第二十六話「まだ浅い」
第二十六話は、
“届いた先の不足”を描く回です。
触れたからこそ、
足りないものが見えてきます。
「……今の、届いてたな」
嵐が言う。
息は荒いが、
表情は悪くない。
確かな手応えがあった。
蒼真は答えない。
視線は——
“奥”。
さっき触れた場所。
確かに。
届いた。
「浅い」
小さく、呟く。
嵐が眉を寄せる。
「は?」
「断ったのは、表面だけだ」
「繋がりは残ってる」
弦が静かに言う。
「当然だ」
短い。
「今のは“止めた”だけだ」
嵐が舌打ちする。
「やっぱりかよ」
地面を見る。
何も変わっていないように見える。
だが——
違う。
わずかに。
“流れている”。
「……まだ来るな」
嵐が言う。
その瞬間。
空気が、歪む。
——来る。
蒼真が動く。
弦が矢をつがえる。
嵐が踏み込む。
連携。
成立している。
矢が走る。
固定。
「今だ」
蒼真が斬る。
断つ。
嵐が叩く。
通る。
だが——
次の瞬間。
歪みが、戻る。
再接続。
「チッ……!」
嵐が距離を取る。
「戻り早ぇな!」
「深さが違う」
弦が言う。
「固定が浅い」
「……どういう意味だ」
蒼真が問う。
弦は視線を外さない。
“奥”を見ている。
「表面しか捉えてない」
「その下で、繋がってる」
沈黙。
蒼真の思考が、繋がる。
「……層か」
「そうだ」
弦が即答する。
「今斬ってるのは上」
「本体は下だ」
嵐が顔をしかめる。
「めんどくせぇな……!」
空気が、また歪む。
今度は——
速い。
蒼真が動く。
弦が撃つ。
間に合う。
固定。
斬る。
通る。
だが——
また戻る。
繰り返し。
「……キリがねぇ」
嵐が吐き捨てる。
蒼真は動かない。
見ている。
“流れ”。
その奥。
さらに奥。
「……あるな」
小さく、呟く。
弦がわずかに目を細める。
「見えてきたか」
「薄く、だがな」
「下に、もう一つある」
沈黙。
嵐が笑う。
「つまり?」
蒼真が答える。
「そこまで届かないと意味がない」
空気が、重くなる。
理解した。
今のままでは——
足りない。
弦が、矢を下ろす。
「精度を上げる」
「合わせるな」
蒼真が視線を向ける。
「ズラせ」
その言葉に、
空気がわずかに変わる。
嵐が眉を寄せる。
「またわかんねぇこと言いやがって」
蒼真は、静かに頷く。
「……いや」
「それでいい」
理解が、
繋がる。
まだ浅い。
だが——
次は違う。
そう確信できるだけのものが、
そこにあった。
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■第二十六話 終
見えているのは“表面”。
その下にあるものに届かなければ、
意味はありません。
次は、
そこへ踏み込みます。




