悪巧み?【サイドB②】
「あ~また見張りに監視もせなあかんのかぁ~」
薄暗い森の奥。人の気配がすっかり無くなった木造の建物の屋根の上に寝転ぶ男。
梅雨も明け、薄着でも汗がにじむ季節だというのに、コートを着ているその姿は異様だ。
それが、普通の人間であれば、の話だが。
「まぁなぁ~?すずめちゃん向こう側におちてもうたし。夜くん友達少ないからしゃあないんやろけど……俺はもっと!こう!スリリングな!刺激的なことしたりたいのにぃ!」
長い丈のコートの裾から銀色の毛が艷やかな太い尻尾を出し、屋根をバシバシと叩いている。
「それにこないにひとり言ばっか言うとったら根暗やておもわれるやん……いややーいややぁー!」
尻尾では足りないのか、今度は頭を抱えながら体をごろごろと左右に転がしている。よほどこの場所にいるのが嫌なようだ。
「ってありゃ?秋緋くんの気配消えてもうた?あれ?なんでや?えぇぇー?緊急事態ちゃうこれぇー!」
と思えば……変化に気付いたのか、今度は立ち上がり瞳を輝かせ、高揚させた笑顔を見せる。落ち着きのない男。
「こうしちゃおられへんな!報告しに行かへんと……」
「いや、待てよ」とでも思ったのだろう、飛び出そうとするのをやめると、顎に手を添え「ゔーん」と唸っている。
「このままおらんくなったー!って言いに行ったところでまた、探してこいー!とか言いそうやし……夜くんの俺への評価がさがってまうかもしれへん。ほんならちょちょっと痕跡追いかけてヤッたった方が面白そうやな……にひっ!」
男は不敵な笑みを浮かべ、被っていた帽子をはずすし、頭部にある尻尾と同じ色の獣の耳をピンッと立たせた。
しばらく静かに耳を澄まし……ぴくんっと。
一瞬なにかを感じたらしい耳が動いた。
「流石東雲くん、優秀優秀!見つけたでぇ!」
声を上げたと同時に、屋根を蹴り飛び上がった。フザけたような態度からは見て取れない程の跳躍力を見せる。
「楽しくなりそうやな……にひひひ♪」
そう嬉しそうに笑いながら、東雲は森の奥へと姿を消した。




