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親睦キャンプin裏山⑤

 朝日が眩しいなぁ……風もよく通るし親父が言ってる住む環境はよくするって意味が分からされる気分だ。

 欲を言えば、昨日テレビで見たような猫がいたりすればいいなとか……うちにはあいつらがいるから無理なんだけど。


「…!………?!」


 なんだ?リビングの方かな?騒がしい。

 部屋を出ると廊下に戌井がいた。俺に気づいた戌井が「おはようございます」と挨拶し、話を続けた。


「姫子様の安全確保の為の周辺環境を確認しており、留守にしてしまい申し訳ありませんでした……昨晩は特に変わったことはございませんでしたか?」

「ん、あぁー……まぁ普通だったよ。それより戌井、お前もういい年なんだからあんまり無理すんなよな」


 俺にとっては普通じゃない事実がぼろぼろ出てきたけど、結緋さんは自体は、普通だったし。

「ほほほっ!」とにこやかに笑って戌井は俺の頭を撫でた。執事ではあるが、戌井はずっと側にいてくれたやつだから、お爺ちゃんみたいな感覚だ、心配もする。戌井もそんな俺をわかってくれてる。


「人数が多いと朝から賑やかでございますなぁ。姫子様もさぞや楽しんで……」


 ふたりでリビングに繋がる扉を開けると。


「ふにゃぁー!!にゃにゃにゃぁー!!」

「これっ!逃げるでない!待つのにゃぁ!はぇ?!」


 これは……楽しんでる、でいいのかな?

 結緋さんが茶色の猫と黒猫を追いかけ回して部屋の中の物がごちゃごちゃになってしまっている。その追いかけている結緋さんにも異変が。猫耳と猫尻尾が生えていて時折語尾がにゃぁになっているようだ。


 とてもかわいいです……じゃない!じゃない!


「特に変わったことはないの……でした?」

「ないはずでした」


 本当に、なにもなかったはずなんだが……どうしたことだろう。


 一部が猫化(ねこか)してるとか……こんなの、調べるまでもなく。


「貴方のせいですよ、秋緋様」


 あ、よかった、やっぱりそうだよね。でも、茨木は普通みたい?扉の横で立っていた不機嫌……怒ってる茨木さんに話しかける。


「やっぱり?でもなんで……お前は平気なの?」

「平気ではありませんよ。どれだけの力をまわしているかわかっているのですか?これじゃ姫子様を警護することもかにゃわにゃ……くっ!」


 すまんが少し笑ってしまった。お前はそれくらいの方が可愛いげがある……でもなんで急にこんなひどいことに。


「説明してやる」


 リビングのテーブルでコーヒーを呑気に、優雅に飲んでいる親父が話しかけてきた。この騒ぎの中でよく飲んでられ――。


「お前の【不視】がまたやらかしてるんだよ。結緋ちゃんには悪いが呪を解くタイミングがはやかったんだなぁ。とりあえずはお前の触った、お前に触れた奴に症状が出てるみたいだな?ふふ」


 あぁ……ほんとに酷いことに。目の前の物体がまじに酷い。真面目に語る姿が酷い。出勤前だからルージュなのが本当にたちが悪い。筋骨隆々の猫耳のおっさんの破壊力がここまでのものとは。


 う、うん、ええと?俺が触った奴が猫化するってのはわかった。さっき廊下で会った戌井はなにもなかったが……あ。


「……おやおや、そう言うことでしたか。どれだけ害があるものにゃので……ほっほっほっ!これはこれは……」


 害が早速……ごめんよ戌井。


「はぁはぁ……で、でも全員に同じ様に症状が出ておるわけではにゃいようじゃにゃ?」


 2匹を両脇に抱えた結緋さんが息を切らしながら会話に参加してきた。症状の度合いが違う?ってことは……この完全に猫になってるのは?


「この猫は、ちーとみー?」


「うにゃん!」と揃って返事をする猫2匹……マジか。


 この感じをみると、直近で接触していた時間が長いと症状が大きく出るって感じか?昨晩のうたた寝の時ずっと重なっていたせいか。それより、普通に使ってるけど症状って言い方あれじゃない?俺がバイ菌みたいじゃない?やめない?


「……すまんのう秋緋。私が解いてしまったせいでこんな騒ぎに。あ!でもの!以前とは違って中途半端過ぎる雑な発現はしておらんのはすごいぞ!砂鬼と砂羅をここまで変化させるとは驚きじゃ!癖はあるようじゃが【不視】らしい【不視】じゃ!力がついておる証拠にゃ!フニャァ!」


 これは褒められてるでいいのだろうか?褒められるようなことじゃないんじゃないか?だって……人間にも……ってことは、だ。


「秋緋、学校行って確かめるしかねぇぞこれは。見える奴だけならともかく、見えない奴にも見えてしまうってんなら対処しなくちゃならない。ここには見える奴しかいないから確かめられねぇ」

「あ、あぁ……それもそうなんだけど……これ、どうやって戻すんだ?」


 触ったら悪化するんなら……どうしようもないんではないだろうか?見える見えないの問題もそうだが、治すことを先に考えるべきでは……なんでキョトンとしてるの?


「それは……」

「考えておらんかったにゃ……」


 親父と結緋さんが声を揃えて言う。そんな暗い顔で言う?考えてないってことないでしょ?


「まぁまぁ……とりあえず落ち着いて、学校に行きましょう、皆様。秋緋様はむやみに触れたりしないようにお気をつけて。紅司朗殿はあまり目立たぬように行動するように。姫子様はキャンプまで私と茨木とで戻す方法を探りましょう……よろしいですかにゃ?ほっほっ……」


 流石戌井。年の功って感じだな。まともなのは俺と戌井しかいない。


 戌井に促され、みんなそれぞれ行動を始めた。

 結緋さんに見送られ、俺と親父を戌井は車で学校まで送ってくれた。車内で親父が尻尾を絡めてくるのが気持ち悪かった。悪化するってわかってやってんのかね?


「秋緋様、本日はご自宅の方で……ひとりになりますがよろしいですか?」


 そういえばあのふたりは完全に猫化してた。これは久々に羽伸ばせるか!


「壱弥が隣にいるが……一応護衛付けるかな」


 ……護衛?

 そっか、昨日の話の延長か。知らんふりしといてやるけどどうせこっそり妖怪配置するんだろし。


「弟子の始末もやらねぇと……忙しいねぇ。」


 親父がぼそりとなにか言ったようだがすべて聞き取れなかった。弟子……てのは壱弥か?鋭く変わった目付きを見てしまい、少しゾクッとした。


「さ、着きましたよ。お気をつけて行ってらっしゃいませにゃん……ほほ……」


 昨日車に乗った通りで車を降り、親父と少し間をおいて歩き出す。


 いつもと違う方向から学校へ向かうから、なんだか新鮮だ。それに、こっち側には女子寮があり沙織里と会うことができるかもしれない。話を聞いてもらえるかはわからないけど、姿がどうなってるかは確かめなければ。


「ねぇ、秋緋」

「うぁ?!壱弥?!なんでこっちに?!うわー……ね、猫耳似合う、な?」


 肩を叩かれ振り向くと、なぜか壱弥がそこにいた。そして今年に入って2度目の壁ドンをされた。


「……これ、どういうことかにゃ?……せつめい!」

「と、とりあえず俺に触れないでくれっ!」


 登校途中の生徒たちにじろじろ見られ、居たたまれない気持ちになった俺は壱弥を突飛ばし走り出した。


「……予測できないのは面白いけど、僕がフラれたみたいじゃない、説明になってないし。今ので尻尾も生えちゃったよまったく……」


 壱弥よ、あんなとこで壁ドンをするな!いや、隠れてやれってことじゃないけど!また変な噂立つから!


 勢いよく走り出したせいで何人か生徒にぶつかってしまった。

 戌井に注意されたというのに、さっそく注意散漫になってしまっている。ぶつかりはしなかったが登校中の生徒の中に沙織里をみかけた。チラ見程度だったがしっかり猫耳と尻尾がお生えになっておりました。


「あ……!」


 沙織里の声が聞こえた気がしたが、申し訳なさから逃げてしまった。そのまま教室に駆け込み、自分の机から微動だにせず、沈黙を貫き、誰も近寄らせないようにした。

 普段壱弥と沙織里以外は気軽に近寄っては来ないのは、今に限ってはありがたいことだ。今は、沙織里は女子の鉄壁ガードでそもそも近くには来ないけど……それでも、あの一瞬のきっかけを掴んで、この間の件も含めて俺から直接説明しとくべきだっんだろうな。ほんと、ダメだな……俺。


 とりあえず沙織里の変化に他の人は気づいていないみたいだ……見えない奴には見えない、そこはひと安心か。


「へぇ?それでいいと思ってるの?秋緋?」


 教室にきた壱弥にガッツリ説教された。でも、壱弥も悪いと思うんだけどそれは無しなのか?


「そう……とりあえず僕はまだ大丈夫だけど、鵺が猫になって困ってるんだよね。放課後師匠に呼び出されてるからついでに相談はしておくけど……急に猫ってなにか影響出るようなもの見たり聞いたりしたの?」


 そういえば……。


「テレビ番組の……猫動画?か?」


 うとうとしながら見たのが悪かった気がする。あれ?壱弥?どした?


「秋緋らしいっちゃらしいね……ま、早く治してよね……」


 力なくため息をつく壱弥。確かに……気が抜けてしまうような理由なのでしょう。


 が!仕方ないじゃないか!


 猫は癒し!

 ふかふか!

 もふもふ!

 ぷにぷに!


 妖怪だらけの中で、俺に唯一癒しをくれた存在なんだから!


 わかる!?

 わかるだろー?!


 わかってくれよぅ……。

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