廃神殿
「わぁ、すごい!これがドラゴンの神殿なんだね!」
ところどころ床の石が欠け、雑草の生える柱だけの神殿を目の前に、フウライは目を見開く。
「けど、やっぱりもう打ち捨てられたって感じだねぇ。
昔は立派だったんだろうね。」
「たくさん人が入れそう!」
少し残念そうにつぶやく。
奥には崩れた壁の奥神殿が見える。
入口にあったであろう扉は枠だけが残っていた。
「神殿というよりは、黄色のドラゴンと人間が一緒に遊ぶ場所、って感じね。」
「黄色は人間が大好きだったから。」
白ドラゴは、神殿を見渡して説明した後、目を伏せる。
「でも、でも、今だって一緒に遊べるよ!」
「子供たちだって、周りに集まってくるじゃない?」
フウライが白ドラゴをまっすぐに見る。
「そうねぇ。」
周りに集まってくる子供たちを思い出し、少しだけ眉根を寄せた後、ふっと口元を緩ませた。
フウライはにっこりと笑うと、白ドラゴの背負ったバッグから薬草を取り出す。
ギザギザの葉に、小さい星型の黄色い花がついている。
「ええっと…。」
きょろきょろと左右に首を振り、同じ草を探す。
「ギザギザじゃないやつもあるから、気を付けるのよ。」
これと決めて、引っこ抜こうとした草がまさにギザギザじゃない葉を持つ、小さい星型の黄色い花がついた草だったからだ。
「あ、ほんとだ!そっくりじゃない…?
これ、使ったらどうなるの?」
フウライは危ない危ないとばかりにその場を離れる。
「笑いが止まらなくなるのよ。」
白ドラゴが手を振り答える。
「まぁ、短時間だけだけど。
黄色はいたずらも大好きだからねぇ。」
「でもウツミムシの症状は改善されるわね。
……ああ、それ、取ってもいいかもね。」
などと言いながら、にやりと笑う。
「もう、そんなことしたら…」
面白そうだな、とも思う。
頭を振ってそんな考えを振り払い、“正しい”薬草を摘む。
フウライは薬草で袋をいっぱいにすると、やれやれとばかりに立ち上がる。
「んん?」
奥の神殿、その中で何かが光った気がしたのだ。
「ドラゴ、神殿の奥でなんか光った気がする…」
神殿の奥を見つめたまま、ドラゴに訴えかける。
「日の光が何かに反射しただけじゃない?
ウツミムシはいるけど何もしないし、大丈夫よ。」
魔物でもないわよ。
そう付け加えると、薬草でいっぱいになった袋をフウライから受け取り、バッグにしまった。
「そうかなぁ。」
疑問を抱えたまま、空を見上げる。
木々の葉の間からは、チラチラと日の光が入ってきているのが見えた。
「魔物じゃないなら、いいか。」
それ以上追及することもなかった。
「ね、ね、帰り飛んで帰るなら少し見学できないかな。」
奥の神殿の壁に何か書かれているのが見えるし、そばには石造らしきものもある。
フウライの好奇心が刺激されるのも、無理はなかった。




