↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/91

雨と鵺と花①

 6月半ば。鬱陶しく雨が降りまくる梅雨の季節。俺は買い物をする為に商店街へ来ている。

 入学してから散々!色々!ひどい目に!あってきた俺だが、GWを過ぎた後から少しずつだが落ち着きが戻ってきた。まぁ、修行することになったり、課題忘れたり?小鬼と同居生活になったり?そういうのはあるが。


 親父とは……跡取りの継承の云々の件で結局ケンカして、教師権限で呼び出されても、プライベートでも……あれから今に至るまでまともに会っていないし話もしていない。

 うちの学校の教師だから、見かけはするが、近づいたりはしていない。


 あれだな、反抗期だな、おうおう。


 修業に関しては壱弥を通して報告をしてもらって、言われたことは順調にこなしている。壱弥は「早く仲直りしてよね」って呆れて言ってたけど、やることはやってるし、別にいいよな?


 経過としては、初日のように足元だけが輝くこともなくなったし、結緋さんの贈り物の手助けがあってなのか真砂家の血か……普通より早いペースで、体がなれてきているらしい。

 早く終わるならそれに越したことはない。開放される日も近いか?


「おっ!イケメンくーん、学校帰り?機嫌良さそうね?」

「あ、こんちわ。からかわないで下さいよー、俺のどこがイケメンなんすかぁー?」


 明るく話しかけてきたのは商店街にある花屋さん『フラワーショップはるの』のショートカットがよく似合う春野(はるの)かすみお姉さん。何故か俺をイケメン呼ばわりする、謎の感覚の持ち主だ。俺に気付くといつもこんな風に話しかけてきてくれる。


「今日はお買いもの?アルバイト?あ、そうだそうだぁー!後で私もお買い物行かなきゃだわ!」


 相変わらず元気いっぱいだ。こっちも自然と笑顔になる……ん……?なんだろ?


「ね!雨ばっかりで嫌になっちゃうよね!お日様出ないからお花も元気無い感じでしょー?」


 んん?変だな、なんか見られてる?


「お客さんもあんまり来なくて暇だよぉー!ねね、イケメンくん、お客さん連れてきてよー!」


「俺には無理っすよー」と適当に返事を返すと、なんだとー!っと頭をぐしゃぐしゃにしてくる。かすみさんはとっても明るくてフレンドリーだ。さぞモテるんだろうなぁ……っと……やっぱりなにかの視線を感じる。

 俺とかすみさんが話してるのを誰かが見てる。辺りを見渡すと……うん、いた。すぐわかったわ。


「すみません……」


 俺とかすみさんの間に割って入るように、少し暗い印象の女の人が店に来た。


「いらっしゃいませ!今日も紫陽花かな?あ!イケメンくん、またね!」


 お客さんが来たのでかすみさんは接客に戻っていった。


 お客さんが来てくれてなによりだ。が、こっちはまた厄介事な予感がする。俺としては、このまま落ち着いた生活をしたかったのだが……そうも言ってられないだろうなぁ。


「はぁ――……」


 大きくため息をついて、俺は視線を送っている奴に近づく。


「おい、おま……えぇー??」


 路地裏へ入る細い道の脇にある電柱の影に隠れていたのは……鵺だ。

 尻尾で鵺だとわかったのだが、本体の方を見るとなんとまぁ……高身長の人間の男がいる。やけにガッチリして、ガテン系?っていうのか?そんな感じ。


 人間の姿になってまでこんなとこで隠れてるのも驚いたが……それにしても、でけぇなおい。


「あ、秋緋殿……これは、そのー……」


 本体も尻尾の蛇もしどろもどろ。

 蛇いないと喋れないのは前から知っちゃいるが、人間に化けるならちゃんとやらないと……面倒なことになる。

 蛇の尻尾生えたでかい男が物陰から女性を見てる……とか、事案すぎる。


「こ、これにはちゃんと訳があるでござるよ!?ただただあの美しい女性に見惚れていた訳ではござらんのであって!!」


 やんでそんなに慌てて……はっはーん?こいつ、かすみさんに惚れたのかぁ?


「お前、かすみさんが好きなの?」


 俺はこういうことは意外と敏感で、問い詰めるなら直球でいくのだ、ふふん!


「あ、あ、あああ秋緋殿!な、ななになな!なにを言って!!!」


 はっはっはー!ここまであからさまに真っ赤になれば必死に否定してもバレバレだぁ!「ちがうでござる!ちごうでござるぅ!!」って、若干噛んでるし。なにこれ面白い。俺はニヤニヤしながら更に鵺に話しかける。


「そんなに好きかぁーいいねぇ?鵺も男なんだなぁ……うんうん」

「秋緋どのぉ、からかうのはやめるでござるぅ……」


 まぁ、妖怪と人間の色恋とかはよくわからないけど、反応がまぁ面白い。人間の姿だから余計に面白い。

 あ、乙女座りでしくしく泣き始めちゃったよ。こんなメンタルでよく【筒師】の使役妖怪としてやっていけてるな……ま、そろそろ可哀想か。


「で?なんで覗いてんの?人間の姿でこんなことしてたら捕まるかもしれないぞ?それに、壱弥はどうした?」


 いくらなんでも使役されてる妖怪が理由なしにこんなところで人間に化けて覗きをしている……筈はない、たぶん。


「……今回の件に壱弥殿は関わっておらんでござる。その……数日前のことになるのでござるが――」


 先ほどの様子から一変、真剣な眼差しで鵺は語り始めた。


 ……正確には、真剣に喋る尻尾の蛇なのだけども。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。