2 株価は長期的に見れば「上昇気流」
質問者:
どちらかというと儲けるよりも、「減らさないため」に投資が大事だということは痛いほどわかりました。
ただ、「過去最高値」というのが日本もアメリカも更新している段階で、どうにも参入しにくいんです……。
「下がってから買う」じゃ駄目なんですか?
筆者:
僕も「日経平均20,000円切ったら買おう」と考えて待ち続けたのですが、その瞬間は結局訪れず、機を逃し続けたことがありました(笑)。
そのためにその発言の気持ちはとてもよく分かります。
その当時は僕も株式市場について詳しく知らなかったのですが20年スパンで見た場合は必ず上がっているのです。
それは1920年代の「世界恐慌」は最大79%下落したものの16年で元の価格に復活、2000年のドットコムバブルは54%下落し、更に途中リーマンショックなどもありましたが13年で元の価格まで復活、直近ではウクライナの際に28.5%下落しましたが3年経たずに戻っています。
1870年からのアメリカの株式市場はモーニングスターというサイトよりお借りした画像ですとこんな感じです。
短期で見れば20%以上下がった瞬間は20回ほどあるものの、それを乗り越えるほど上がり続け、1870年の31,000倍になっています。
また、「20年間スパンだとどこを切り取ってもプラス」というのがアメリカ株の最大の強みだと思います。
直近で見ても2018年と比べて約2倍となっているために、いかにその値上がりの勢いが凄いかが分かります。
質問者:
これだけ上がっているのであれば信頼したくなりますけど、
どうしてこんなにも上がるんですか?
ここまでになると異常にも思えるんですけど……。
筆者:
日本においてはバブル期の株式相場に回復するまで30年かかったので
「信じられない」
と思われる方が多いかもしれません。
2025年のノーベル経済学賞を受賞した研究では産業革命以降の「イノベーション主導の経済成長」として「創造的破壊」のプロセスが加速度的に経済成長させたことを明らかにしています。
質問者:
あ、今年のノーベル経済学賞ってそれだったんですか……。
筆者:
もの凄く簡略的にこの研究内容を解説しますと、成長産業であれば「信用創造」が可能な銀行が融資したり政府が補助金を出してくれるので加速度的に伸びていくわけです。
更に、その会社がそこから売り上げや利益を出すことで、「これは儲かるぞ」ということで、同業他種も増えていき一気に市場規模そのものを拡大させてくれるのです。
今のAIや半導体の市場動向を見ればなんとなくお分かりいただけるかなと思います。
質問者:
技術革新が株価を押し上げてきたんですね……。
筆者:
人々の生活を便利にしますからね。インターネットやスマートフォン、車、電気、ガスなどが無い世界なんて今じゃ考えられませんが技術革新前まではないことがそれぞれ当たり前でしたからね。
近未来ではAIやロボットが大きく生活を良くしてくれる可能性を秘めていると言っていいでしょう。
質問者:
イノベーションの見込みが全く無いのであれば警戒しちゃいますけど、さらに生活が豊かになる見込みがあるのであれば株価がさらに上がる可能性は高そうですよね……。
筆者:
「イノベーション」というと何か遠くなりますが、質問者さんのように「技術で生活が豊かになるか」を基準にして判断するといいかもしれませんね。
また政府というのは国民から搾取することをいつも考えますが企業からはそんなに搾取しようとは思っていません(むしろ国際企業誘致のために法人税を下げたりまでする)。
これは企業献金を受けているからであり、一番利益を得ている自民党がなんだかんだ言い訳をして、それを完全廃止したり寄付金控除を無くそうとする動きはありません。
総合的に判断すると企業活動を抑制されるような政策は考えにくく、さらに株式会社であれば株主に対してそんなに悪いようにはしないので、株価は上昇し続けているということです。
質問者:
そうなると、現状株主が一番偉いということなんですか?
筆者:
そうですね。
現状の構図としては
株主 → 企業 → 政府 → 一般国民
こんな感じですね。
国民は政府に徴税される位置な上に、労働所得は把握されやすく徴税効率が非常に高いのです。
ところが株式投資をするだけで、途端に一番上の株主の位置に行けるわけです。
つまり、本当に僅かでも良いので「株主側」に立つことで恩恵の一部を受けることが大事になるのです。
質問者:
でも、株主は当然割合を持っている人が一番力がありますよね?
そうなると私たちが投資をしても値上がり分や配当など微々たる恩恵しか受けないような……。
筆者:
確かに最も恩恵を受けるのは株式保有割合が高い人(会社)です。
経済学者のトマ・ピケティ氏が
R(資本家の株式や不動産などの投資収益率)>G(労働所得、経済成長率)
の法則を発見しています。
これは資本収益率が労働所得による経済成長を上回るという法則です。
確かに質問者さんがおっしゃる通りお金持ちであればあるほど、Gをほとんど行うことなくRだけで暮らしているわけです。
質問者:
ですよね……。
筆者:
ですが、そもそも「資本家を上回る」ことを目的とした投資ではありません。
1で散々語りましたが、
「物価高を補填するだけの利益を得る」
ことが目標です。
我々一般庶民は働いてGを得ながら余剰資金でRを行っていく生活になるわけですが、
Rがゼロであれば永遠に投資収益をしている人に搾取され続けるだけなのです。
質問者:
なるほど、一般国民ではありますがほんの少しでも政府より上の地位にいることでマイナスの物価高を相殺できるということなんですね。
筆者:
株価が上がる要素としても「物価高」が挙げられます。
物価が上がることで密かに「便乗値上げ」を行い企業が利益を増やすことが比較的容易になるのです。
消費者としては値上げの際の名目として「仕入れ価格が上がっているから」、「給料のため」、「サービス向上のため」などとあります。
しかし、価格上昇分のうちどれだけが、仕入れ価格の増加や給料の増加、サービス向上、そして利益に寄与したか分かりませんからね。
分からない以上は利益を上げやすくなり、より企業は業績を上げやすくなるのです。
実際のところ、物価だを考慮しない名目GDPに株価は比較的相関しているようです。
勿論物価が上がらなく、株価も上がらないこともあると思います。
ただ、その際には投資をする本来の目的である「物価が上がっているから投資をしている」という、本質的なところに着目すればそれほど焦る必要はないでしょう。
質問者:
なるほど、物価が上がるということはむしろ株価にとってポジティブなんですね。
しかし、2022年にロシアとウクライナの紛争が始まった際には、
物価が上がったのに株価も下がったということが起きたのですが、これについてはどういうことが起きたのでしょうか?
筆者:
これは「物価が上がった要因」が通常とは異なるからです。
ウクライナは穀物大国、ロシアは穀物・資源大国です。この2国の供給力が戦いによって途絶するのではないか? という懸念が大きく株価のマイナスに繋がったのです。
実際のところ一部混乱が生じ、日本は大きく円安になり今の物価高の起因になりました。
ただ、ウクライナ紛争の際には供給力はそれほど滞らないことが分かりましたので(そのことがロシアの継戦能力の一因となっていますが)、物価高は加速しましたが、株価は戦闘前より28.5%下落したものの1年半で回復しました。
このことからも長期的に見て株式投資をする意義はあります。
余談ではありますが、なるべく国内で重要物資や食料を供給することもこの一件から重要であることが分かります。
質問者:
なるほど、将来予測を考えると一歩踏み出して投資をした方が良いということですね……。
下がったときは凄く怖そうですけど、信じて上がるのを待ち続けるしかないわけですか……。
筆者:
次は逆に今の株式市場が「過熱し過ぎではないか?」というデータを紹介したいと思います。




