イメージと現実
私が絵画に向いていないのは、前世からです。
向いていないと言っても、何を描いているか解らない程ではありません。ただ鉛筆描きまではまだ良いんですが、目で見た通りに塗ろうとすると厚塗りになり、どんどん目で見たものから遠ざかり。厚塗りに気をつけると少しは近づくんですが、今度はどうもつまらない絵になってしまうのです。そんな訳で、早い段階で絵画は諦め、算盤やピアノを頑張ったのでした。
(だから前世でも今でも、私の趣味はイラストや漫画じゃなく小説を書くことになったのよね)
完璧にではないが、少なくとも絵画よりはイメージに近いものを書くことが出来ます。
とは言え、前世ではシラン様のようにモデルとして萌える相手はいなかったのと、施設の孤児達に聞かせていたので今のような恋愛小説ではなく、お姫様が出る御伽噺や不思議な世界に旅立つ男の子の冒険譚でした。
最初は思いつくままにつらつら話していたのですが、子供達が前に話したものの続きをねだったり、こんな話が読みたいと言ってきたりしたので、いつしか書き留めて読み聞かせするようになったのです。
(だから、前世では「こうして勇者はお姫様と幸せになりました」くらいだったけど……シランの絵姿を見たり噂話を聞いた以上、そういう微笑ましい感じにはならなかったのよね)
結果、シラン様が気になって休みの日に書き上げたのが『グロリオーサ物語』です。
最初は書きたいところだけを書き、続けるつもりはなかったのですが、それを読んだルナリア様を始めとする令嬢や貴婦人達からリクエストされたのです。そして、最初は書き上げた原稿をそのまま回し読みしていましたが、読者が増えたことで原稿がしわになったり、何度も読み返してしまって次の方が待たされたりしたことで、本として出版することになったのです。
ただし本にする時、私は一つだけお願いをしました。
「読んだ方の想像を壊したくないので、表紙絵や挿絵はご勘弁下さい」
漫画こそないですが、この世界の書籍にも表紙絵や挿絵がついています。
けれどこの話の主人公はシラン様をモデルにしていて、当然と言うべきか彼を知っている方々もシラン様を連想するのですが――シラン様以外の男性だと、書き手である私のイメージが崩れますし。だからと言ってシラン様に似せて描くと、隣国の王族なのでそれはそれで問題があります。
(まあ、本音を言えば自分の話のイラストは見てみたいけど……肖像権侵害とか言われると困るから、我慢我慢)
……そう思っていた私でしたが、リアトリス皇宮でシラン様と初めて会った瞬間。
(うわ、髪ツヤツヤ! まつ毛長いし、目は吸い込まれそうだし、肌もスベスベ! 絵姿でも格好良いと思ったし、実物以上に描かれることも多いらしいのに……絵姿とか妄想以上なんて、すごいっ!)
シラン様のあまりの麗しさに、色々と供給過多で――我に返るまでの一瞬ですが、私は思わず脳内で叫びまくったのでした。
最後のミナの叫びは、水沢先生のキャラデザを拝見した時の私の心の叫びです(笑)
気になる方は、アプリ『マンガUP!』をご覧下さいm(__)m




