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高校生活は異世界人に囲まれて  作者: 出水 彰
第0.5章+10章 恐怖の猛毒蛇!! 深緑の公園に怪蛇ツチノコは実在した!!
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【[0.5章 7話】 ケイとの他愛の無い会話

 清水と別れた俺たちが向かっている先は、キャバクラ嬢が入院している【神結医療センター】だ。

 

 正式名称は国立病院機構神結(かみゆい)医療センターであり、名の通り国が直接経営をしている医療施設である。

 

 飲食店から徒歩30分ぐらいとのことなので、歩きで向かっている。

 この程度の距離でお金を払うのは勿体ないし、面会をするのならお見舞い品を買わないわけにはいかない。

 

 そうして歩いていると、雨井が携帯電話を取り出した。


「ごめん。電話がかかってきた。待ってもらってもいい?」


「ああ。面会は20時までだ。時間はあるから大丈夫」


「ありがとう」


 雨井は小さく頭を下げると、駆け足でどこかに行ってしまった。聞かれたくない話もあるだろうから仕方がないけど、ケイと2人きりになったのは問題だ。

 

 気まずい……。


 何を話せばいいのだろうか。共通の話題は一切見当がつかないし……。


 そうだ、今のうちに調べようか。

 

 俺は今の状況を考えないようにする為に、すぐに携帯電話でネット検索をした。検索ワードは『天坂 事件』である。


 検索ボタンを押すとずらっと検索結果が表示されたので、上から見ていくことにする。


 ニュースサイトやまとめブログの記事は、簡潔にまとめられていてわかりやすいのだけど、俺が聞いた話の半分以下。所詮は町の噂話程度だ。


 次から次へとページを開いていくと、個人のファンサイトに行きついた。ここではアイドル天坂のみに絞った出来事や、過去と未来の出演メディアが一覧として掲載されている。

 

 情報の更新も速く、今朝見たばかりの食べ歩き番組の内容が既に載っている。

 天坂はファンに愛されているのだろう。

 

 ファンサイトを見ていくと、今回の事件に繋がるストーカー被害についても、どこよりも詳しく時系列順で書かれている。更にファンサイト管理人の考察まで書かれている。


 記事を読む限りでは、天坂の熱愛報道はでっち上げであり、内部の者、つまりは同じアイドルグループの《アイラブ スターズアップ》内の他ユニットの誰かが関与している可能性が高いらしい。


 俺はアイドル業界に触れてこなかったから知らなかったけど、精神をすり減らしながら輝き続ける苦労と、それを一心に盛り上げようとするファンの思いが、このファンサイトから伝わってくる。


 そして今回のぬいぐるみ窃盗事件の情報の濃度だけど、これほどに熱がこもったファンサイトであるが、ニュースサイトよりも多少はマシ程度で、俺の方が詳しいのではないかと思われる情報だ。


 場所も時間も、『~だと思われる』といった曖昧な表現に留められている。ベンチの記載もなければ、本件に連なっている銅像の首が折れた事件や、コンビニの事件の記載は無い。

 

 事件について得るものは無かったが、天坂については詳しくなった。

 

「何を見ている?」


 俺が携帯電話を凝視しながら唸っていると、まさかのケイが話しかけてきた。


「この事件について、少しでもヒントに繋がることがあればと思ったんだけど、うまくはいかないな」


「そう。委員長ってもしかして本気?」


「本気って何がだ?」


「私のペットが起こしたとされている事件、本気で無実だと信じているの?」


「信じているさ。俺以外にだれがケイの正しさを証明してやれるんだ」


「それが出来たとして、委員長に何か徳がある?」


「俺に徳があるかは終わってみないとわからない。だけどケイにとっては徳があるだろ。それでいいさ」


「自己犠牲のつもりかしら。きっしょ」


 こういう時でも悪態を忘れないケイに、昔の俺ならば憤慨しているところであるけど、ケイのこういう性格にはもう慣れたし、このぐらいで心を乱されていてはあのクラスで委員長をやっていけない。


 俺は笑顔でケイに答える。


「そうでもないさ。俺の目標は全員揃って卒業だ。ケイに問題は一緒に解決する。それで少しでもあのクラスに対して前向きになってくれれば、俺にとっての得になる。そう思ってくれればいい」


「委員長がマゾヒズムだと理解したわ。いじめられたら喜ぶ人だったのね。今までの行動、得心がいったわ。私の言葉に委員長は喜んでいたのね。フフッ」


「勝手に納得しないでくれるか。俺にそんな趣味はない」


「真実を見られない可哀そうな人。いや、ここで憐れむよりも蔑んだ方がいいのかしら」


「好きにしてくれ。俺はケイのことに真剣だとわかってくれればいい」


「そうね……」


 ケイは背中をビルの壁に預けると、寂しげな表情で雲一つない空を見上げた。


「だったら……、……くれる?」


 ケイが何やら呟いているが、言葉を聞き取れない。


「何だって? 聞き取れなかったからもう1度言ってくれ」


「はあ? 言う訳ないでしょ。独り言を聞こうとするなんて、変態の発想ね。きっしょ」


「いやいや、明らかに疑問で終わっていただろ。俺はこういうの、凄い気になるんだ。チャンスをくれ」


「うっさいわね。じゃあ私のペットの無罪が確定したら、改めて聞いてあげるわ。私が覚えていたらね」


「その言い方、絶対にしらばっくれるつもりだろ。録音しておけばよかった」


「委員長って意外と粘着質よね。ストーカー事件を起こしても、私は擁護してあげないから気を付けることね」


「しねえよ」


 とは言うものの、俺が粘着質というのは当たっているかもしれない。直した方が良いよな。そんな反省をしていると、雨井が駆け寄ってきた。


「待たせてしまってごめん。えっと、親からの電話だったの。どこにいるんだってね。過保護が過ぎるよ」


 ここで敢えて帰らなくて大丈夫なのかとは聞かない。雨井に離れられたら困る。


「天井の電話も終わったし、行くか」


 それから時間が過ぎて17時ごろ、キャバクラ嬢の寶川が入院している神結医療センターに到着した。


 思っている以上にお見舞い品を買うのに時間がかかってしまった。店は多すぎても面倒だと思い知らされた。


 俺はこの町に来てまだ病気にかかっていない。だから初めて神結医療センターを見たのだが、とにかくその規模の大きさに驚いた。

 

 事前に地図上で見ているから大きさは想像していたけど、実物の迫力は衝撃だ。

 

 単純に背の高い建物であるとか、そんな話ではない。敷地があまりにも広い。俺たちは道路を背にして正面入り口の前に立っているのだが、左右を見渡すと自分の視力では先が見えないほどに広い。


 それもその筈で、遊園地がすっぽりと収まるほどの広さを有している。

 創設から100年になろうとしている施設で、敷地面積は当時からほぼ変わっていないのが更に驚かされる。

 

 とはいえほぼ全ての建物が建て替えられている上に新造を繰り返しているので、面影は敷地内に設けられた一部の花壇の位置や、歩道の配線ぐらいのようだ。

 

 多田篠公園は公園としての広さに驚かされたが、神結医療センターは病院としての広さに驚愕する。


 この町にある施設の規模感に笑っている場合じゃない。俺たちの目的はキャバクラ嬢の寶川に会うことだ。

 

 俺はさっそく病院に入ると受付に行き、寶川のことを聞いてみる。受付員の妙齢の女性は、目を細めて俺たちを見る。


「何かありましたか?」


「ごめんなさいね。ここに名前を書いてね」


 そう言って渡された物は、表紙に面会者記入帳と書かれたルーズリーフバインダーである。

 中を開けると、日付、入室時間、退出時間、面会者名、患者名を書く欄がある。そこには上からずらっと以前に面会した人たちの名前が書かれている。

 

 俺はそこから寶川に面会をした人を探すと、なんと12人もいた。


 昨晩入院してその日のうちに面会を許可するのも凄いのに、更にこの人数だ。寶川は相当タフなようだ。

 

 俺は面会者記入帳に自分の氏名を書くとケイに渡した。


 受付員を見ると、なおも怪訝な様子で俺たちを見ている。


「寶川さんのことで何か?」


「あ、何度もごめんなさい。彼女にはあなた達のような普通の知り合いもいたのね」


「俺たちが普通ですか。面会に来ていた人達は、どんな人だったんです?」


「一言で表現すると、お金を持っていそうな人ね。ピシっとしたスーツを着て、高そうな腕時計を身に着けている人が多かったわね。しかも全員が男性よ。どんな交友関係なのかしら」


「キャバクラ嬢ですからね。お客さんじゃないでしょうか」


「ああ、通りで!」


 俺が受付員と話している間に雨井が書き終えたので、面会者記入帳を返した。


「ご記入、ありがとうございます。寶川さんの病室は704号室です。あそこのエレベーターで7階に行って、右に歩いていけば左側にあります」


 受付員が指差した先を一瞥してから、受付員に体を向けて頭を下げた。

 

 さあ、気を引き締めるか。

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