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第八話 さてはおめーサイコパスだな?

放課後、十六夜が来る前に保健室を抜け出した俺はバイト先に直行した。

寄り道はせず真っ直ぐ走った。

のにだ、『ファミー』の前には十六夜の姿があった。


「あ、遅かったね?」

「な、なぜだ。なぜ先に来れた」


女性恐怖症とは別の意味で恐怖した。


「おお、狼斗。早かったな!」


ニカッ!と笑う啓介先輩。

俺のバイト先は大抵同じメンバーがいる。

唯一麻耶だけ塗装屋とゲーム繋がりだが。


「お前、友達との約束忘れてんじゃねーよ」

「約そ......そういうことか」


合点がいった。

啓介先輩はいつも自転車通学でバイト先にも自転車で直行する。

その後ろに乗ったとしたらどうだろう。

男子高校生の走りと自転車二人乗りの速度はどうしても自転車の方が速い。


「まったく、オレが通りかからなかったら約束ばっくれる所だったな!」

「最高のありがた迷惑をありがとうございます」

「てか狼斗はシフト今日じゃないだろ?」

「時雨と変わったんですよ。用があるとかで」

「へーそうか。ならしっかりもてなさなきゃな」


先輩じゃなかったら「違う!」とグーパンチしたい。

俺と十六夜はそんな会う約束をするような仲じゃない。

この前出会ったばかりなのに!俺がそこまで女子と積極的だったら今頃陽キャの仲間入りをして学校生活楽しんでいるというのに。


「先輩。俺とこいつはそんな約束するような仲じゃないです。人の勉強の邪魔をする牛女です」

「牛じゃないから!まだ一回しか邪魔してないし!」

「まだ?一回?今日何回したと思ってんだよ」

「え?一回だけじゃない?」

「一時間目の前に一回目。体育で疲れたとか言って二回目。昼休みに三回目。五時間目と六時間目の間にも五回目来てるよな?俺にちょっかいかけたよな!ノート必死に写してる俺に向かって!」

「だって鳴川せんせい毎回いるわけじゃないから暇なんだもん!」

「教室で大人しく座っとけ!」

「教室では一人なの!喋る相手は間宮しかいないの!」

「時雨でも誘え」

「時雨ちゃんにも引かれちゃうかもしれないでしょ!」


時雨はそこまで非情な女じゃない。

まあ、時雨はしっかりしているように見えて内心臆病だから十六夜のテンションで行ったら苦手意識持たれると思うけど。


「はいはい。二人ともそこまで。狼斗は仕事。十六夜は仲で紅茶でも飲んで落ち着け。代金はオレが出すから」

「そうします」


不貞腐れた十六夜に背を向けて俺は裏から控室に入った。


「お前さ......対抗心燃やすのはいいけど誰彼構わず噛みつくのはどうかと思うぞ?」

「大抵は一回噛みつけば離れてくんですけどね......どうもあの兎は離れてはくれないみたいです」

「好かれてんねー。後輩の恋ってのはなんか複雑だわ!」

「エイプリルフールはもう過ぎましたよ」

「噓じゃねーよ。ま、丁度いい機会だろ、女に慣れろ」

「んな無茶な」

「時雨と麻耶に慣れたんだ!平気平気!」


人のトラウマをなんだと思っているのだろうか。

エンターテイメントじゃないんだぞ。


「善処しますよ」


制服からバイト服に着替えた俺はフロアのバイト仲間と入れ替わった。

カウンターの中に入るとこのカフェの経験者でもあるマスターがコーヒー豆を挽いていた。

顎に蓄えた白いひげが黒いシャツによく似あっている。


「外で大声で喧嘩してたみたいだけど大丈夫かい?」

「すいませんマスター」

「いいよ。罵声が飛び交っていたわけじゃないからね。それに啓介君がいたから平気だと思っていたからね。......彼女とどういう関係?」

「敵対者です。それもかなり強敵」


カウンター内でマスターと話していると「すいませーん!」という元気いっぱいの声が聞こえてきた。


「行ってらっしゃい」

「はい......」


カウンターから呼ばれた席に行くと紫紺の瞳が俺を捉えた。


「ご注文ですか?」

「キリマンジャロとかよくわかんないので教えてください!」

「失礼ですがお客様にコーヒーはまだ早いと思います。......余計なことしてないで大人しくホットミルクでも飲んでろよ」

「教えてください」

「『キリマンジャロ』は強い酸味と甘い香りが特徴の豆です。『モカ』はフルーツのように甘い香りが特徴で女性に好まれます。『コロンビア』は他の二つより甘みが強く香りもモカのようにフルーティで男女ともに愛されます」

「ふーん。じゃあアイスティーで」


こいつひょっとしてサイコパスなのでは?

人に豆の説明させて置いて最終的に頼んだのはアイスティーて。

「よく分からないからおススメで」って人はたまにいるがガン無視したのは十六夜が初めてだ。


「マスター、お客ですが殴ってきていいですか」

「ダメに決まっているだろう?もし殴りたいなら啓介君に相手になってもらいないさい」


俺は冷蔵庫からアイスティーのパックを取り出すとカップに注いでいく。

カップ受けにミルク、ガムシロップを乗せ十六夜の席に持って行った。


「おまたせいたしました。アイスティーでございます」

「間宮って料理もするの?」

「マミヤッテリョウリモスルノというメニューはございません」

「誰が料理作ってるの?」

「別の者がいまキッチンを担当しております」


キッチンは啓介先輩が担当している。

俺の仕事は注文を受けに行ったりテーブルを綺麗にするのが俺の仕事。


「すいません」

「はい。ただいま」


十六夜を一睨みしてから次のお客の注文を取りに行った。

注文を取り終え会計を済ませた俺はカップと皿を奥の啓介先輩に引き継いだ。


「すいませーん」

「はい......なんでしょう」

「スマイルください!」

「ふっ」

「今鼻で笑った!絶対笑った!」

「ご一緒に挑発いかがですか?」

「可愛くない!

「お互い様だ」


人の仕事の妨害していて可愛いのはロリまでだ。

しかも無意識な妨害に限る。

悪意ある妨害をしておいて可愛いとか反則にもほどがある。

ま、俺が女子嫌いじゃなかったら可愛いと感じてしまう容姿ではあるが。

俺に絡んだのは運の尽き、その可愛さを無意味に消費するがいい。


それが女子恐怖症の俺が出来る唯一の抵抗だ。

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