーーー!!!」
「えっなになに?? あーごめんね いろいろしゃべり過ぎちゃった。いやー久しぶりに人に会うとこうなるんだね?いや知らなかった。ごめんごめん~~~」
「いやもういいですから!!黙って黙ってぇええ!!!」
角海は息を切らせながら、やっとのことで静止させた拓斗をまじまじと見た。よくわからない素材の革装備。直剣と短剣を腰にぶら下げていて、先ほど見せた身のこなし。そして握手したときの魔力の奔流。相当な手練れであることは、わかっている。が、口から出たのは、魔力適正Eという言葉、草原での出来事。言葉と風体が一致しない。ますます怪しく見えるだろう。
一方の銀翼の風は、一見普通のパーティだ。角海は銀の金属鎧にロングソード。戸隠は、ちょっと忍者っぽい緑を基調としたシーフの出で立ちだ。寒川はところどころ金属の革鎧で斧を地面に突き刺してる。
戸隠が角海の耳に寄せる。
「とりあえず、ギルドに戻るか、別れたほうがいいっしょ。このままじゃ相手のペースで変なのに巻き込まれる」
「あぁ」
ここで、拓斗は己を振り返った。急に握手を求め、挨拶をして早口でまくし立てる。かつて地上にいたころは、こんな大人なんていなかったことを思い出した。
「えーっと。すまない、いろいろ混乱させてしまったようだ。」
「はい それで要件がなければ、ここらで・・・」
拓斗はここで別れてもよかったのだが、ちょっと久々に戻る地上に不安が出てきた。3人に会っただけでこんな振る舞いなのだ。自分一人では、自分が変に見られる可能性が高い。彼らが表立って付き添ってくれれば、なるべく変なことを抑えられるだろう。何、事件や事故が起きたとかそういうことではない。ただ、うまくコミュニケーションを取ってくれれば、ほかの事にも気を使えるし、周りもよく見れるようになるだろう。
「もしよければ、対魔部?ギルドかな?どちらかに行きたいのだが」
いや、いろいろ道具を特注するか、製作設備そのものを変えればいいのだが。そしたら、もっといいマジックバッグが必要かもしれない。そしたら、お金が必要か。久しぶりに思い出したお金のこと、そこから連鎖的に思い出す過去の記憶。
「そういえば、まずは対魔部児童養護施設だ。そこに行かなくちゃ」
「どこだそれ?」
「リーダァ わかる?」
「いやわからない。とりあえず、ギルドに行きましょう!ギルド」
拓斗は、強引にギルドに連れていこうとする角海たちに、いささか違和感を覚えながらも一緒に連れだって異空間に向かって歩き始めた。
「リーダァ こんな人ほっとけばいいのに 今日の稼ぎのほうが大事っしょ」
「そうなんだけどね。このままほっといて、児童養護施設に行って暴れられたら大変だし。あんまりかかわりたくはないんだけど」
「ガハハハ まぁいいじゃねーか 面白そーだしよぉ」
「はぁ 全く・・・」
「おれっち ヤバくなったら逃げますからね」
「その時はみんなで逃げようね笑」
拓斗は、そんな小声を聞きながら、久しぶりに見える草原に心を癒されていた。




