団長が本気出してきた!
騎士団員は砦の見張りをしたり、入り口では門番をしている。あちこちで周りに異変がないか見ている者がいる。
見周りの団員が、馬を連れて裏門に向かうガルドの姿を見かけた。
「団長。外出ですか?」
「ああ。王都に行ってくる」
「そうですか。お気をつけて」
軽く手を挙げて別れる2人。
見周りの女性騎士は、バッグを持ってトコトコと裏門へ歩くひかりを見かける。
「あれ、ひかりちゃんお出かけ?」
「ハイ。ガルドさんと王都へ行ってきます」
「そうなんだ。気をつけてねー」
「ハーイ!」
ひらひらと手を振って別れる2人。
見周りの2人が話しながら砦内を歩いていた。
「団長、王都へ行くらしいぞ」
「ひかりちゃんと一緒に行くんだって」
ひかりを守るのは砦では最重要なので、団員達は情報を素早く共有していく。
ガルドとひかりが馬を見ながら話す姿を、砦の見張りをしてる団員達がチラチラと見ていた。
ひらりとガルドが馬に乗り、ひかりを引き上げる。
(え!?)
ひかりと団長が何か話していると思ったら、団長がひかりの腕を取って自分の腰に回させ、そのまま片腕で抱き寄せた。
(えええええええ!?)
一部始終を見ていた団員達は、心の中で絶叫していた。
全員が呆然と見ていると、団長が砦内をチラリと見た後、仕事をしろと無言の指示にハッとなり散って行った。
そっと振り返ると、団長達はゆっくり馬を走らせて行った。
「ちょ、ちょっと見た!?」
「なんだアレ!?どういうこと!?」
「とうとう団長が本気出してきた!?」
騎士団内は大騒ぎだった。
あの団長が!女性に怖がられまくってた団長が!
ひかりちゃんは!?もしかして両想いなの!?
色恋沙汰など全く見せなかった団長の、見た事がない姿に団員達が動揺を隠せない。しかも相手はあのちんまり可愛いひかりだ。
「こら、ちゃんと仕事しなさい。何?団長がどうしたの?」
休憩で散歩してたリサリアが、騒いでる団員達に注意しに近づいて来た。
「あ!ふ、副団長。いやあの…団長はひかりちゃんと王都へ行ったんですけど…」
ひかりの絶大な守護神、過保護なリサリアに説明していいのか、団員達はワタワタと狼狽えていた。
「うん。それで?」
ニッコリ笑って、続きを促す。
「絶対に話せ。正直に嘘偽りなく話せ」という圧を感じる。団員達は団長に謝りつつ、正直にさっき見たものを全て話した。
「………はーん。ガルドの奴、そういうやり方したわけね。」
「お、怒らないんですか?」
リサリアの冷静な態度に団員達はホッとしつつも不思議に思った。
「ひかりちゃんは嫌がってなかったんでしょ?」
「ええ、まあ、そうですね。」
「じゃあ、何も言うことないわ。独占欲を見せるのは、ひかりちゃんを守ることになるもの。
辺境伯令息のガルドに抱きしめられていた彼女に、ちょっかい出せる人間なんているかしら」
「うわあ…。」
自分達は無言の牽制を見せつけられたのか。年下の部下相手に大人気ない。
リサリアも呆れていた。
王都へ行けば、貴族の間ではあっという間に噂が広まるだろう。
あの男はまだひかりちゃんへの告白が出来てないのに、独占欲が先走っちゃってるじゃないの。




