鬼百合の館①
「せっかくだし、直接会って話ししましょ!セイッ!」って事で俺は今かーちゃんの所にいる。
どうやって来たかって?もちろん鏡の中に引きずり込まれて、だ。
こう、にゅうーってかーちゃんの手が出てきたと思ったら、胸ぐら掴まれてズボぉっ!て強制的に。嬉しさのあまり俺への扱いが雑になったのか、元々こうなのかはわかりません。
「うふふ〜長居するつもりは無いだろうけど、ゆっくりしてちょうだいね?」
超にっこにこで鼻歌交じりで俺に話しかけるかーちゃん。
用意されたふっかふかの座布団に正座して、周りを見てみる。
なんというかすごい建物だ。何本もある黒い柱はどれくらい高くてながいだろうか?天井がはっきり見えないくらいだし、人間の考える常識の範囲内じゃないんだろうな。
壁色は赤……朱色?鮮やかに映えて、所々金色の細工が施されてキレイだ。
ここを部屋と呼ぶべきか迷うほど、異常な広さの開けた場所の真ん中らへんにぽつんと俺がいる。
そこと少し離れた段差のある高い場所に、かーちゃんがいる。
座っているソファ……長椅子?これもまた絢爛豪華というにふさわしい、クッションも、柄を合わせた見事な刺繍がされてとても鮮やかだ。
「ここはどこなんだー?って顔してるわね?そうねぇ……」
俺の様子を見て、少しづつ話し始めるかーちゃん。
「ここは、【鬼門】の中にある私のお家兼お仕事場ね!」
うーん、アバウト。わからんがすぎるが、普通の職場じゃないってことだけはわかる。
「もっとわかりやすく言うと……そうねぇ、人間が言うところの地獄に近いところかしらね?私が閻魔様的なポジションというか、ね!」
いやいや、的な?って雑さにびっくりだよ、かーちゃん。まぁなんだ?つまりここは地獄?あの世?
「システム的には似てる場所なのだけど、人間を相手にしているわけではないの。【鬼門】の存在はわかるかしら?その中にある【鬼道】が交わる中心にある空間に作られた唯一の建造物がここ【鬼百合の館】……私はここへ来ることになった人間ではない者達を導く役目をしているのよ」
あの世ではないけどあの世みたいなもんか?認めたくは無かったけど、俺、ここで平然としてられるってことは、ほんとのほんとーに幽霊になったんだ。
「昔ほど頻繁に仕事することは無くなったのだけどねぇ。最近、来るはずのない子とか、生きたまま来ちゃうとか妙なことが続いててあっちの様子気になってたのよ。ここに居るようになってから、あまりあちら側に干渉しないようにしてたのだけど……あっきーから来てくれてありがたいわ」
だからあんなにダラダラしてたわけね?いくらなんでも気を抜きすぎでは……っと、生きたままっていうのはすずめのことかな?
「紅ちゃんがねぇ、すごい勢いでここに来てあの垢嘗の子を連れて帰ってくれたから、安心してね?まったく……弟子の行動も管理できないなんて、もう少しお灸をすえておいたほうが良かったかしら」
笑顔で話してるけど、これに関してはかなりお怒りみたいだ。
血管浮き出す握り拳がもう……あっ、だからあんなにボロボロで現れたのか?惚れた弱みってことにしておいてやるよ親父。
ま、すずめは無事だってことは判明したからとりあえずは良しか。壱弥がやったってこともわかってるみたいだけど、これは直接あいつに聞かなきゃな。
そう、聞くためには……。
「ここの説明とかはこんなところかしらね?それじゃあっきー?そのスケスケどうする?」
どうする?ときたか。どうするもなにも、やることはひとつしかない。
「夜兄から俺の体を取り戻したい。かーちゃんなにかいい方法ないかな?皆からは俺の姿は見えないし、声も聞こえないんだ」
「夜……あら、それは完全に詰みね!」
ドーンッ……!
いやいやいやいや!まって!即答過ぎやしないか?しかもそんなドヤ顔で言うこと?!
「冗談よ、冗談!やだもぅーふふふ」
「その冗談はキツイよかーちゃん。俺ほんとにわけわかんなくて、思い出も記憶もバラバラにしか戻ってないし、その途端にこんな体になるし……ぐすっ……」
思わず泣いてしまった。なにかがあふれるのが抑えられないみたいに……俺、こんなに泣き虫だったけな。
そんな俺を見て、かーちゃんはそっと抱きしめに来てくれた。触れられてる感覚はちゃんとある……温かい。
「あらあら……泣き虫は治ってないのね。ごめんなさい秋緋……お母さん、あなたとお話できたの嬉しくて……今はこんな冗談言うべきではなかったわね、よしよし……」
優しく撫でられる感覚は小さい頃を思い出す。
思い出せるっていうのも嬉しいし、かーちゃんに優しくされるってのがなにより安心する。感情が不安定になってる今は、特に沁みる。
「疲れたでしょう?秋緋……夜くんはね、慎重な子だから、今すぐなにかするとかははいはずよ。母親が言うんだから間違いないわ……今は、少しおやすみなさい?」
「……うん」
さっきまで眠気とか疲れとか感じて無かったけど、撫でられて温かくて……意識が薄らいでいく。
「……寝たかしら?」
うとうとと。瞼は閉じてしまったが意識はまだ少し残ってる。
完全に落ちるのも時間の問題だけど……なんだろ、かーちゃんがなにか言ってる。
「カラス!!聞こえていたら灯慈を呼べ!」
え?灯慈って……茨木だよな?なん……あぁ、あいつは、そうだ……真砂の女性の下僕だった……。
「茨木灯慈……ここに。お久しゅうございます、姫様」
はっっや!!すでにそこにいたレベルじゃん!いくら下僕でもそのはやさは引くわ、こっわ!
茨木が『姫様』と呼んでる俺のかーちゃんが、茨木の目の前で俺を撫で撫でしてるのをどんな気持ちで見てるんだろう……こっわ!
くっ!ちょっと見たいけど眠気が。ダメだ……瞼がおもい。もしかしてかーちゃんの術とかなのかな?あっ……ぐぅ……すぅ……ぐぅ……。
「いい子ね、秋緋……今は休んで霊力を回復なさい。そして目が覚めたら、あの子に会いに行きましょう、ね?」




