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高校生活は異世界人に囲まれて  作者: 出水 彰
第0.5章+10章 恐怖の猛毒蛇!! 深緑の公園に怪蛇ツチノコは実在した!!
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【1章 11話】 ツチノコだーーー!

 マージエリイ夫人の洋館を出ると、携帯電話のマップアプリを起動させる。現在地は勿論、多田篠公園の森の中である。


 明確に目的地があるわけではないが、取りあえず公園の中心部に向かって歩いていく。

 

「よく出来ていましたね。参考にさせてもらいます」


 鞍馬が楽しそうにそう言う。


「よく出来ていたって、どういうところが?」


「雰囲気作りですよ。騙されに来た客が、気持ちよく騙される環境。

 これはなかなかに難しい。人間という生物は、自分が知的で物事を知っていると思い込んでいます。


 だからそんな自分より目立っていて、少しでも知的部分で劣る人間を無知だと言って攻撃するんです。

 そこであの洋館です。とにかく怪しい物を猥雑に並べて、根源的に誰もが考える儀式を見せる。そしてパニックを起こさせて判断基準を鈍らせる。


 そうして一旦でも取り込めば、知的な自分が騙されている筈は無い。自分で判断をしてここにいるのだと思ってしまう」


「へえ、そうなんだ」


 人間の俺に言う話で無いと思うけど、鞍馬が楽しそうだから良し。


「そうね。あの机から伸びていた作り物の腕なんかもまさにそうね」


 まさかの水引が鞍馬の話に入って来た。すると阿字ヶ峰が驚きを見せながら駆け寄って来た。


「え! あれ作り物じゃったのか?」


「あなたそれでも幽霊?」


「う、うるさい。仕方が無いじゃろ。ワシは人間を驚かす側なのじゃから」


「向上心が無い幽霊ね。人は過去から新たな発明をするの。逆に言うと新たな発明をしたければ過去を知る必要があるのよ。

 インターネットを使えば、過去に使われたトリックを無数に知れる。幽霊なら驚かせ方を学びなさい。

 時代に取り残されて、本当の意味で過去の遺物になりたいの?」


「ぐぬぬ」


 霊能者が呪いの人形に、向上心の話をしている。敵に塩を送る状況を目の当たりにして、中々シュールで面白い。

 

 だけど俺としても作り物というのが気になる。


「そのマージエリイ夫人が使ったトリック? 種を教えてくれないか」


「いいわよ。あれはマテリアルズ現象が起こったと思わせるトリックよ。


 霊媒師の両手が塞がっているから、手による操作が不可能だと勘違いさせるの。

 真実は靴の先にゴムひもを取り付けた手をはめておくの。そして足を上げてその手を出して驚かせた後、用済みになったらゴムひもを引っ張って、全てをポケットなんかに隠すのよ」


 俺と阿字ヶ峰は同時に感嘆の声を上げる。


「ちなみにマージエリイ夫人が行おうとした交霊方法だけど、あれは女性霊媒師ユーサピア・パラディーノが行っていた方法と同じね。


 彼女の左手の上には委員長の手があり、彼女の右手の下にはフューレさんの手がある。彼女は手を少し動かして、右手と左手に入れ替えた。結果として手で繋がれた円は継続しているけど、右手が空く。その手で砂に文字を書いたの。指か棒を使ってね」


 俺と阿字ヶ峰とフューレは同時に感嘆の声を上げる。


「なんじゃ。全てトリックじゃったのか。驚かせよって。だが良い勉強になった。

 ワシは立場上驚かす専門じゃったからのう。髪を伸ばして物を動かすだけでは、時代遅れという話は理解できる」


 幽霊が現代知識を取り入れて人間を驚かす。手に負えない状況ではある。


 まあ、幽霊が必ずしも悪い存在では無いと俺は知ったので、昔よりかは恐怖を感じないと思う。

 自由にさせておこう。


 心霊映像が派手になる未来を想像していると、フューレがポツリと呟く。


「マージエリイ夫人って何者だったのかな?」


「俺とフューレの記憶を消した奴らの仲間の可能性がある」


「え! 敵だったの!」


「敵かはわからないけど、フューレと以前に会っているのは確実だ。記憶は有るか?」


「無いよ」


「それが証拠だ。俺が玄関先でマージエリイ夫人に、フューレが交霊会に興味があると言ったら、マージエリイ夫人は迷わずにフューレを見た。

 事前に知っていたんだ。


 何故知っているのか。フューレの情報を事前に探っていたのか、もしくは俺たちの消された記憶の中にいたのか。

 俺の予想になるけど、2日前も俺とフューレはマージエリイ夫人に会って交霊会に参加した。そしてあの暗闇の中で、何かしらの方法を使って記憶を消された」


「阿字ヶ峰ちゃんが驚いていたけど、本当に部屋に誰かが入ってきたのかな」


「そうだろうな。阿字ヶ峰は人間の気配は感じ取れる」


 阿字ヶ峰が苦い表情で俺を見上げる。


「確かに人間っぽかったわ。驚く必要は無かったんじゃな。フヒヒ」


「そのおかげで争いも無く追い払えたんだ。結果的に良かった」


「敵であるのなら、あの場で叩き潰してやって良かったんじゃないかのう」


 マップアプリを見る。もう少し離れるか。


「それは理由があるんだけどその前に。水引に聞きたいんだけど、砂の上に絵を描いたのは誰だ?」


「子供の幽霊よ。マージエリイ夫人、トリックは使っていたけど、霊を呼び寄せることには成功したみたいよ」


 当然のようにさらっと言ってのける。子供の幽霊の存在に、今更驚かない。いたんだろう。


「そうか。あの絵はマージエリイ夫人の洋館の場所を示していた」


 携帯電話をフューレに見せる。この多田篠公園は上空から見れば台形で、砂の上に描かれたバツ印の場所に洋館がある。


「ツチノコはあそこにいたんだ」


「それじゃあ戻って探してみる?」


「それは直接聞いてみた方が早いだろう。そろそろ洋館からも、歩道からも遠い。鞍馬、まだ黒ずくめの7人は俺たちをつけているか?」


「変わらずに」


 俺はその場に立ち止まると辺りを見渡す。そして大声で叫ぶ。


「出て来いよ。俺達をつけてきているのは知っている。決着を付けようじゃないか」


 風の音が聞こえる。しばらくすると、落ち葉を踏む音と共に7人の黒ずくめの者たちが木の陰から現れた。


 手には流線型の銃のような物を持っている。銃は真っ黒で魚に似た形だ。被っているヘルメットのバイザーも真っ黒なので、顔はまったく見えない


「今なら取り押さえられますよ」


 小声で言った鞍馬に向けて、俺は否定の意味で首を振る。


「もう少し待ってくれ」


 改めて見ても識別は不可能だ。それならしょうがない。


「ケイ、いるんだろ。話をしよう」


 7人の黒ずくめの1人が、右手でヘルメットの側面を触る。するとヘルメットの右から左に線が走り、顎のあたりから首の後ろに向かって折り畳まれていく。


 そうして現れた顔は、クラスメイトのケイである。彼女はスーツの中から髪の毛を引き上げる。

サラサラと髪が風で揺らめいている。


「どうして私だとわかったの?」


「匂いだ」


「匂い? きっしょ」


 ケイの表情が歪む。そんな反応もいつも通りのケイである。ある意味安心する。


「記憶を消された理由に心当たりは?」


「ケイたちは俺たちにツチノコを探されたくはなかった。


 だからツチノコに関する記憶を徹底的に消した。俺は思い出したけど、フューレはツチノコ自体を不自然なほどに忘れていた。

 他に理由があるのなら、ツチノコの記憶を消す必要はない。


 ケイは教室で俺たちがツチノコを探していると知った。2日前と今日、そのどちらも教室にケイがいた。


 次にあのマージエリイ夫人の洋館だ。俺たちをずっとつけていたケイたちが、あの洋館に簡単に入れた理由は、同じ組織であるから。


 洋館に立ち込める匂いだ。あれはおそらくムスク系のお香だ。そのお香は発散させると上品な石鹸のような匂いになる。ケイの匂いと似た匂いに。


 何かしらの繋がりがある可能性がある。だから試しにケイの名を出したら、まんまと引っかかったという訳だ」


「私が迂闊だった。そういう訳ね。上手くいかない。イライラする」


 ケイはため息をつくと、髪の毛が毛先から青色に代わっていく。


 何だあれ? まずくないか


「鞍馬。頼む」


「わかりました」


 鞍馬が右手を上げると、半透明の何かが7人の黒ずくめに襲い掛かる。ケイを除いた6人はその半透明の何かに殴られて倒れ込んだのだが……。


「甘いわ。いけ、マージアリ!」


 ケイがそう言うと、腰のカプセルから3つの光球が飛び出す。その光球は空中で形を変えて色が付くと、半透明の何かに襲い掛かった。


 半透明の何かが「痛てて」と声を上げると消えてしまった。

 残された元光球の物体だ。


 その姿は腹が膨らんだ蛇のような姿だ。


「ツチノコだーーー!」

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