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3-16

 モニターに映る戦闘を眺める一同が息を呑む。

 ジョニーのデバイスを用いた戦闘観戦システムは思いの外上手くいっているらしく、目まぐるしく状況が変わる戦場をよく映している。

「ちゃんと機能してくれたようで何よりです」と謙遜する職員だが、その声には確かな自負があった。


「機械のことはよくわからんが、これからもこうやって見ることができるんだな?」


 デイデアラがモニターを指差し確認すると職員は申し訳なさそうな顔をする。


「調整がまだまだ必要ですので毎回というわけには……」


 語尾を濁す職員の言葉にこのシステムの開発状況を察する一同。

 一瞬視線が職員の方へと集まったが、すぐにモニターに映る戦況が変わったことで全員の意識がそちらへと戻る。


「ほう、煙幕?」


 ジャミトスが感心したように呟く。

 英雄よりも研究者を自認する彼としては、本来この手の搦め手を使う戦いを好む傾向にある。

 しかし相手が知性も理性もない大群とあれば、望んでいた成果が得られることなど稀であり、有効活用できている事例があれば、それを知識として生かすことができる。

 とは言え、煙幕で何も見えないこの状況を詰まらなさそうにしている者もいる。

「何も見えないわねぇ」と頬に指を添えて息を吐くエルメシア。

 その状況がしばらく続き、煙幕が上空にも広がり出したことでスコール1の狙いを察する者が現れる。


「取り付く気ですかな?」


 ドータの呟きに何人かが頷き、また何人かが「なるほど」と声を漏らす。


「そうか、小さいのがいねぇから取りついちまえばこっちのもんか」


 デイデアラもスコール1の戦術を理解したのか、納得したように頷いており、それを補足するようにマリケスが続ける。


「でかい奴に乗れば、攻撃を封じた上で中型の攻撃は全部そっちに流れる」


 一人で出撃した理由はこれか、と単独戦闘に慣れているとしか思えない判断にマリケスは感嘆する。

 聞いたとおりであれば、スコール1は状況を説明された直後に単独出撃を提案しており、一瞬でこの状況を構築することを考えて出したことになるのだ。


「護衛がいなければ巨大構造物など取り付き放題というわけか。もっとも、それだけの能力がなければ机上の空論」


「だが、スコール1にはそれがある」


 クドニクの呟きにデイデアラがニヤリと笑う。

 場面は丁度スコール1が中型に取り付き大型へと飛び移る真っ最中。

 円盤状に近い大型にバイクに乗ったまま着地し、そのまま周囲からの砲撃を回避しながら中型へと攻撃を加えている。

 徐々に砲撃が苛烈さを増し、距離が近づくにつれ機関砲も混じり始める。

 この弾幕をスコール1は飛行する大型の下に潜ることで回避する。

 飛行タイプの機械型はその特性上、下に向かって撃つ砲門が多数を占める。

 大型の上に乗り、それに合わせて最大火力を出すために高度を上げた中型の無力化。

 高度を下げるのを待っていたかのように放たれる弾丸が中型の砲門を破壊し、再び大型の上に飛び出たスコール1はバイクに乗ると走り出す。

 そんなカメラの動きが間に合わないほどに目まぐるしく変わる戦場を拳を強く握り見守る者が一人。


「遠いわね」


 その心情を察するようにエルメシアがマリケスに声をかける。

「ああ……」とただ一言だけ返すマリケスは画面に映るスコール1を眩しそうに見つめていた。




 バイクが大型デペスの上から飛び立ち「あっぶねぇ!」と思わず叫ぶ。

 ビークルを解除してジェットパックへと換装。

 進路上の砲台をブレードで切りつけつつ、大型の下に再度潜り込んで中型の弾幕をやり過ごす。


(砲撃は回避余裕だが機関砲がまずい!)


 弾がばらける所為で体やバイクを何度も掠めた。

 一発一発は然程脅威ではないが、想定以上の弾幕量なので慎重に戦うことにする。

 そんなわけで二度目の退避なのだが……大型が予想以上にタフだ。

 あれだけバカスカ中型に撃ち込まれているのに全く効いている気がしない。

 とは言え、中型さえ落としてしまえばあとはやりたい放題だ。

「小型の護衛もなしにホイホイと釣られたこのデカブツに教育を施してやろう」と心の中で邪悪な笑みを浮かべるが、本当に学習されても困るので慎重に戦いつつ、速やかにこの戦いを終わらせるとしよう。


(となると使うのは強力な武器なんだが……)


 重力砲とレーザースライサーはともに残弾が三。

 どちらもメインのスロットで使っているのでジェットパックでは使用できない。

 そのためにも大型の上をバイクで走る必要があるのだが……重力砲はできれば複数巻き込みたい。

 中型の残りもあと二十体。

 大型を落とすことも考えるとレーザースライサーは万一のためにデカブツ用に取っておきたい。

 チラリと大型の下から姿を見せるなり飛んでくる砲弾をやり過ごしつつ、何をどういった順番で使うかを考える。


「重力砲の巻き込み数次第ではレーザースライサーは一発だけ中型を巻き込み前提で使う。プラズマキャノンはさっさと撃ち尽くしたいが……」


 大きな武器は両手が塞がるタイミングがあるので、バイクのハンドルを握り続けるような場所では不向きである。


(中型の数を減らせばバトルアーマーでゴリ押しもできるか?)


 そう考えたところで高度を下げた中型の砲門が俺を捕捉する。

 砲撃を避け、再び大型の上へと移動した俺はバイクに乗って走り出す。

 それと同時に重力砲を連続発射。

 片方は巻き込みに失敗し、合計三体の中型がベキベキと音を立ててひしゃげていく。

 このまま大型の上を走り抜け、再び下に潜ることになるかと思っていたところで正面に上昇する中型。

 思わずレーザースライサーで縦に一閃。

 もう一体中型がその下にいるのはわかっているので二枚抜きしたかと思ったのだが、そちらは何と無傷のまま高度を上げてこちらを捕捉。


(大型を貫けなかったのか!?)


「400×600だぞ!?」と有志の検証で多分正解に近いレーザースライサーの攻撃性能を上回る大型の耐久力に驚愕の声を漏らす。

 バイクから飛び降り、重力に任せて落下しながらプラズマキャノンを構えて中型に向けて放つ。

 機関砲が体を何発も掠めるが、乗り捨てたバイクが盾になってくれたので直撃はなし。

 エネルギーもそろそろ枯渇する頃合いだったので、乗り換える必要があり、ここが使いどころとばかりに頑張ってもらった。

 ここから先のバイクはランクを下げることになるが、中型の数もその分減らしたので問題はないと信じたい。

 大型の真下を飛行しつつ、目についた砲台はブレードで切り裂き、降下してくる中型に向けてライフル弾を撃ち込む。

 できればもう少し強力な武器を使いたいが、地形の関係で今回は命中を重視。

 上に上がるにしても中型の位置に合わせてこちらも動かねばならず、敵の誘導を失念していたわけではないが、完全に今回は失敗していたようだ。

 大型の周囲を上手く中型が囲う形になっている以上、多少の被弾も止む無し。

 そう判断したなら覚悟も決める。

 中型の位置を確認し、一番被弾が少なくなるであろう場所で大型の上へと飛ぶ。

 ジェットパックを解除してバトルアーマーへと換装。

 前面にシールドを展開し、固定砲台と化して正面の中型と真っ向から撃ち合う。

 使用する武器は両肩のレールキャノン二門。

 両手の武器は滑り落ちないように対艦刀にして大型の装甲にぶっ刺し、肩武装だけで正面の一体を撃破。

 向きを変えて別の個体を狙おうとしたところでシールドが限界を迎え、中型の砲撃が直撃するも最高ランクのバトルアーマーは一発食らった程度では壊れない。

 ただ、二発三発どころではない砲撃が立て続けに飛んできたので対艦刀を捨ててダッシュで退避。

 バトルアーマーを解除してレーザースライサーでこちらを砲撃する中型を大型を巻き込むように一閃。

 敵との射線を遮るようにバイクを出し、残り一発の重力砲も巻き込めそうなポイントに発射。

 バイクは砲撃を受けて見事に爆散。

 ランクが低いと耐久も低い。

 ジェットパックに換装し、再び大型の下に潜るついでに敵の位置を把握する。


(あー、これは囲むような位置取りしてるな)

 

 学習したのか?

 それともこういう状況ならばこう動くようになっているのか?

 どちらにせよやることに変わりはない。

 多分使うことはないだろうと思っていた案へと戦術を変更して俺が取り出したのは、先ほどお世話になったばかりのジャミングスモークグレネード。

 大型のデペスをジャミング付きの煙幕が覆い始める。

 何のために大型の砲台を潰して回ったのか?

「まさにこの時のためである」と予定を変更した口で語る。

 戦術的な動きができない時点で、こうなってしまえば勝敗は決まったも同然である。

 さっさと中型を撃破して、このデカブツの解体に移るとしよう。

 ブレードを抜き放つ俺にジェットパックのエネルギー切れ間近を知らせるアラートが鳴る。

 煙幕の中ではジェットパックのランクを下げて飛行状態をどうにか維持し、高度を戻して念のために再度ジャミングスモークグレネードを発射する俺がいた。

 恰好を付けるとすぐこれだ。

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