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ある夜、突如僕のもとに舞い降りた奇跡のこと。あるいは、みんながくれたプレゼントのこと。

作者: 花水木

 小説を書こう、としたきっかけは極めて個人的で、今思えば実に大したことではない、ちょっとした出来事だった。だけど、その日の僕にとっては理不尽で、納得も受容もしがたい出来事だった。


 だから、1ヶ月ほど前のあの日、僕の心中には荒々しい風が吹きすさんでいた。抱えた感情と衝動をどこにぶつけるべきか、探していた。そのときふと頭に浮かんだのが、読み専で感想を書くためだけに作った、小説家になろうのアカウントだった。


 以前一度小説を書こうとして、4話ほど投稿してやめてしまったことがあった。だけど今は、自分中に渦巻くものを全力で何かにぶつけたい。その気持ちで、一心不乱にキーボードを叩いた。そして、3000字ほどの短編を書き上げ、投稿ボタンを押した。

 それは、今の『難攻不落系お姫様の落とし方(※ただし重力加速度は9.8m・s^-2とする)』(以下『難攻不落』)の第1話と同じものである。


 さて、その後主人公とヒロインがどうなるのか。その時点でぼんやりと考えてはいたが、続きを書くつもりはなかった。では、なぜ連載小説として続きを書こうと思ったのか。それは、投稿した短編にブックマークがついていたからだ。




 今は公開停止にしているが、記念に残しておきたくて、まだ削除をしていない。ブックマーク2件。それは、確かに自分の作品を読んで「面白い」と思ってくれる人がいた、ということの証左だった。


 だから僕は続きを書いた。そうしたら、1件だけ感想を書いてくれた人がいた。その人、ミミマル氏のブクマを覗けば、短編バージョンと連載バージョンがともにブックマークに入っていた。

 それが嬉しくて、それだけを励みにして、それからも投稿を続けた。以降感想も来ず、PVも1桁、2桁の日々が続いていたが、それもたいして気にならなかった。


 それから、初めてレビューを書いた。

 きっかけは、SIRO先生の『レビューの希少性についてのデータ』を読んだことだ。文章力に自信はないが、それでも書いて良いんだ。そう思って双葉三葉先生『子守り男子の日向くんは帰宅が早い。』にレビューを書いた。400字の制限に戸惑いつつ、自分の持てる雀の涙ほどの表現力を総動員して、心を込めて書いた。

 少ししてからその作品のアクセス解析を見ると、レビュー投稿後に心なしかPV数が増えたように見えて、少しだけ嬉しかった。レビューを書くために何度も作品を確認して内容を考えたので、そのせいで増えていたのかもしれないが、とりあえず喜んでおくことにした。


 調子に乗ってもう1本レビューを書いた。石田灯葉先生『宅録ぼっちのおれがあの天才美少女のゴーストライターになるなんて。』(以下『宅録ぼっち』)という作品だ。

 そうしたら、ご丁寧にも石田先生ご本人からお礼のメッセージを頂いた。twitterを覗いたら、そちらでも紹介して下さっていて、少し恥ずかしかったが嬉しかった。



 そんなある日、ふと目にした記事に目がとまった。Gyo¥0-先生(以下なまこ先生)の『レビューに関するアレやコレ!~レビューいっぱいいただいてる系なまこの書くレビュー論!』である。それに触発されて、もう1本レビューを書こうと決めた。忘れもしない、6月6日の午前1時。レビューしたのは『一夏町物語』。またしても石田灯葉先生の作品である。



 大きなターニングポイントでもあるので、『一夏町物語』のレビューについては少し字数を割いて触れておきたい。『宅録ぼっち』をレビューしたばかりにも拘わらず、どうして立て続けに石田先生の作品のレビューを書こうとしたのか。一義的には、「面白かったから」である。文句のつけようのないくらい面白かった。

 だが、この作品をレビューしようと思ったのはもう一つの理由がある。賢明な読者なら察しているかもしれない。端的に言ってしまえば、長文タイトルではないからだ。加えて言えば、甘々イチャコラでもなく、ハーレムでもない。つまり、PVが伸びにくいのだ。

 それでもこの作品には一度読んでもらえればはまるだけの魅力がある、と思った僕は、その魅力をみんなに知って欲しくてレビューを書いた。拙いかもしれないが、考えに考えた、渾身のレビューである。



 そして、二つ目のターニングポイントは、レビューを書いたことを活動報告に掲載したことだ。


 当時、僕の逆お気に入りユーザーはミミマル氏、なまこ先生、石田先生の3人。石田先生の作品をご本人に紹介しても仕方ないのだから、それを見てくれるのは実質2人である。2人しか見てくれない活動報告。今思い出しても呆れて笑ってしまう。

 だが、逆に考えれば、僕には大好きな作品の読者を2人増やせる可能性があった。効果の出る見込みがどれほど小さいからといって、それをしない理由になりはしない。やらないよりも、やってみる方良いことなんて明らかだったから、やらない理由なんてどこにもなかった。


 だから、僕は2人に向けて活動報告を書いた。ミミマル氏に関してはブックマークを拝見する限り、僕とすごく好みが似通っていることが分かっていたから、レビューを見たら読んではまってくれるだろう、と考えた。

 そこで、なまこ先生へのアピールのため、活動報告にこんな風に書いたのだ。


こうして活動報告に書こう、と思ったのも、そのエッセイに触発されてのことです。まあ、私の場合は逆お気に入りユーザ3人(しかもそのうちの1人は石田先生ご本人!)なので、某先生の仰っていたような効果は見込めませんが……。


 こうしてくれれば、エッセイの著者のなまこ先生が気に留めて、レビューを見て下さるかも知れない、という打算が生んだ一文だった。そしてその打算が、ものの1時間の後、望外の展開を生むことになる。



 活動報告を上げてから1時間ほどの後。ふとユーザーホームを見ると、なまこ先生が活動報告を上げていた。何の気なしにそれを開いた僕は、しばし愕然としてしまった。そこには僕の名前と、『一夏町物語』のタイトルが記されていたからだ。そして、その終わりに僕へのメッセージがあった。


なあ、花水木さん。見ろよ、3人が95人になったぞ。


 史上、ここまでイケメンと呼ぶにふさわしい棘皮動物が存在しただろうか。

 その後の展開は、とんとん拍子で、まるで夢を見ているような気分だった。いや、正直に言おう。今でも自分は夢を見ているんじゃないかと、心のどこかで疑っている。


 まず、なまこ先生の相互お気に入りユーザーの方の一人、もふもふもん先生が、なまこ先生の投稿をみて私の作品(『難攻不落』)を見に来て下さった。そして作品に感想 (というかアドバイス)とレビューを下さった。

 ずっと1件だけだった感想は2件になり、一生変わらないと思っていたレビュー件数の0は1になった。そして、それをご自分の活動報告でご紹介下さったため、信じられない勢いでPVが増えたのだ。


 それから僅か3日間のうちに、レビューをもう3本頂いた。ブックマークと評価も一気に増え、気づけば日間ランキングに載っていた。それがいわゆる「日間ブースト」を誘起したのか、さらにPVとブクマが増えた。3日前に3件しかなかったブクマは76件に増え、総合ポイントは30ptだったのが234ptまで伸びた。そしてありがたいことにまだ日間ランキングに残らせて頂いている。


 PVに至っては、アクセス解析が壊れたのではないか、と本気で疑ったほどだ。


06/02 16

06/03 75

06/04 86

06/05 100

06/06 1,013

06/07 2,070

06/08 2,199


もし信じられなければ、実際に僕の作品のアクセス解析を見に来てほしい。グラフをみたら、変な笑いがこみあげることだろう。


 さて、これが僕の現在の状況だ。思うに、僕は今大きな岐路に立たされている。今総合ポイントが伸びているのは、なまこ先生、もふもふもん先生のご紹介と、それによって日間ランキングに載ることが出来たという幸運によるところが大きい。いわばフロックのようなものだ。だから、この先この状態を維持できるかどうかは自分の努力と実力にかかっていると認識しているし、頑張らなければ、と気合いを入れ直している。



 さて、ここまで長々とした文を読んで下さった方は、気づいたはずだ。そう、僕は大したことをしていないのだ。僕は好きな作品のためにレビューを書き、それを2人のユーザーに紹介しただけ。それは喩えて言うならば、せいぜい刹那のうちに消えてしまう、小さな小さな火花を散らしたくらいのことでしかない。


 でも、そのほんとうに小さな火花さえ起こすのを諦めていたら、今僕はこんな幸運な状況にはなかっただろう。何事もやらないよりはやってみた方が良い。そう思ってやってみたことが、思わぬ幸運を持ってきてくれたのだ。まるで誰も気づかないほど小さな火花が、着火剤の端っこを燃やし、いつしか大きな篝火になるように。


 先ほど話に出した『子守り男子の日向くんは帰宅が早い。』で、特に好きな台詞があるので、ここで引用したい。


「あんたはラプンツェルじゃない。助けを待って大人しくなんてしてるから、そんな状態になるんだよ」


 いかがだろう。魅力的なヒロイン揃いの作品の中でも、オンリーワンの輝きを放つ恵那唯ちゃんの一言である。


 待つのは楽だ。いつか誰かが手を差し伸べてくれることを願って、塔の上にいれば良い。そうすれば確かに現実に傷つくことはない。だけど、本当にそれでいいのだろうか。


 どうやら、行動を起こせば、手を差し伸べてくれる心ある人は、思いの外いるものらしい。でもその人たちでさえも、塔に引きこもるラプンツェルを探し出すのは至難の業らしい。


 だから、まず自分から動くこと。小説家になろうの話で言えば、感想を書くことだ。レビューを書くことだ。活動報告を更新してみたり、気に入った作家さんをお気に入りユーザーに登録してみることだ。何かが起こることは誰も保証しない。だけど、悪いことは起きないんだから、やらない理由がないだろう?


 もう一つ、今度ははな先生『最終列車』より引用する。


「どんなに大きな傷を負っても、いつかは塞がる。それが判っていれば、傷つくことをそんなに怖がる必要が、一体どこにあるだろう?」


 何もしないで何かが起きるのを待つよりも、何かを自分で起こすこと。それを大切にしよう、と心に決めた、この3日間だった。



 最後になるが、本稿で紹介した作品や、諸先生方の作品のリンクをいくつか、下に貼っておこうと思う。もしこのエッセイを最後まで読んでくれた方で、知らない作品がある方は是非見に行って見てほしい。そして、面白いと思ったならば、躊躇わず評価と感想と、出来ればレビューを。


 はっきりと言おう。

「こんなに感想もらってるから、1件感想が増えたところで仕方がないのではないか」

「自分なんかの感想もらっても嬉しくないだろう」

 もしこんな風に思っているなら、それは間違っている。受け手の気持ちを勝手に邪推するのはやめよう。そうやって書かない言い訳を探すのをやめよう。

 どこに感想をもらって嬉しくない作者がいるだろうか? 1件目の感想と100件目の感想と、もらった嬉しさに違いなんてあるだろうか?


 感想を書こう。その一歩を踏み出そう。

 贈る側から見れば大したことがなかったとしても、もらう側にとっては大きな意味と価値がある、なんてことが世の中にはざらにあるのだから。

 そういえば、なまこ先生が『一夏町物語』のPVの伸びの悪い理由として、石田先生が投稿時に作者名を入力していたためではないかと仰っていました。

 別名義で投稿したい場合を除いて、作者名は入力する必要が無く、むしろ入力すると作者名をクリックしてマイページに飛ぶことが出来なくなってしまいますのでご注意下さい。

 また、読者の方は、作者名がクリックできない場合、下の方へいくと誤字報告の近くに「作者マイページ」というのがあるはずなので、そこを押せばマイページに行けることを知っておいて下さい。



 また、今回の出来事をきっかけにして知り合ったシンG先生という方が、拙著『難攻不落』のとても素敵なバナーを作ってくださいましたので、ご紹介したいと思います。この下、本文中で紹介した索引一覧のさらに下に設置してありますので、ぜひご覧ください。

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[良い点] おじゃまします なまこさんが男前に書かれてるという評判をきいてよみに参りました リアルタイムであの活動報告みてた者としてはなんだかたのしいエッセイでした 引用されている各作品からのセ…
[一言]  だから、まず自分から動くこと。小説家になろうの話で言えば、感想を書くことだ。レビューを書くことだ。活動報告を更新してみたり、気に入った作家さんをお気に入りユーザーに登録してみることだ。何か…
2019/06/10 14:46 退会済み
管理
[一言] 本当にこのような機会をありがとうございます。 「宅録ぼっち」「一夏町物語」共に、自分にとっては大切な作品を自分以上に理解し、広げてくださったこと、面白いと言ってくださったこと、感謝してもしき…
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