悪巧み?【サイドC②】
「単刀直入に言う、すずめをどこにやった?」
うん、やっぱりその事かぁ。
わかってたけど、ね。怒ってるかなぁ?面倒なことにならないようにしたいけど。
「なんの、ことですか?僕言いましたよね?」
僕がすずめを鬼門送りにした翌朝、師匠にはこう伝えた。
『保健室に師匠に会いに行ったら、開けっぱなしになった窓に妖怪の物らしい体毛があって争ったような形跡があった。すずめの姿が見えなかったから、連れ去られたか、あるいは……』
って感じで。
体毛があったのは本当だから、全てが嘘じゃないんだけど、もう少し手の込んだこと言えばよかったかな?
「……お前の言うことは信じてやりたかったんだが、俺のテリトリーで鬼門開いたのは、間違えたな?」
あの子気に入らなかったから焦っちゃったか……失敗したなぁ……ま、こうなったら仕方ないね。
「鬼門開けるよーな奴は早々いねぇんだ、しかも、酒気が残ってたらもうお前しか思い当たらん。なんでこんなことをした?」
なんでなんて……聞かないでよ。
「師匠、僕には大事な約束があるんですよ」
「約束?」
僕は懐から酒天の筒を取り出し、軽く揺すった。
バシュッと言う音と白い煙をあげて酒天が姿を見せる。出したと言うか、戻したんだけどね。
「あー?もう時間か?ってカマヤローじゃねぇの?おっひー♪」
自由時間だったけど、イレギュラー起きたからそれも終わり……それにしても、相変わらず酒でベロベロだなぁ。
「どういうつもりだ」
師匠も、こうなるってわかってたでしょ?
「その約束ってやつの為に、すずめを送る必要はあったのか?」
「時間がありませんでした。玉は彼らに渡りましたけど……秋緋を守るためでしたから」
見つめ合う師匠と僕。
容姿は気になるから目を合わせたくはないけど、それよりも隙を見せないように。隙を見せたら仕掛けてくるのがわかったから反らすことができないな。
「挨拶したのに無視かぁ?やるならやるぜぇ?あぁ?」
あらら。
いつも以上に酔ってるからか、気が短くなってるね、酒天。
僕が指示する間もなく酒天は師匠に向かい鬼火を放っていた。
「っと!こらぁっ!酒呑童子!!あぶねぇな!今こいつと話してるんだ、よっ!」
師匠は小さく後ろに飛び、鬼火を避けると同時に酒天に向かって針を飛ばした。さすがの身のこなし……だけどね。
「?!しまっ!!」
「がははっ!俺の主はこの坊主、だぜぇ?」
僕と酒天は【筒師】として繋りともうひとつ……直接的に力が繋がるように霊力の糸を体内の【霊脈】にも繋げてるんだよね。
だから。
「ごめんなさい師匠」
避けた先の着地するであろう場所に開いた鬼門に吸い込まれていく師匠。
「さとり……か……!抜かった……っ」
「すずめが心配ならテメぇで探してきなぁ?がははっ!」
少し、悪いかなって思ったけど。師匠なら出てこられるだろうし……時間はかかるかもだけどね。
「……かっ~!やっぱりこの力手放せねぇなぁ!負けなしってなぁ気持ちがいいぜぇ。坊主さまさまだなぁ?がははっ!!」
「笑い方が下品だよ、酒天。とりあえずこの後の予定もあるから移動しなくちゃ」
へいへい、と渋々筒に戻る酒天。この後も働いてもらうから休ませないとね。僕もあまり、消費したくないし。
それにしても、師匠には話してなかったけどやっぱり僕のこと調べてたのかな。約束については知らなかったみたいだけど……その方が都合がいいから、まぁいいかな?
「僕が妖怪の【さとり】の子だってわかったら、秋緋は友達、やめちゃうかな……?」
『あいつはそんなことじゃ友達辞めるとかしねぇ奴だろ?お前が一番わかってんじゃねぇのかぁ?ふあぁ~…少し寝るわぁ。』
うん……酒天の言う通り、だね。
こんなことしてる僕だし、嫌われて離れてしまっても、それは仕方ないだろうって覚悟してる。だって僕は、君がこの約束を忘れていても、あの時の君との約束を守りたい、叶えたいんだよ。
あんな顔、見たくないから、ね。




