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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第三章 繋がる根

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第三十二話「断つもの、繋ぐもの」

第三十二話は、

“断つことと繋ぐこと”を考える回です。


戦いの意味が、

少しずつ形になります。

 火が、揺れていた。

 小さな焚き火。

 音は、ほとんどない。


 らんが地面に座る。

「……で」


「さっきの、なんだよ」


 蒼真そうまは答えない。

 視線は、火ではない。

 その奥。

 何かを思い出すように。


「……見たのか」

 げんが言う。

 短く。


 蒼真が頷く。

「ああ」


「断片だけだ」

 沈黙。


 嵐が顔をしかめる。

「断片って……なんの」


 蒼真は少しだけ迷う。


「……人だ」

 その一言で、

 空気が変わる。


「普通に、生きてた」

「ただ、それだけの」

「それが、途中で切れてる」


 嵐が舌打ちする。

「……胸クソ悪ぃな」


 蒼真は、頷かない。

 だが否定もしない。


 弦が静かに言う。

「それが“繋がり”だ」


「残ったものが、流れている」


「お前は、それに触れた」


 蒼真が、火を見る。


「……あれを、斬るのか」

 小さく、言う。


 答えは、すぐには出ない。


 嵐が口を開く。

「斬るだろ」


「でなきゃ、止まらねぇ」


 それだけ。

 単純な答え。


 しかし——

 間違っていない。


 弦が言う。

「斬るのは“それ”ではない」


「繋いでいるものだ」


 蒼真の目が、わずかに動く。


「……同じだろ」

 低く言う。


 弦は首を振る。


「違う」

「残りを断つのではない」

「流れを断つ」

「意味が違う」


 嵐が顔をしかめる。

「同じに聞こえるけどな」


 弦は答えない。

 蒼真を見る。

 その視線に、

 逃げ場はない。


「……お前は、どっちだ」

 静かに問う。


 蒼真は答えない。

 少しだけ目を閉じる。


 さっきの断片。

 笑い声。

 待っていた誰か。

 途中で終わった時間。

 それが、浮かぶ。

 消えない。


 蒼真は、少しだけ沈黙する。

 そして——

「……断つ」

 ゆっくりと、言う。


 嵐が頷く。

「だろうな」


 だが——

 蒼真は続ける。


「でも」

「繋がってたものは、残す」


 弦の目が、わずかに細くなる。

「……曖昧だな」


「そうかもしれない」

 蒼真は否定しない。


「でも、それでいい」

「今は、まだ」


 火が揺れる。


 弦が小さく息を吐く。

「……なら、それでいい」

 それ以上は言わない。


 嵐が立ち上がる。

「難しい話はいい」

 軽く肩を回す。

「結局、やることは同じだ」


 蒼真が頷く。

「ああ」


「行く」

 火が消える。

 立ち上がる。

 迷いはない。


 さっきとは違う。

 知っている。

 その先にあるものを。


 それでも、

 進む。

 それだけで、

 十分だった。



■第三十二話終

斬るのは敵ではなく、

繋がり。


ですが、

そこに残るものもあります。


その違いが、

これからの選択になります。

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