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リーファはビッグボアを探す

「リーファ今は何をしているか分かるかい?」


「うん。 ビックボアを探してるの」


「探してるって、そんなとこ探してもいないよ」


 リーファは一生懸命、森の中で茂みを探してはかき分けたり、動物が隠れていそうな所を見つけては忙しそうにしている。

 嫁のロシアナから勧められた依頼を受けた俺達は、ビックボア討伐に来ていたのだ。理由として魔物を倒すための基本的知識を身につけていくためだ。


 リーファはハッキリ言って強い。俺が今まで見てきた魔法使いの中でも群を抜いている。だけど反面、経験も知識もない。おそらく修行は高度なレベルで受けてきたのだろうが、実戦は全くといっていいほどしてこなかったタイプなのだろう。


 魔物の名前を聞いてもピンとこないことや、魔物の生態を聞いても全く知らなかったことから、これからリーファが冒険者として成長していくにはこういったところを中心に勉強させていこうとロシアナと話をして決めたのだ。

 家では勉強、俺といる時は狩りと、リーファも中々忙しい。

 よく文句も言わずに頑張っていると思う。


「あっ! ハイケル、リスさんいたよ!! 捕まえていい?」


「こらこら、今俺たちはビックボアを狩りに来てるんだから、リスさんと遊んでたら日が暮れちゃうよ」


「………は〜い」


 と、まぁ、俺といる時は半分遊び感覚でいるみたいだけど。


 俺からは2つ課題を出した。

 一つめは気配察知(サーチ)と森の精霊の加護は使わないことだ。

 これを使われると殆どの魔物が簡単に見つかってしまう。

 便利な魔法だが連戦となるダンジョンなどでは無駄に魔法を使いすぎて戦えなくなったりでもしたら生命を落とす危険がある。魔法使いは肉体の強さより、魔力が尽きないよう立ち回るのも戦術の1つだからだ。

 だからこそ経験積み、必要最低限で魔法を使えるようにリーファはなってほしいのだ。


 それともう一つは自分で考えて魔物を探してみるだ。

 今までは精霊に教えてもらったり、俺が主導で動いていた。

 だから、この単純なクエストを一度リーファに少しだけやらせることで色々考えなくてはいけない事を知っておいてほしいのだ。



「おさらいしようか。 ビックボアはどんな魔物かな?」


「ボアをもっと大きくした、おっきいボアだよ!」


「うんうん。 そうだね。 ボアをもっと大きくした上位種だね。 それから?」


「う〜ん………人間を襲う。 何でも食べる?」


「そうだ。 ビックボアは人間も襲うし、人間も食べる事もある。 要は雑食だ」


「やったぁ!! リーファ全問正解っ!」


 ふふんと得意気な表情を浮かべ喜びのポーズまで決めている。


 こんな子供って魔物に対して恐怖心がないものなのか?流石に俺でもこれくらいの歳では多少森の中に入る時は警戒してたけど思うけど。


「その、リーファは魔物が恐くないのかい?」


「恐いよ。 でもハイケルがいるから大丈夫なの。 森には精霊さんも沢山いるし」


 聞いた瞬間、一瞬だがリーファの顔付きが変化した。それは、これまでハイケルにも一度も見せたことのない顔だった。だがリーファは直ぐに気を取り直し、いつもの無邪気な姿をハイケルに見せた。


 気のせいか?一瞬リーファの顔が曇ったようにも感じたけど。確かにこれくらいの子供なら大人といると大概の事は気にせず安心して何でもしていたな。だとすれば、それくらいはリーファも俺の事を信頼してくれているのだろう。


 本当は生息場所を聞き出したかったんだけどな。まあ、日が落ちるのはまだ当分先だ。リーファにはもう少し頑張って貰うとするか。ダメそうなら助け舟を当然出すが、今回のビッグボアの居場所は大体の目処がついている。毎回襲われる場所が決まっているから。



 ビックボアは基本何でも食べる。植物から穀物、小動物に人間と、自分より弱いとみなした相手には全力で襲いかかってくる。

 村人や新人冒険者相手だと危険な相手だ。


 夜間問わず日中でも行動し、人里に現れては畑を荒らし、人間を襲う。何処にでもいる魔物だが、よくいる生息場所は水田や農耕地からすぐの森付近だ。今回、畑を荒らしているのは決まった集団がいるのだろう。

 ビッグボアは頭が悪いが、そこまで馬鹿でもない。村人も、王都から派遣で来ている兵士もいるので弓や槍で応戦されると大人しく引き上げていく。それは生命を天秤にかけてまで戦わない知能くらいはあるということだ。


 まあ、畑があればわざわざ戦わなくても隙をみて食べればいいだけだからな。





 馬で走って1時間と掛からないほどの距離にあるムサハ村は、なんでも王都レガイアができる前からある古い村だ。

 この村は城壁がないので度々ゴブリンや、ウルフ、ビックボアなどに襲われる。


 依頼主の村長に柵とか何か対策しないのかと不思議に思い聞いたのだが『柵なんて50年も前に壊された。 あんなものビックボアにとったら余計怒らす原因になる』らしい。

 村を維持するのも大変なことだ。


 う〜ん……真剣にリーファは探しているところ悪いんだが、やはりこのままの調子ではムサハ村に泊まる事になってしまう。無断外泊はロシアナを怒らす原因にもなりかねないので避けたいところだし。


 リーファを呼び止め、そのままアイテムボックスからクエスト票を取り出してもらう。


「もう一度、よく読んでみようか?」


 内容をよく読んだら生息場所まで記載があるからな。流石にリーファも分かるだろう。


「あっ! 分かった。 畑から近くの森だった!!」


「おお!! 正解だ。 凄いじゃないか! じゃあそこに向かおうか」


「うん! えへへ。 全然違うところ探してたかも」


「いいんだよ。 それを勉強する為にリーファに任せてみたんだ」


「うん。 もう少し頑張ってみるねハイケル」


 そう言ってリーファは笑顔で引き返すように森の奥へと進んでいく。


 えっと、そっちは反対だな。 あれだ、リーファって方向音痴だったんだな。

 あの時は、森の精霊に案内されてたのか気付かなかったな。


 初めてハイケルが気付いたのはリーファは極度の方向音痴だった。



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