「5話」 可愛いって偉大!
今回は色々新しいキャラがでてきて……
ちょっと展開!
現れた人はまぁ普通に俺の父だったらしい。
今はこの1部屋しかない狭い家の中で母といちゃついてる。
「アイリス……ありがとうそして、大事な時に居てやれなくてゴメン……」
なにやら話題に上がっているのは俺の事の様だ。
どうやら父は俺の誕生には仕事の都合上先ずこの村にいなかったらしい。
因みにアイリスとは母の名前の様だ。決して父が花に向かってしゃべっている訳ではない。
所で、父がどんな仕事をしているかと言うと……
「いいえ、それよりもお仕事お疲れ様。自警団の副団長なんですもの……仕方がないわ」
そう、どうやら村の自警団らしく、あの日はたまたま王都に行っていたらしい。
とか思っていたら何時の間にか近寄ってきた父に抱きかかえられた。
……男に抱かれても嬉しくないな。
きっと俺がそんな事思ったいるなんて考えもつかないだろう父は……
「始めまして、ニア……大っきく成ったら父さんと一緒に、鍛錬しような?」
全力で断る!
と、言いたい所だが、実は俺はそう言った父子の触れ合いに憧れを持っていた。
前世では母子家庭、一人っ子と家族は母さんしか居無い状態だったので父親……って言う存在に夢を持っていたのだ。
……理想はキャッチボールだけどね!
所で、父はプラムと言う名前らしい。けしてスモモではない。
見た目はアッサリとした茶髪に海の様な碧い眼を持っていて、
顔全体のパーツが整っていて……大変麗しいでござる。
歳は……前世の俺よりと同じか若いくらいか?
それはともかく、この父は大変な親バカなのか、さっきら俺の事を離してくれない。
もう2時間は父の腕の中だ。
こら、そろそろ出せよ。
俺は抗議のつもりで手足をバタつかせた。しかし父は笑顔で……
「ニアは元気な子だなぁ! 流石ボクとアイリスと子供だ! 」
とか言って降ろしてくれない。
ふっ……降りる事は諦めたよ。
まぁ、父も初子が生まれた時に近くにいなかったからな。
その反動が来たのかも知れん。
と、思った瞬間だった。
急にお腹が空いてひもじい気持ちに襲われ、更には悲しくも無いのに泣き出してしまった。
「ふぇぇん!」
「えぇ! ? ど、どうしたの?ニア! 何処か痛いの!」
父は突然泣き出した俺に狼狽えて俺を揺さぶり始めた。
父よ、心配は嬉しいが食事が必要なだけだから揺らさないでくれ。
「もう、プラムさん! ニアはそろそろお乳の時間なのよ」
そう言って慣れた手つきで父から俺を取り上げて出すモノを出してくれる母。
……父よ、そこまで凝視しているとあからさまだぞ!
「アイリス……ボクも良いかい?」
俺の中で父親のイメージが崩れた。うーん、やっぱり父親と言えばちゃぶ台返しが無いとな!
「……プラムは、夜……に?」
ーー……俺、今夜は夜更かししようかな?
☆
よう、将来の夢はケーキ屋のニアだ。
アレから3年経った。なに? 突然過ぎるだと? 俺もそう思う。
そして俺も立派な「ニアくん3ちゃいでしゅ! 」だ。
そして、これまた重要な事だが、お兄ちゃんになりました、お兄ちゃんに。大事な事だからね!
産まれたのは弟でグレイプくん! 今は2歳だ。言葉足らずな俺とは違って良くお喋りする子で俺にとっても懐いてくれてる。テラ可愛い!
俺は父親と言う存在にも憧れていたが兄弟と言う存在にも憧れていた。お兄ちゃん……なんて良い響きなんだ!
まぁ、残念ながら今グレイプはお休みしている。残念だ、せっかく『シンデレラ・俺編集』を聞かせてやろうと思ったのに。
所で、《天界の扉》は3年間の間で変化は起こっていない。と言うか『“天使の眼”』の能力も良くわかっていない。
まぁ、そんな事は俺の最愛の弟、グレイプの前にはチリ以下だ。
グレイプは寝ている今は分からないけど父と同じ碧い眼と、母のハニーブロンドを受け継いだ美幼児だ。
俺? 俺はね……父のアッサリした茶髪と、母の控えめな緑目だ。……悲しく何かないもん!
と、ちょっと内心グチって居たらまだ昼過ぎだと言うのにもう父が帰って来た。
あれ?何時もは帰るの夕方くらいなのに。
「父……御帰り」
「やぁ、ただいまニア。グレイプはお昼寝かい?」
父は俺の言葉少なな挨拶にも朗らかに笑って返してくれた。
因みに父の言っていた鍛錬とやらは毎日やって居る。
毎朝日が登る前にグレイプと一緒に棒を振らされて堪った物ではない。グレイプは楽しそうだがな!
ともかく、何故父はこんなに帰って来るのが速いんだ?まだ母もマダムのお茶会 (と言う名の子供自慢)から帰って来ていない。
「父。帰り速い、何で?」
超カタコトだ。うーん、やっぱり『“天使の耳”』に依存しすぎたかな?
「あぁ、今日は王子殿下のお誕生日だからね、去年もだけど終業が速いんだ」
ん~、そう言われるとこの問答去年も聞いた気がする。そう言えば確かこの国は王の直系の誕生日は祝日だったな。
確かその王子殿下って俺と同じ3歳だったかな?
そう言えばこの村には俺やグレイプと同年代の子がいないんだよな。
俺はともかくグレイプはさみしいかもな……
「それに……」
それに? 珍しく歯切れの悪い父にびっくりだ。 しかも表情も何処か優れない。
だがその後二、三を振ると 何時もの笑顔を浮かべて。
「ううん、何でもないよ……じゃあママが帰って来るのを待ってようか」
父はそう言って無かった事にしたが、一瞬前に見せた父の表情に俺は胸騒ぎを覚えた。
それからほど無くして母が帰って来てグレイプも起き出した。
グレイプは父が帰っている事を無邪気に「ちち! おかえり! 」と喜んでいる。
……二人称“ちち”な所は俺の影響です。ごめんなさい。
この事については父は苦笑するしか無いようだった。母はちゃんと“ママ”なのにな?
その日は少し早めの夕食をとってグレイプと一緒に寝ることにした。
寝る時にもあの時の父の顔がちらついた……
そして、俺とグレイプが完全に夢の世界に落ちた時。俺の頭の何処かで音が鳴り響いた。
ーー【 《天界の扉:Lv.2》『“ベウラの宴”』を会得 『“天使の耳”』 『“天使の眼”』を昇格シマス 】ーー
結局『“天使の眼”』の効果なに一つとして決めてない( ; ; )
うーん、どうしよう。
ってか弟くん、ぶどうって……w