3-15
使命感で言ったわけではない。
勝算があり、かつ実行可能と踏んだからこその提案である。
そのことを伝えたにもかかわらず、お偉方は乗り気でない。
自暴自棄になっているわけでもないので安心してほしいのだが、機械型の射撃弾幕は兎にも角にも厄介なのだという認識で固まっているように思える。
なので俺も言い方を少し変えることにした。
「これまでの戦いで力を取り戻したが、未だ使えない武器がある。何かしらの条件を満たす必要がある可能性を考慮すると単騎での大物狩りは試しておきたい」
自然にフィオラを除外できる条件を付け加え、俺はポーカーフェイスのまま彼らの判断を待つ。
代表として前に出た一人が重々しく口を開き「できるのか?」と確認をしてきたので、俺は黙って頷いた。
「彼を起こさずに済むのであれば、それに越したことはない」
レデルの発言に一同が同意し、今回の襲撃は俺に任せることに決まったのだが……文句を言う人物が一人。
「余が協力してやろうと言っている」
当然単騎出撃も条件に入れているので無視。
若干消耗しているが、それくらいならどうとでもなる。
最高ランクの一番使いどころが多いバイクが若干エネルギーには不安を抱えるものの、そこは上手く他も使ってやり繰りすればいい。
忙しい戦いになりそうだ、と俺はヘルメットを被り戦闘モードを起動する。
よくよく考えればこのヘルメットも不思議だよな、とゆっくりと開くゲートを眺めながらバイクを出しつつ考える。
(表示される情報の出処は? オンライン? 何処に繋がってる?)
普通に考えたら独立したシステムではないことは明らかである。
なのにちゃんと機能している。
結局これに関しても「何もわからん」としかならず、考えることを放棄する。
バイクに跨り、ゲートが開くのを待ちつつ初動の動きを再確認。
敵の弾幕は知っている。
射程、攻撃範囲もしっかりと記憶した。
大丈夫だ――確かにそう思えるだけの経験を俺は詰み、この体はそれに応えてくれる。
ゲートが開き、俺はバイクを走らせる。
(大型ロボットにでも乗っていれば「スコール1、出ます」とか言えるんだがなぁ)
余計なことを考えるのはそれだけの余裕があるから……と言えれば恰好良かったかもしれないが、単純に今回の本当の目的が「過去作の兵装の解放実験」だからである。
ついついあれもこれもと妄想が膨らんだ結果、余計な思考が混ざっただけなのだ。
敵が強ければ強いほど強力な兵装が解放される傾向にあったと俺は見ている。
だから大型というボスクラスの敵を倒せば、何か得られるものはある可能性は十分に考えられる。
可能であれば過去作の兵装。
それが無理でもイベント武器の解放ができるのであればやる価値はある。
加速するバイクがゲートを潜り荒野へと飛び出した。
今回は戦術上今まで使ってこなかった兵装の検証も兼ねている。
しっかりと糧にして強くなる――誰もいない荒野を走るバイクの上、俺は僅かに口角を上げた。
さて、俺はスコール1を越えることができるかな?
荒野を走るバイクに跨り、スナイパーライフルを片手に持って突き進むは上空に浮かぶデペスの集団。
大中合わせて合計25体と数だけは少ない。
もう少し走ればスナイパーライフルの射程内となるのだが……その前に突然現れる赤い警告ライン。
つまり射程は向こうが上。
舌打ちを一つして警告域から車体を逃がすと後方へそれた弾頭が地面を大きくえぐった。
二発、三発と続く砲撃を綺麗に回避し、射程に入った大型に向けてスナイパーライフルの引き金を引く。
確認するまでもなく命中しているはずだが……やはりあのサイズでは最高ランクのスナイパーライフルでも豆鉄砲になってしまうのか?
砲撃を回避しながらも、余裕があれば射撃もする。
発射地点から推測するに攻撃しているのは大型のみ。
(ならばいっそのことスナイパーライフルは中型に使うべきか?)
どの道、大型に取り付く予定なので中型は邪魔になる。
今のうちに数を少し減らしておくのもよいだろうと狙いを変更。
しかし数を減らすとは言ったものの、流石は中型と言うべきか、すぐに落ちるような耐久をしていない。
狙って撃つ余裕がないので効果的な位置に命中していない、というのもあるのだろうが、ワンマガジン分叩き込んでも中型は未だ健在。
機械型故に防御力も高いのかもしれない。
そんなことを考えていると回避が僅かに遅れたのか、砲撃の衝撃に背後から襲われ「おっと」と思わず声を漏らす。
距離が着実に縮んでいるので、その分回避も早めにしなくてはならない。
それにしても、と思うのは向こうの速度である。
あの巨体でどうやってああもゆっくりと飛行できるのか?
魔法という概念があるので物理法則を無視している可能性もあるし、地球では考えられないような科学技術故の飛行能力か?
(それ言ったら宇宙人どもはどうなるんだよ、って話なんだよなー。ああ、ダメだ。作業になると余計なことを考える)
敵の砲撃位置が正確にわかるので思った以上に余裕がある。
「この距離を保って戦えば完封できるのではないか?」とも考えたが、そうなるとどれだけ時間がかかるかわからず、最悪はエデンを射程内に入れてしまう。
それまでに決着が着くのはまず間違いないだろうが、それでもリスクは犯せない。
ようやく中型を一体爆散させたところで、頃合いだろうとバイクを最高ランクのものへと乗り換える。
砲撃を回避した直後にバイクから飛び降りビークルを解除。
空中で新たにバイクを出してそれに飛び乗る。
加速するバイクに向けて放たれた砲弾を避け、さらに距離を縮めたところで新たな方角からの攻撃を察知する。
どうやら一部の中型がようやく射程に入ったようだ。
当然砲撃ならば余裕で回避できる。
だがその数が増えればその限りではない。
大型の砲撃間隔も短くなっており、徐々に使える砲門が増えていることがわかる。
なので使用する武器はこちら「ジャミングスモークグレネード」である。
名前の通りジャミング能力を持った煙幕を発生させるものであり、ゲームでは敵のロックを無効化することで一部からの攻撃の命中率を激減させることができる兵装である。
敵の中にはそれでも攻撃を乱射して、却って危険になる恐れもあるが……命中する攻撃を事前に察知できる今の俺にはメリットしかない。
(さて、向こうが機械ならば俺をロックして攻撃しているはずだ。それを解除した場合どうなるか? それとも全く効果がないか?)
ポンポンと進行方向へ向かってグレネードを放つと、爆発した地点から広範囲に煙幕が広がり始め、俺はその中へとバイクを突入させる。
すると煙幕を吹き飛ばすように周囲に着弾し始める敵の砲撃。
(俺を狙って撃っているのか? それとも適当にあたりを付けて撃っているのか?)
見当違いの離れた場所にも着弾しているので、邪魔な煙幕を吹き飛ばすために砲撃している可能性も考えられる。
当然複合的な目的もあるだろうが、これでわかったことがある。
それは「ジャミングは有効である」ということだ。
煙幕だけならばロックされる可能性は十分あるが、そこにジャミングを加えれば効果は十分。
どんどんグレネードを撃って戦場を煙塗れにしていく。
砲撃する中型の数は増え、至る所で砲撃の着弾による爆発音が聞こえてくるが、俺の近くに落ちてくる数は非常に少ない。
やはりジャミングは有効のようだ。
相手が機械型であるが故の弱点である。
(そうなるとあの変態の勅令剣はこいつらの特攻武器になるのか? それともデペスは寄生生物だから対象外?)
この場合どちらになるのか?
想定以上に余裕な展開になっているので思考が寄り道してしまう。
そろそろ頃合いと見た俺は次の段階へと移るべく、グレネードの煙幕を上空にも発生させ始める。
丁度良い岩で車体を跳ね上げ、バイクを蹴って更なる高度を手に入れる……つもりだったのが、突如現れる赤い警告のライン。
上に飛べば直撃はしないまでも確実に被弾する。
そう確信した俺はバイクを蹴って真横に飛んだ。
直後、俺とバイクの間を通り抜ける巨大な砲弾。
こちとら空中で乗り物恐竜を幾度となく乗り捨ててきた経験がある。
この程度の回避など余裕であると見栄を張りながら、ビークルを解除をしてジェットパックへと換装する。
引いた乱数は悪かったが、既に下準備は万全である。
ひたすら全力で上昇し、高度を上げて煙幕の中から出てきた時には上空のデペスと正面で対峙できる高さまで来ていた。
敵の砲門がこちらを向くよりも早く、構えていた重力砲を一番遠い中型に向けてぶっ放す。
大型も近いがまずは最寄りのより高い位置にいる中型に接近し、ジェットパックを解除してバイクを出して慣性を殺さぬように着地する。
走りながらブレードで中型を切り裂き、飛んでくる砲弾を華麗に回避。
勿論避けた砲弾は全て中型に命中している。
バイクに乗ったまま大型へ向かってジャンプする。
こいつらが真上に対する攻撃手段が少ないことは知っている。
だから大型自身が射線を遮るこの状況では着地は必ず通る。
古今東西、ここまで接近を許した無人の巨大ロボに未来はない。
さあ、蹂躙劇の始まりだ。




