自分の中
決意を胸に、俺は結緋さんの言うとおりに一つ一つ自分の中にある『霊力を確認』することに集中……したいのだが、
「まず大事なのは自分の力をしっかりと確認することじゃ、秋緋は己の霊力全体に対して溢れることのないように抑え込み安定させる、ということだけ出来ておる状態じゃ。その中で防呪に使えるものを見つけなければならん」
正直、なにを言っているのかさっぱりわからない。
俺の霊力はひとつではないってことなのか?でも、そうか、東雲がさっきやってた封印の術は『自分の力の流れと逆の力』を使うって言っていた。
そもそも持てる力はひとつで、東雲は無理やり別の使い方をした。
「秋緋は三血混合だからね。今は……そうだね、正常に使われているのは東雲を使役し【不視】の力を持つ真砂の血の力だけ……【不視】の方は使えないって判断しるみたいで、だいぶ抑えられているみたいだね」
そりゃ相手を猫にするとかわけわからないことになったんだから、使えない判断は妥当だと思う。夜兄みたいにまともに使える自信もないし、今は、心の奥に閉まっている、つもりだ。
「その力の中でも一番危ないのは【魂滅】なんだけど、これは三血の集合としてできてしまった特別な力。純血の鬼の力が今それを抑え込んでいる。多分父様の力。」
混ざっておかしくなった力は別か……純血の……とと。
感情だけじゃなくて、夜兄の元に帰っても守ってくれているんだ。
と、いうことは、だ……残るひとつの血の力っつうのは……、
「紅司郎の血じゃな!」
ガーーーーン。
いや、そうなる、そうなんだろうけどさ。
だからあんな喜び方と張り切り方して、夜兄のとこにまで連絡するわけだわ。そりゃ自分の子供が自分の持ってる力を使ってくれるのは嬉しいんだろうけど、まさか俺もあんな恰好をしなければいけないのだろうか。
「どうしてそんなに落ち込んでいるんだい秋緋?」
「夜くん、秋くんはあのー……女の恰好しとる親父さんの方想像しとるみたいやで?ぷふふふっ」
夜兄も見てるはずなんだけどな?夜兄自身は、ととのこと大好きだから、自分の父親の力を使うことに違和感とか、不快感とかはまったく持っていないんだろうけど、俺の親父は、あのルージュ。
「おぉ、そうか、なるほどのう!秋緋も同じように着飾れば、より強く扱えるのかもしれんのう!」
とんでもないこと言わないで結緋さん。
「姫子様、強い強くないは今は置いておきませんと……秋緋様のこの様子ですと、紅司郎様の血の力も抑え込んで否定してしまうかもしれません。どうにかして形にはしませんと、先に進まずこの時間も無駄になってしまいます」
いいこと言うじゃないか茨木。ガチめに女装しなきゃいけないってなるんならどうにかして使えないようにしてるところだったぜ。その言い方だと、恰好をせずとも使えるっていう判断をしてもよさそうだな。
「む……そうじゃな、では秋緋よ、これから夜とわたしは『先生』として秋緋に接するぞ!覚悟するのじゃ!」
「面白くなりそう、ふふ、覚悟してね」
先生ってそんな物騒なこと言いますかね?覚悟することなんてあるの?まずは自分の力の確認と把握をするんだろ?
ここに来る前にもみたちょっと悪い顔になってる兄ちゃん姉ちゃんが怖すぎる。さすがに命がなくなるようなことはしないだろうけど。
「わかったよ結緋さん、よるに……」
「「せ・ん・せ・い」」
「……先生」
無駄に圧が強い。そして嬉しそう。楽しんでいてなによりだけど、俺は怖くて仕方ない。
おびえながら、視線に耐えながら……俺は自分の中の霊力を探ってみる。探り方なんてわかりもしないけど、とりあえず今一番身近にあって一番使っている力がどんなものなのかを確認してみようと思う。
今は見えているわけじゃないけど、東雲と繋がっている糸の大元の力を。
「あんっ♡もーぅ秋くん、こっちは俺の大事な大事なキューティはぁとやで♡」
「気色悪いですね、黙ってくれませんか」
うっかり辿る方を間違えた俺が悪いのだが、集中していた俺に変わって速攻でツッコミしてくれた茨木に感謝である。
派手に喧嘩してるけども……外野がうるさいけど気を取り直してもう一度……戻して、自分の中心へ。
ふわっと感じる……これが【筒師】の力の元かな?たぶん親父の血の力も同じような、近い力なんだろうと思った。そう、どこか温かく強い力。
「ん……もしかして?」
あったと思う。あったっていうか、全身包み込んでくれてたっていうか。
「みつけられたみたい、だね」
「思ったよりも早かったのう!続けておる修行とやらでも霊力のコントロールがしやすいように体がなっておったのかもしれん……それ抜きでも、さすが秋緋じゃ」
結緋さんが言っていることもあると思う。けど、親父が守るために外側から施していてくれてる術がある。それが俺の中の親父の血の力と呼応して気づかせてくれたのかなって。
ちょっときもちわるいけど、やっぱちゃんと守ってくれて……くそ、ちょっと涙でてきた。
「それじゃあ、その力を使って『おに鬼ごっこ』をしよう」
「ちぃっとばかし大変かもしれんががんばるんじゃぞー!」
まって。まだ見つけただけじゃない?そこからどうするか、とかはないんですか先生たち。
準備運動してるのはなぜなのか?
「おもしろそうじゃあないかぁ?俺も参加させてもらってもいいか、真砂の?」
「かまわんぞ!むしろ大歓迎じゃ!」
「そうだね、雷神殿が加勢してくれるとはかどりそう、よろしくたのむよ」
『おに鬼ごっこ』ってのもあからさまに俺の知ってる鬼ごっこと違うのがわかるし、雷神まで一緒になるってことは……。
「久しぶりですね『おに鬼ごっこ』……しかも秋緋様が……腕がなりますねぇ?」
もちろん茨木も参加するわけだよな……すげぇ嬉しそうに指の骨鳴らしてる。
「それじゃあ秋緋、説明するね?今から――」
ものすごい不安感の中、夜兄が淡々とルール説明をしてくれた。




