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4-13

 向こうも俺が合流してくるとは思っていなかったらしく、バイクで駆けつけたところ意外そうな顔をされた。

 味方が構築する前線ラインを抜け、後衛陣のところまで来ると徐にバイクを停止させる。

 そしてそのままガチャガチャと武器のリロードを始めるのだから周りの目が少し痛い。


「……連戦でリロードをする暇がなくてな」


 説明するように高速で武器を切り替えてリロードを完了させていく。

 明らかに管理ミスだが、そのお陰でレイメルは間一髪のところで助かっている。

「それだけ急いで駆けつけてくれたということですね」とフォローしてくれるレイメルが有難い。

 同時に色々と面倒なことになりそうだから、と意図してこの状況を作ったことを申し訳なく思う。

 実際に連戦でリロードしていない武器が幾つかあったので嘘にはなっていない。

 勿論メインで使用しているものではないので戦闘に大きな影響はない。


「それに、戦果の独り占めはよくないからな」


 丁度良かった、と付け加えたところ何人かが不思議そうな顔をしてこちらを見た。


「スコール1。今回は緊急戦闘事項が適応される。その心配は無用だ」


 アーシダの言葉にリロードを行う俺の手が止まる。


(緊急戦闘事項? 何か聞いたことがあるような?)


 俺は首を傾げると同時に思い出した。

 確か初期にエデンの法律とか規則を記載されているページを見た記憶がある。

 俺は端末から見ることができるので断ったが、機械の扱いに慣れない英霊のために冊子が配られていたはずだ。


(うん、何かそれっぽいのを見た記憶がある。内容は頭からは抜け落ちてるけど、多分俺は緊急戦闘事項だったかを読んでいる)


 だからアリスやエデンの職員が何も言わなかったのか、とこれがただの確認不足ではなく「単に忘れていただけ」という俺のミスであることがわかった。

 しかしよくよく考えれば、人類の危機的状況に戦果云々言うのは明らかにおかしい。

 こんなこともわからないくらい俺は余裕がなかったのかもしれない。

 色々あったとは言え、もう少し冷静になるべきだったと反省する。

 ともあれ、これ以上戦果を稼ぐのもどうかとも思うのも事実。

 何せあれだけ派手にやらかしたのだ。

 残りを同期に譲るのは戦友に対する行動としておかしくはない。

 なので俺は誤魔化すように提案する。


「主力はこちらが頂いたのでな。こっちでは手伝いに徹した方がいいかと思っていたのだが……」


 暗に武器を貸し出すために戻ってきたかのような言葉を口にする。

 それに早速食いつく者が一人。


「あの子出して」


 そう言ってウィーネリフェルトがずいっと俺に顔を近づける。

 彼女が欲しているのはTier2のスナイパーライフル「ジョーカー」である。

 連射性能を追求した非常に取り回しの良い狙撃銃だが、これをいたく気に入っていたのは知っていたが……迫力に押されてジョーカーを取り出す。

 渡されたスナイパーライフルに頬ずりしながら「おかえり」とか言っている。

「こんなキャラだったか?」と俺は首を傾げつつ、それはお前のものではないとは口に出さないまでもじっと睨むだけに留めておく。

 その視線に気づいたのか「わかってるわよ」と言いながらもしっかりジョーカーを抱きかかえるウィーネリフェルト。

 本当に大丈夫だろうか?

 心配になってきたところで二人目の登場だ。


「私も前回と同じものでお願いします」


 そう言って俺の前に立つレイメル。

 取り出すのはTier1のアサルトライフルである。

 プレイヤー目線では使いどころがあまりない武器だが、バランスが良くて癖が少なく使いやすい。

 今更だが、見た目ファンタジーな神官がアサルトライフルを持っているのはどうなのだろう?

「いや、一周回ってアリか?」と頭の中で一度考え直す。

 記憶が確かならばチェーンソーを持った神父なんかもいたはずだ。

 むしろない組み合わせを探す方が昨今の多種多様な作品溢れる時代には難しいだろう。

 俺はリロードの作業を止めることなく、最後の一人に武器を渡す。


「儂が使うのか……」


 困惑気味のクドニクに俺は黙って頷いた。

 全体を見通し、指揮する立場にある彼も知っておいた方がいいだろう。

 そんな思惑で貸し出す予定だった三つの武器スロットの最後を彼にした。

 手渡したのはレイメルと同じアサルトライフル。

 それをしばらく使った後、クドニクがアサルトライフルを見つめて押し黙る。

 すると不意に「これがあれば……」と呟いたクドニクの顔が曇る。

 どうもこの老将軍は祖国への想いが強いのか、便利なものや強力な兵器を前にすると色々と思い出してしまうらしく、このようにちょくちょく手が止まる。

 マガジンを投げ渡しながらも俺はリロードをする手を止めない。

 これを見越してメインスロットの武器のリロードを後回しにしていたのだ。

 スコール1に抜かりはない。

 これで先ほどの失敗はチャラだな、と俺は満足そうに頷く。


(貸出もなー、こうして弾薬の補給が俺頼みでなければまだ色々とやりようはあったと思うんだけどなー)


 そこで俺はふと思い出した。

 そう、あるのだ。

 リロード不要で何度でも使える武器が、俺が所持しているものの中に確かにある。

 その武器とはプラズマキャノンである。

 小型ジェネレーターを搭載したエネルギーパック不要のチャージ式の武器であり、俺が持っている中でも非常に高火力な武装である。

 問題は一発撃つと次弾のチャージに最速でも五分かかることだ。

 貸し出す対象にならねぇな、と他に候補がないかとリロード作業をしながら考える。

 しかし残念ながら出てくる候補は専用装備が多く、そうではないものは性能が低く、貸し出す意味が薄いものばかりだった。

 やはり通常モードで武器スロットフル活用は浪漫止まりのようだ。

 そんなことを考えているとリロード作業も完了し、敵の数も減ってきたのか圧力が随分と弱くなってきているように感じる。

 味方にも大分余裕ができているらしく、いつの間にか魔力切れから復活していたエルメシアも欠伸をしながらデペスを倒している。

 こうなると敵陣で一人頑張っているリオレスが少し心配になるが……まあ、大丈夫だろう。

 負傷しているデイデアラもレーザー砲台がなくなったことで役目がなくなり、こちら側と合流して無理をしない程度に暴れている。

 利き腕を失ってもあれだけ動けるのだからやはり英霊である。

 最近下がりっぱなしであったデイデアラの株が持ち直している。

 そんな中、俺が何をするかと言えば……後は残党を処理するだけという戦況になった今、参戦するのも気が引ける。

 弾薬補給係なので手持無沙汰というわけではないが、戦場で戦闘していないとなるとどこか落ち着かない。

 するとそんな俺の心中を察してかクドニクが声をかけてくる。


「挙動が不審すぎるぞ、スコール1」


 どうやら動きに出ていたらしく、クドニクはそう言ってアサルトライフルを俺の胸に押し付けてくる。


「戦場で戦っていないことが不安か?」


「……かもしれん」


 俺はそう返事をするとアサルトライフルをしまい、新たにマガジンを取り出してウィーネリフェルトに投げ渡す。


「戦いだけが、お主の全てではあるまい」


 儂が言えたことではないがな、とクドニクは苦笑しながら付け足す。


「同意するところなのだろうな。だが俺は……」


 言いたいことはわかるが、スコール1として俺はその言葉に頷くことはできない。

 戦う理由が未だ変わっていない彼にとって、俺がすべき選択は「地球への帰還」でなくてはならない。

 それは俺にとっても同じである。

 だからこそ、俺はエデンの側に立ち、貸しを作り続ける道を選んだのだ。

 俺の返答に軽く息を吐いて背を向けるクドニク。

 もしかしたら呆れられたかもしれないが、恐らくだが彼の心中は別だろう。


「あー、終わった終わった」


 そこに残った左腕を回しながらデイデアラが如何にも「疲れています」という顔をして戻って来る。

 既に遠目にしかデペスの姿はなく、射程のある攻撃を持つ者による殲滅が始まっていた。

 どうやら出番がなくなったことで戻ってきたようだ。

 流石にあの負傷状態では戦闘を続ける気はないようである。

 周りを見ると後衛陣も負傷者ばかりで、むしろ無傷の者が一人しかいない。

 ちなみにその無傷の人物がウィーネリフェルトである。

 一瞬頭に「芋砂」という単語が過ぎったが、彼女の場合は単純に狙撃武器しかないことに理由がある。

 彼女の狙撃銃は魔力を込めて使用する関係上、どうしても戦術が限定される。

 だからこそ俺が出すスナイパーライフルに執着を見せるのだろうか、と少しだけ納得する。

 ともあれ、見える範囲に敵はいなくなり、リオレスもこちらに向かって来ているとのことである。

 こちらの戦闘は終わった。

 そう判断しても良いだろうが、確認は必要である。

 なので俺がジェットパックへと換装し、上空から敵を探すことにする。

 最後はしっかりと休ませてもらったのでそれくらいは自主的に行おう。

 戦闘終了の信号弾でも上がれば良いのだが、待っている時間を無駄にしたくはない。

 何せ負傷者が多いのだ。

 なるべく早く帰還して治療を受けさせたい。

 そんな訳で上空から索敵を行い、敵影を確認できなかったので地上に降りて報告。

 第八期はこれでエデンへと帰還することになった。

 しかし俺はまだ帰らない。

 戦闘終了の合図がないということは他はまだ戦っているということだ。

 機動力のある俺なら他の戦域の援軍として向かった方が良い可能性がある。

 その旨をクドニクに伝え、他への伝達を頼むと俺はバイクに乗って走り出す。

 するとしばらくして俺の脳内に誰かが語りかけてきた。


『スコール1。こちらの戦闘は既に終了している』


 どうやらイザリアがこちらを発見して援軍は不要であると伝えてきたようだ。

 ということは未だ戦闘をしているのは東側――フィオラがいる方面か、南側の第六期とその他が当たっている区域となる。


『ちなみに南側も既に戦闘は終わっている』


 追加の情報で残るは東のみのようだ。

 俺が担当した主力の次に敵が多い場所というだけあって、フィオラでも時間がかかっているようだ。

 とは言え、俺が援軍に出る幕がないのは明らかである。

 よって俺もエデンへと帰還することに決めた。

 ケイも負傷したとのことなので、そちらの状況も知っておきたい。

 俺はバイクを方向転換してエデンへと向ける。

 流石に今日は疲れた。

 戻ったらゆっくりと休ませてもらうことにしよう。

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― 新着の感想 ―
うむ、フラグの臭いが強い ってか最後の一文が明らかにフラグ建築しとるw
なーんか嫌なフラグというか気配が少し
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