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『自転車屋の恋』  作者: さくらスミレ


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エピローグ



「リンさーん。夕刊だよ~。」


「おう、倫太郎。ありがとうな。」


今日も僕はリンさんへ夕刊を届ける。

というのも、あれからリンさんは僕が届けてくれるなら、と夕刊を購買するようになったからだ。

三枝さんは気の良い人なのか、リンさんのその我儘を快く了承して、僕の配達担当にしてしまった。


え?僕のバイトの日じゃない時はどうするのかって?

それは取り置きされるらしい。って夕刊の意味あるの?って思うけどリンさんにとって夕刊は僕に会う口実みたいなものだからって言ってた。そんな事言われたからバイトの無い日でもリンさん分の夕刊だけは取りに行ってしまっているのだけれど。


僕がバイトを辞めたら夕刊の購買は止めるって言っていて、三枝さんに申し訳なくてもう少し続けてもらいたいとお願いするつもりでいる。

とはいえ、僕がバイトを辞めるのはまだ先の話になりそうだから当面僕の夕刊配達(リンさん限定)は続きそうだけれど。



「倫太郎…ほら、ちょっとこっち来い。」


リンさんが手招きして呼ぶから、ひょこひょこと近づくとリンさんはニヤリと笑って僕の頬にキスをした。


「ちょっ、リンさんっ!」


「いいだろ。可愛い恋人に挨拶だよ。手が汚れてて抱き締められないんだ。これぐらい許せって。」


こんな外から丸見えの場所で僕にキスをするような破廉恥な人だけど、僕はリンさんが大好きでたまらない。


この先もずっと一緒にいたいと、進路もこの街から通える場所を考えている。

リンさんは嬉しそうにしていたけれど、もっと外の世界を見て来たほうがいい、と僕に何度もそう言ってこの街を出る事を薦めてくるからその事については話し合いが必要。

何にしても、僕は自分の可能性を狭めているつもりはないし、リンさんの傍にいる事で僕自身もリンさん自身も幸せを感じられるならそうすべきだと思っている。


付き合ってみると、リンさんは思いの外心配性で、過保護だと分かった。寂しん坊なリンさんの傍にいる事が僕の幸せなんだと分かってもらわなくちゃ。

僕との年齢差を気にしているようだったけれど、そんなの気にしなくてもいいのに。


僕にとって何よりも大切で大事な人はリンさんなんだって思いを乗せて、僕は今日もリンさんへ言葉を贈る。


「リンさん、大好きっ。」


唇にちゅっと軽くキスをして、捕まらない内に僕はリンさんの腕から逃れた。


今日もリンさんの為に夕飯を作ろう。

スーパーで特売だったのはまたしても茄子の大袋だったから。初めて作ってあげた料理を今日も振舞おうと、後ろで「覚えてろよっ」と騒いでいるリンさんの言葉に振り向いて笑顔を見せると、僕は二階への階段を登った。



おしまい





以前書いたものを転載させています。

当時の気持ちを思い出しながら投稿しました。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


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