色々と想像以上でした
「せめてと朝晩、私室で伯父様の肖像画に話しかけ。毎週、教会に行って無事を祈っていましたので」
以前、私はエリカさんからそう聞いていました。ただ実際、父の肖像画が飾られているのを目にする勇気は出ず、あえて触れずにいました。
……そんな叔父がいる、レギア商会に私は父・ヴァガンスと共に、シラン様が用意してくれた馬車に乗って向かっています。ちなみに、シラン様も何故か一緒に来ています。
「私も、家族の一員になるし……久しぶりの兄弟の再会なら、義父上は泊まってくるかもしれないだろう? そうなった時、君を一人で帰らせるなんて冗談じゃない」
「……オキヅカイ、アリガトウゴザイマス」
父に結婚を許されてからの『義父上』呼び。そして、だからこそ父に隠さない私への溺愛ぶり。
馬車の向かいの席では、父が生温かい眼差しで私達を見ています。気合いを入れる為、今日の私はいつもの仕事着(家庭教師モード)ですが、動揺と照れ臭さのあまりシラン様への返事が棒読みになってしまいました。
「しかし、家族ではありますが……本当に、レギア商会に先触れしなくて良かったのですか?」
そんな私を宥めるように、シラン様が話題を替えるように言ってくれました。それに綺麗に微笑んで、父は言いました。
「会わない選択肢も、ありましたし……下手に行くと知らせると、はしゃいで大変なことになりそうですので」
「「ああ……」」
弟である叔父のブラコンぶりを、父も知っていたのだと――瞬間、私とシラン様の心は一つになりました。
※
私達が行くと、前回来た時と同じ従業員の人が来てくれました。そして今回は突然の来訪だったので一度離れた後、戻って来てまた私達を案内してくれました。
けれど、案内されたのは前回の執務室らしいところではなく、二階でした。居住スペースだと思われる為、まさかと思っていましたが――部屋に通された瞬間、私のまさかはやっぱりに変わりました。
「兄さん! 今日は何だか落ち着かなくて、祈りに来ていたけれど……まさか、本当に会えるなんて!」
「…………」
感涙の涙を流す叔父に対して父の表情は、笑みを形造ってこそいましたが完全な『無』でした。
まあ、気持ちは解ります。何しろ、肖像画とエリカさんから聞いていましたが――一枚では、ありませんでした。赤ん坊の時から、おそらく家を出た頃の青年の姿まで。父の肖像画が、部屋中に飾られていました。
寝台など家具がないので、本当に肖像画を見たり祈ったりする為だけの部屋と思われます。そして堂々と部屋に通してくれた辺り、叔父は父の肖像画を飾って人に見せることに、罪悪感や羞恥心はないようです。
「推しの祭壇かな?」
思わず呟き、前世の知識なので慌てて口を塞ぎましたが、父と叔父の耳には届かなかったようです。
「もう来ない」
「どうして!?」
表情同様に抑揚のない声で父は言い、叔父は一気に青ざめて叫びました。
「むしろ何故、解らない? 受け流すにも、限度がある」
「兄さん! せっかく来たんだから、食事でもっ」
「断る。下手に居座って、今の姿まで肖像画に残されたら困るからな」
「えっ!?」
「やる気だったな。捨てろとまでは言わんが、これ以上増やしたら許さないからな」
「わ、わわわ、解ったよっ!」
「……ミナの結婚式には、また来る。その時は、食事くらいはしよう」
「っ! うんっ」
最初はどうなるかと思いましたが、何とか話がまとまったようなので――私はホッとし、そんな私にこっそりとシラン様が言いました。
「君は私で、祭壇を作ってはくれないの?」
「……本物がいてくれますから、十分です」
「そうか」
そして私の答えに、シラン様は満足したように笑って頷きました。
前回、活動報告でお知らせしましたが、この話の公開は今月までとします。
今後はエブリスタとベリーズカフェ。pixivに載せて、同人誌化する時は撤収します。長い間お付き合い、ありがとうございましたm(__)m




