表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼ん子  作者: ことせき
1/8

はじまり

つたない文章ですみません。

 鬼ん子は小さい時に家を追い出された少女だった。


 生まれた家はその集落では名の知れた旧家だった。鬼ん子は一番最初に出来た子どもだったが、家は鬼の顔した赤ん坊を認めることが出来なかった。なので鬼ん子と鬼ん子を生んだ母は父の家を追い出され、村の端っこでひっそりとして暮らしていた。鬼ん子の父はその後新しい嫁を家に入れ、今度こそ人間の子を生ませた。

 鬼ん子は人間が嫌いになって、人間と関わる事をやめた。


 彼女には白魚という名の友人がいた。

 白魚は雨が好きな少女だった。窓ガラスにぶつかる水滴の音を聴く事が好きだった。

 鬼ん子は曇り空が好きだった。けれど雨の日に部屋で本を読むことも好きだった。だから白魚のそんな所にとても魅かれた。

 白魚は鬼ん子を妹のように可愛がり、鬼ん子は白魚を姉のように慕った。


 白魚には恋人がいた。太郎という男だった。


 鬼ん子は白魚が好きだった。何でも話を聞いてくれる白魚が好きだった。また白魚の話を聴く事が何よりも楽しかった。雨の日を好きでいてくれる白魚の事が好きだった。 だが、白魚の恋人である、太郎の事は好きになれなかった。


 太郎は白魚が好きだった。何でも話を聞いてくれる白魚が好きだった。白魚は美しかった。どんなことでもしてやろうと思わせる魅力が白魚にはあった。晴れた日にドライブに連れて行くと笑顔を見せる白魚の事が好きだった。

 太郎は白魚を心の底から愛していた。愛していたから何でも許した。


 だが太郎は鬼ん子が嫌いだった。鬼ん子は魔物のように恐ろしい顔をしていた。優しい顔立ちの白魚とは対称のような存在だった。鬼ん子が白魚と仲良くしている様子を見ると違和感を覚えた。それ故に、白魚がなぜ鬼ん子の隣にいるのか全く理解が出来なかった。


 鬼ん子は人間の太郎が嫌いだった。だから嫌われていても平気だった。太郎よりも白魚を理解している自信があった。

 でも時折、太郎は白魚へ捧げるプレゼントの切れ端ばかりを鬼ん子に恵んでくれる事があった。そういう時の太郎は離れて暮らす父を思い起こさせる顔をしていたので、その一瞬だけ太郎の事を好きになった。


 白魚が本当は何を考えているのか、太郎も鬼ん子も知らなかった。太郎は白魚に好かれている自信がなかったし、鬼ん子は白魚に好かれている自信があった。

 白魚と太郎はたびたび喧嘩をして、たびたび仲良くなった。鬼ん子は二人がどうして別れないのか、それがずうっと不思議であった。



 そんなある時、事件が起きた。ある旅人がふらりと村に立ち寄ったのだ。



 旅人は酒屋でぽつぽつと、外の世界の話を始めた。

 白魚と鬼ん子はそれを夢中になって聴いた。太郎は旅人が嫌いだった。だから全く旅人の話を聴こうとはしなかった。外の世界の常識を、この小さな村に押し付けてくる旅人が太郎はとても苦手だった。


 旅人は鬼ん子を可愛がってくれた。父のように甘やかし、兄のように遊んでくれた。遠い日の父の記憶が甦り、鬼ん子は旅人に強く惹かれたような気がした。旅人の魅力は抗いがたいものがあった。


 一方旅人は白魚に惹かれていた。白魚の考え方や所作や美しさに自分の求めるものを見出した。白魚も旅人の持つ世界がとても好きだった。一人でこの世界を歩いてきた旅人の強さがとても好きだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ