「16話」 誰かさんも一緒に!
作者「今回はこれと言った回じゃないです!」
ニア「そんな事を自慢げに言われても困るだろうよ」
「はぁ……」
俺は一人、溜息を吐いた、
真っ暗な部屋に虚しく響く。
時刻は月も沈んだ深夜。
足元どころか手も見え無い暗さだ。
日本の呼び名で言えば丑三つ時だろうか、遠くで虫の鳴く声が聞こえる。
「ーー……まさか…あんな事……」
俺は再び溜息を吐いた。
布団の中で一人、頭を抱える。
衣擦れの音が何故だか、遠くに聞こえる。
ーー今日 (厳密に言えば昨日)、起こった事を考えると頭が痛い。
俺は、そっと窓を見上げると真っ黒な空に穴を開けた様に星々が輝いて居た。
だけれど、この暗い部屋はおろか、俺の心までは照らしてはくれない。
俺は、意味も無く顔を顰めた。抜けかけの歯が、舌に当たる。
ーー魔力研究機関『地下聖堂』ーー
この学術都市ウリムに存在する13の研究機関の一つ……
俺は、今日、そんな組織にスカウトされてしまった。
それだけならば、誇りに思うベキ事かもしれない……が、しかし。
「グレイプ……」
乾いた部屋に、寒々しく響く、それでも、その響きは輝いて居る。
俺は、隣の部屋で寝ているだろう自身の弟の事を想った。
ーーそうだな、今回の事は決してマイナスだけに傾く訳では無い。
俺は、ほんの少しだけ心が軽くなった事を自覚して、漸く重たく成った瞼を閉じた。
☆
「ぅ~……ネムい…」
昨日、夜更かしをしたせいか、目が覚めた時は最悪だった。
階段から降りる時も足元がふらついて、階段から転びかけた程だ。
まぁ、とっさに父に助けてもらったけどね。
……異常な程に眠いし、瞼が膠でくっついた様に開かない。
6歳の……しかも、弟よりも小さな背で夜更かしなどするべきではなかった。
手探りで、井戸のある庭へ向う、一応、物の位置は把握しているからな。
俺が、今だ開かない眼でそんな事を考えていた時だった。
「ーーニア! 今日こそ勝負よ! 前みたいな作戦は通用しないんだからね!」
どうにも聞き覚えのある声が、暗い視界の向こうから聞こえて来た。
☆
ッシュ! と、俺の耳の横ギリギリをナニかが、通る。
再び、今度は胴辺りから気配を感じて、その場から後退する。
その瞬間に地面にナニか、硬い物が当たる様な音が響いた。
そのせいか、飛んで来た土を頬に感じた。
……ッチ! 目隠ししたままは辛いな……
しかし、と言っても、まだ顔を洗う前に襲われたのでは使用が無い。
おそらくオリーブだろう、気配は次々に斬撃を繰り出して来る。
こちらとしては気配を読むのと、避けるのとで、精一杯だ。
既に、眼を閉じた状態でぐるぐると回っているせいで、家の位置は分からない。
そもそも、ここが何処かさえも把握出来て居ない。
「あぁ~! もつ! なんで当たらないのよ!! 」
再び、閉ざされた眼の向こう側から、しかし苛立ったオリーブの声が聞こえてくる。
甘栗色のその髪と同じ、優しい色の茶色の瞳が、苛立ちに燃えている姿が用意に想像つく。
「……降参」
「誰がするもんですか!」
俺としては コッチが降参する。 ってつもりで言ったんだけどね。
どうやら誤解を招いてしまったらしい。
より激しくなる斬撃。
ハァ……コレも、どうしようか。
俺が、心中で溜息を吐いた、瞬間だった!
「ーーその鍛錬! オレも混ぜてもらおうか! 」
今度も、聞き覚えのある。
しかし、誰か思い出せない声が聞こえて来た。
そして増える、斬撃。
俺が、横薙ぎに振られた刃を避ければ、今度は袈裟斬りで刃が落ちて来る……
うっとおしい程のコンビネーションだった。
しかも、どちらかと言うと、増えた刃の持ち主の方が、オリーブに合わせて居るらしく、
その業の完成度を見せつけていた。
2タイ1 だなんて冗談じゃねーよ……!
俺が、迫り来る刃を、右に避け、左に避け、を繰り返して居ると……
「オイ! テメェ! 兄 とオリーブに何やってんだよ!」
今度こそ、聞き間違えること無い。 エンジェルボイスが響いた。
☆
「さあ、われらは主にむかって歌い、われらの救の岩にむかって喜ばしい声をあげよう」
俺が、聖句を述べるとグレイプが走り、相手にかかって行った。
おそらく、オリーブでは無い方だろう。
しかし、俺の所へオリーブがくる様子は無い。
だが。けして返った訳では無いか……
俺は、全身の4感を研ぎ澄ませた。
今、眼が封じられている以上、他の感覚に頼るしかない。
しかし、聞こえてくるのはグレイプと、その相手が打ち合う。木刀の乾いた音だけ……
他は、足音すら届かない。
けど……!
「見つけた……! 」
俺は、後ろから迫ってくる腕をつかんだ。 途端、息を飲む声が聞こえる。
その腕は、意外にホッソリとしていて、やはり、女の子何だと実感させた。
「ーー勝負アリ」
☆
作者「……結局夜更かしバカの話だったね」
ニア「あぁ……何処かの誰かさんのおかげでな」
作者「さ、さぁて! 次回もチョットした日常話をやってキンクリ!」




