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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第二章 交わるもの

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第十三話「影は命じられる」

※ここから空気が変わります


第13話は、

“人ではないもの”が登場する回です。


意思ではなく、

ただ実行する存在。



 森は、静かだった。


 風は、ない。

 音も、ない。


 あるのは——


 “気配”だけ。


 見えない何かが、

 空間そのものに張りついている。


 息をすることさえ、

 許されていないような静寂。


 その中心に——


 一人の男が、立っていた。


 黒衣。


 顔は、見えない。


 無月むつき


 動かない。


 ただ——

 そこに“在る”。


 周囲には、

 倒れた人間。


 数人。


 まだ、生きている。


 だが——


 動かない。


 動けない。


 “そうさせられている”。


 無月は、それを見ない。


 興味がない。


 視線はただ一点。


 前。


 何もない空間。


 だが——


 “何もない”はずのそこに、

 確かに何かを見ている。


「……遅い」


 小さく、呟く。


 感情は、ない。


 苛立ちも、焦りもない。


 ただ——

 “事実”を告げる音。


 次の瞬間。


 “現れる”。


 音もなく。


 気配も、揺らさず。


 影。


 もう一つの存在が、

 無月の背後に立っていた。


「確認した」


 低い声。


 わずかに、人の温度がある。


 じん


「……対象は動いている」


 無月は、振り向かない。


「知っている」


 即答。


 間が、ない。


「数が減っている」


「……干渉があるな」


 わずかな沈黙。


「白か」


 その言葉に——


 無月の目が、わずかに動く。


 それだけ。


 それだけで、

 空気が、ひとつ冷える。


「……問題ない」


 即答。


「排除する」


 迷いはない。


 選択ですらない。


 それは——


 “命令の実行”。


 じんは、

 ほんのわずかに目を細める。


「やるのはいいが」


 一拍。


「……壊しすぎるなよ」


 軽い口調。


 だが——


 視線は、冷たい。


 試すように。


 測るように。


 無月は、答えない。


 一歩、踏み出す。


 その瞬間。


 空気が——


 切れた。


 目に見えない“何か”が、

 一斉に張り詰める。


 残っていた“糸”が、


 ——鳴いた。


「……反応したな」


 迅が、笑う。


「面白くなってきた」


 だがその目に、

 愉悦はない。


 あるのは——観察。


 無月むつきは、止まらない。


 歩く。


 ただ、それだけ。


 余計なものは、ない。


 目的のために。


 存在しているように。


「……捕捉した」


 低い声。


 その目の先。


 遠く。


 森の向こう。


 蒼真そうまたちのいる方向。


 わずかに——


 “繋がる”。


 糸が。


 見えないはずのそれが、


 確かに、

 空間を貫いている。


「……行く」


 それだけ。


 宣言ですらない。


 結果の提示。


 次の瞬間。


 無月むつきの姿が——


 消えた。


 音は、ない。


 気配も、残らない。


 ただ——


 そこにあった“はずの存在”が、


 消えたという事実だけが残る。


 遅れて、


 空間が、わずかに歪む。


 それだけ。


 じんが、

 その場に残る。


 しばらく、

 何も言わない。


 ただ、


 空を見上げる。


「……さて」


 小さく、呟く。


「どう転ぶかね」


 雲は、重い。


 まだ、晴れない。


 だが——


 確実に、


 何かが動いている。


 見えないところで。


 確実に。


 “ずれ始めている”。



第十三話 終

選ばない。

迷わない。

止まらない。


それは、

戦いの形そのものを変えます。


次話では、

その“異常”を理解しようとします。

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