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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第三章 繋がる根

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第二十六話「まだ浅い」

第二十六話は、

“届いた先の不足”を描く回です。


触れたからこそ、

足りないものが見えてきます。


 「……今の、届いてたな」

 嵐《らん》が言う。


 息は荒いが、

 表情は悪くない。


 確かな手応えがあった。


 蒼真《そうま》は答えない。


 視線は——


 “奥”。


 さっき触れた場所。


 確かに。

 届いた。


「浅い」

 小さく、呟く。


 嵐《らん》が眉を寄せる。


「は?」


「断ったのは、表面だけだ」


 


「繋がりは残ってる」


 弦《げん》が静かに言う。


「当然だ」


 短い。


「今のは“止めた”だけだ」


 嵐《らん》が舌打ちする。


「やっぱりかよ」


 地面を見る。

 何も変わっていないように見える。


 だが——

 違う。


 わずかに。


 “流れている”。


「……まだ来るな」


 嵐《らん》が言う。


 その瞬間。

 空気が、歪む。


 ——来る。


 蒼真《そうま》が動く。


 弦《げん》が矢をつがえる。


 嵐が踏み込む。


 連携。


 成立している。


 矢が走る。


 固定。


「今だ」


 蒼真が斬る。


 断つ。


 嵐が叩く。


 通る。


 だが——

 次の瞬間。


 歪みが、戻る。

 再接続。


「チッ……!」


 嵐が距離を取る。


「戻り早ぇな!」


「深さが違う」


 弦が言う。


「固定が浅い」


「……どういう意味だ」


 蒼真が問う。


 弦は視線を外さない。


 “奥”を見ている。


「表面しか捉えてない」



「その下で、繋がってる」


 沈黙。


 蒼真の思考が、繋がる。


「……層か」


「そうだ」


 弦が即答する。


「今斬ってるのは上」


「本体は下だ」


 嵐が顔をしかめる。


「めんどくせぇな……!」


 空気が、また歪む。


 今度は——

 速い。


 蒼真が動く。


 弦が撃つ。


 間に合う。


 固定。


 斬る。


 通る。


 だが——

 また戻る。


 繰り返し。


「……キリがねぇ」


 嵐が吐き捨てる。


 蒼真は動かない。


 見ている。


 “流れ”。


 その奥。


 さらに奥。


「……あるな」


 小さく、呟く。

 弦がわずかに目を細める。


「見えてきたか」


「薄く、だがな」



「下に、もう一つある」


 沈黙。


 嵐が笑う。


「つまり?」


 蒼真が答える。


「そこまで届かないと意味がない」


 空気が、重くなる。


 理解した。

 今のままでは——

 足りない。


 弦が、矢を下ろす。


「精度を上げる」


「合わせるな」


 蒼真が視線を向ける。


「ズラせ」


 その言葉に、

 空気がわずかに変わる。


 嵐が眉を寄せる。


「またわかんねぇこと言いやがって」


 蒼真は、静かに頷く。


「……いや」



「それでいい」


 理解が、

 繋がる。

 まだ浅い。


 だが——

 次は違う。


 そう確信できるだけのものが、

 そこにあった。


⸻


■第二十六話 終

見えているのは“表面”。


その下にあるものに届かなければ、

意味はありません。


次は、

そこへ踏み込みます。

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