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第七話 ブルーマンデーを濃紺マンデーにする天才

月曜日、誰しもが気持ち的に落ち込む日。


「.....おはようございま.....す」


それは俺でも例外ではない。


「おはよう!」

「おま!」


保健室のドアを開けた瞬間に兎に飛びつかれ俺は尻もちをついた。


「離れろ!暑い!重い!」

「来てくれて良かった」

「来るに決まってるだろ、学校なんだから」

「えへへ」


可愛いのは認めるがまだトラウマが回復した訳じゃない。

だからくっつくのは止めていただきたい。すぐに!


「私と仲良くするの嫌?」

「正直嫌だ」


だって怖いし。


「嫌じゃないって言うまで離れないから」

「ウン、嫌ジャナイヨ。ダイジョウブ」

「心が篭ってなーい!」


心なんて篭もるわけないだろ。脅されて言っているんだから。


「貴方達、何しているんですか?」


頭上から聞こえてきた凛とした声に目線を上げると時雨が怪訝そうな顔をして俺と十六夜を見下ろしていた。


「天月時雨ちゃんだよね!」

「え、ええ.....」

「私、十六夜美咲!よろしく!」


十六夜の興味が逸れたか。

これ幸いにと俺は保健室の中に避難しようとした。

そう、する意思はあった。

だが保健室に入ることは情報厨によって阻止されてしまった。


「今ね!間宮と親睦を深めてたの!」

「そうなんですか?」

「俺の顔見てそう思うか?」

「だいぶ眉間に皺寄ってますけど」

「放せ。俺は女子と親睦は深めない」

「仲良くしてくれるって言った!」

「だからこうして会話してんだろうが!本当ならしたくもないんだよ!」

「酷い!もう絶対放さないから!」

「強情な!」


俺の腕に噛み付いて 放さない兎を引き剥がそうと動かしてみるが腕を包み込む胸に吸収され中々抜け出せない。

数分格闘の末、敗北した。

一度噛み付いたら離れない兎が勝利した。


「時雨は保健室になんか用か?」

「いえ、間宮さんに用があります」

「なに」

「アルバイトのシフト調整のことです。今日なんですけど、変わって貰うことって可能ですか?」

「ああ、いいぞ」

「すいません。折角のおやすみなのに」

「学校外は基本暇だから構わないって」


颯太と遊ぶ時間が減るが今日は母親が帰る時間が早かったはずだからバイトを入れてしまっても問題はいないはずだ。


「間宮はどこでアルバイトしてるの?」

「は。教えるわけないだろ」

「時雨ちゃん!」

「えっと......」


時雨が助けを求める目でこっちを見るが俺は拘束されているため首を横に振ることしかできない。


「言えません......」

「ケチ!いいもん!せんせいに聞くから!」

「俺が目の前で喋らせると思うか?」


目の前で生徒の情報が漏洩しているなんて許せない!未然に防げるものは防ぐに限る。


「おい、スマホ鳴ってんぞ」

「うー......仕方ないな」


ようやく極上の柔らかさから解放された俺は一息ついた。

心臓が相変わらずうるさく変な汗もかいてしまった。

おや、十六夜の様子が......。


「勝った!大勝利!私の勝ち!」

「なんも勝負してないが?頭でもイッたか?」

「これ見ても同じこと言える?」


見せられたのはチャットアプリの画面。

俺のスマホじゃ啓介先輩から仕事の通知連絡が来るぐらいで閑古鳥もデスボでヘビメタかますくらい静かだ。

その画面の会話履歴にはこうあった。


『間宮のバイト先は『ファミー』っていう喫茶店だぞ』


情報漏洩の主は『鳴川せんせい』。

これには俺もにっこり。危うく人のスマホを地面に投げつけたくなった。


「あんのクソ教師がああ!」

「学校で叫ばないでください」

「人の!しかも生徒のバイト先を敵に教える中立者がいるか!あ!」

「敵対者ってだけの話じゃないですか」

「保健室登校をよしと言ってくれた時はいい人だと思ってたのに......裏切られた」


少年漫画ならここで復讐に燃える展開なんだろうが生憎ここは現実。

特別な力もなければ教師に勝つ術もない。

俺は静かに怒りの炎を引っ込めた。


「あの人のこともうなにも信じない」

「保健室使えなくなりますよ」

「だって!」

「大丈夫だよ。ちょっと様子見るだけだから」

「その「ちょっと様子見るだけ」っていうのが一番嫌だ。邪魔する気満々だろ」

「邪魔なんてしないよ。お客さんがいれば」

「絶対に来るな」

「フリ?」

「ぶっ殺すぞ」


なにが悲しくて恐怖の対象に芸人魂見せなきゃならんのじゃい。

俺の学校生活は静かで平穏であればそれでいい。

保健室登校して帰って颯太と遊ぶかアルバイトに明け暮れるだけでいい。

そんな青春だとか恋愛だとかは要らないから。


どうか神様。この情報厨をバイト先に来させないでください。

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