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高校生活は異世界人に囲まれて  作者: 出水 彰
第0.5章+10章 恐怖の猛毒蛇!! 深緑の公園に怪蛇ツチノコは実在した!!
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【1章 5話】 ツチノコ調査パーティーが揃った!

 放課後


 阿字ヶ峰と水引が、スクールバック片手に俺の元へ集まって来た。ツチノコ調査班の始動である。


「ところでわしたちはどこに向かうのじゃ」


 阿字ヶ峰の疑問に追随するように、フューレと水引は俺の顔を見る。


「それは俺も考えているんだ。もしかすると2日前の俺は何かを知っていたのかも知れないけど、その時の記憶が無い。

 阿字ヶ峰と水引はツチノコの目撃情報を持っていないか?」


「わしは知らんな」


「私にも無い。人形さんは仲間の幽霊に聞けないの?」


「残念じゃが、死後の記憶を維持できる程に霊力の高い者のほとんどは、誰かさんが昇天させてしまったからのう。迷惑な奴がいるものじゃ」


 阿字ヶ峰はそう言って水引を睨み付けるが、水引は涼しい表情を崩さずに鼻で笑う。


「不法滞在者が権利を主張するなんて、笑えない冗談ね」


 隙あらば嫌味合戦を始める阿字ヶ峰と水引を見ていると、不安ばかりが募ってしまう。この調査班にチームワークは望めるのだろうか。

 

「知らないのなら仕方が無い。一応、俺の中で候補となっている場所がある」


「どこ?」と聞くフューレに、俺はスーパーマーケット【ミリストロセンター】のレシートを取り出した。


「網と鳥カゴはミリストロセンターでなくても買える。だから俺とフューレにはきっと目的地があり、その途中にミリストロセンターがあったからここで買い物をしたんだ。

 ミリストロセンターの先には、多田篠公園がある」


 携帯電話を取り出して地図アプリを開いた。地図の範囲を広げて、学校、ミリストロセンター、多田篠公園を1画面に収まるようにすると、その3点は直線状にあることが分かる。


「多田篠公園、隠れる場所に困らないわね」


 水引は俺に賛同してくれているが、逆に阿字ヶ峰は首を傾げている。


「どうしたんだ? 納得できないか」


「網と鳥カゴのう。お主たちは何を捕らえに行くつもりじゃ?」


「何ってツチノコだろ」


「すまぬ。聞き方が悪かった。お主たちが認識している槌子はどういった生物じゃ」


「ツチノコはUMAの一種で、胴体が丸い蛇みたいな姿だと俺は認識している」


 俺は携帯電話を操作してウェブブラウザを立ち上げると、ツチノコを検索して画像を表示させた。

 その画像を見た阿字ヶ峰は納得したようで手を叩くと数回頷いた。


「そういうことか。お主たちが捕らようとしているのは野槌じゃったか」


「野槌? なんだそれ?」


「この生物をわしらは野槌と呼んでおる。まさかツチノコに改名しとったとは思わなんだ」


 朝から阿字ヶ峰とは少しだけ話が噛み合っていないと感じていたけど、どうやら認識違いをしていたようである。


 阿字ヶ峰は振り返ると、「鞍馬よ。少し来てくれんか」と手をあげた。


 阿字ヶ峰の声に反応した【妖怪】の鞍馬は、教科書をスクールバックに入れている手を止めて、俺達の元へ生真面目な足音を立ててやって来た。


「どうしました?」


「お主の領分の話じゃ。委員長たちはこの町に現れた野槌を探しているらしいのじゃが、お主なら何か知っているのではないのか」


「野槌とはまた懐かしい名です。退治されたかと思っていましたが、この町に隠れ住んでいましたか」


「その反応を見るに、お主も情報を持ってはいないようじゃな」


「情報は持っていませんが、探す手伝いは出来ます」


 鞍馬は左手を軽く上げると「野槌を探せ」と呟いた。

 すると髪を掻き上げるほどの強い風が教室を吹き抜ける。窓が閉まっているにもかかわらず。


「何をしたんだ?」


 俺が質問をすると鞍馬を身じろぎの一つもせずに、視線だけをこちらに向けた。その眼光は突き刺さるほどに鋭い。


 鞍馬には高校生には到底持てぬ迫力がある。

 

 だからこそ俺は心の中で苦笑いを浮かべた。鞍馬のような奴らをまとめないといけない前途は不明瞭すぎて笑い出しそうだ。


「僕の仲間が動いておきた現象です。妖怪とて万能ではない。これほどまでに閉じられた空間から、痕跡を残さずに外へ出るには多少の現象を伴います」


「妖怪はわしら幽霊と違って物質だからのう。痕跡が残るのじゃ。どれ程小さな魚でも、水面には波が立つということじゃな」


「俺達は妖怪であり、魚ではないのですが」


 阿字ヶ峰は大きなため息を吐く。


「言葉の綾や冗談を理解できないところは、昔から変わっておらんな。

 ではお主に頼みたいことを明瞭に伝えよう。委員長とフューレが結成したツチノコ調査班という、野槌を探す活動に参加しろ」


「委員長が俺の参加を承認するのなら、喜んで参加させて頂きます。僕の嗅覚も参加しろと言っていますし」


 鞍馬は初めて俺の方へ体を向けた。鞍馬は妖怪であるらしく、何かしらの異能の力があるのはここ1ヵ月で理解しているのだが、鞍馬が本当に妖怪であるのかは分からない。俺に妖怪を判定する指標を持ち合わせていないからだ。


 だからこそ、鞍馬がツチノコ調査班に加わるのは、妖怪を知る機会になるし、単純に戦力が増す。


「俺に断る理由は無いよ。よろしく頼む」


「出来る限りの協力をさせてもらいます。ところでツチノコ調査班の構成員には、水引さんも含まれていますか」


「私も参加していますが、何かご不満でも?」


 水引は微笑みを湛えた顔を上げて鞍馬の目を見る。

 一方の鞍馬は漠然と風景を眺めるように水引を見下ろしている。


 2人の表情には明らかな敵意は浮かんでいないが、2人を中心として漂うピリッと痺れるような空気が肌に刺さる。

 どうやら水引と阿字ヶ峰の仲と同様に、水引と鞍馬の仲も好ましいものではないようである。


「不満は無いですが、僕の後ろは歩かないで頂けますか」


「何を怖がっているの? 妖怪さん。委員長が望まないから、私はあなたに何もしない」


「その言葉を信用しろと?」


 水引と鞍馬の関係は誰から見ても険悪である。水引と阿字ヶ峰の険悪さよりも深刻のようだ。先程からフューレは口を挟まないが、目だけは俺に助けを求め続けている。


 なんだこのメンバーは。


 阿字ヶ峰、水引、鞍馬の過去や思想や本来の立場を知らないので、明確な関係性については推測するしか出来ないうえに、聞いたところで藪蛇になる可能性が高いので無理に突くつもりはない。


 だからこそ俺は3人を見て平然としていなければならない。


 俺はカウンセラーではなく委員長なのだ。中心に立ってまとめるのが仕事である。怖がってなどいられない。


「なんにせよ、これでツチノコ調査班は5人になった。

 俺とフューレの2人の時は邪魔が入って中断させられたけど、今回は捕獲できそうだな。早速だけど、今日の放課後に探しに行こうと思うんだけど、皆の時間は空いているか?」


「僕は問題ありません」


「わしはいつでもオッケーじゃ」


「私は大丈夫」


「僕はもちろん空いているよ」


 全員の承諾を得られた。

 これで新生ツチノコ調査班の始動である。

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