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異世界では小さいねと可愛がられてます  作者: とりとり


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45/105

どうやって伝える?

朝の鍛錬を終えて着替えた後、ガルドは執務室に戻ってきた。

机の上には商店通りの地図が広げられていて、彼はそれをじっと見つめたまま動けない。


ーーー王族が放っておくと思う? 日和ってる時間なんてないわよ。

ーーーこの世界で家族を作るなんて、想像もつかないです。


リサリアとひかりの言葉が、何度も頭の中を巡っていく。


ひかりに、自分を選んでもらえるのだろうか。


貴族令嬢たちからは散々怖がられてきたが、ひかりは全くそんな素振りを見せない。むしろ信頼されている。

だがその信頼は、雛が親鳥を頼るようなものではないのだろうか。


ひかりに触れたい。自分だけを見てほしい。

こんな気持ちを、ひかりが受け入れてくれるのか。


警戒心のない柔らかな心の持ち主だからこそ、ガルドは怖気付いていた。しかも、ひかりは化粧をしないと清らかな少女にしか見えない。


ガタイのデカイ自分と、可愛らしい彼女。


……犯罪っぽい。地味にくるなコレ。


どよんと落ち込みつつ椅子に腰掛けると、扉をノックする音がした。


「どうぞ」

「失礼します。王城の方から書状が届きました」

「……そうか」

「え、どうしたんです? そんなに凹んで。珍しいですね」


執務室に入ってきた室長のシリウスは、目を丸くしてガルドを見た。


「……シリウスは、妻子持ちだよな」

「ええ、そうですけど?」

「どうやって……いや、何でもない」


「ひかりさんに振られました?」

「何でだよ。振られてない」

「そうですか。その落ち込み具合を見たら、つい」


「振られてはいないが……受け入れてもらえる気がしない……」

「ヘタレですねえ」


バッサリと、シリウスはガルドの言葉を切り捨てた。


「受け入れてもらえるように努力はしたんですか? どんなアプローチを?」

「う……怖がられるかと思うと、何もできて……ない」

「え? 何も?……そうですか?」


シリウスは首を傾げる。

ガルドがひかりへかける言葉には、好意がダダ漏れなのだが本人はまるで気付いていないらしい。


ひかりのガルドへの態度は、どう見ても好感を持っているように見える。

だがまあ、好意を示せば好意で返してくれる彼女だから、判断はつきにくい。


「……はっきり言わないと気付かないのでは?」


「シリウスもリサリアと同じことを言うんだな」


「ハハッ、副団長が言うなら確実にそうなんでしょう。頑張ってください団長。いや、辺境伯令息ガルド・エッセン殿?」


シリウスはニッコリ笑うが、瞳は貴族の眼差しだった。


ーー王族相手にどこまで出来る?次期辺境伯よ。


ガルドは、シリウスの言葉がただの激励ではないのに気付く。


謁見で、王族がひかりを認知した。

もう、ただの騎士団団長として、何も考えずゆっくりひかりとの仲を深められる時期は過ぎたのだ。


「ハア…そういうことにもなるのか」

「それはそうでしょう。応援してますよ。では、失礼します」


シリウスは一礼をして部屋を出て行った。


「はっきり……どこで言えばいいんだ?」

ガルドはますます頭を抱えた。


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