27. 外の世界の浅はかさをしってしまった次第です
レイアは王宮からお家に帰る馬車に乗った。効率とか無視して、先に家に帰ればよかったトホホとげんなりした気分に包まれていた。
「何を話していた?」
ゲオルクは腕組みをしながらレイアに聞いた。常々感じているが、この男、言葉足らずである。いつどこで誰がどのようになどの要素が抜けている。
「フローラについて」
レイアは素っ気なく答えた。まあ、前後関係からゲオルクがゾフィーとの会話内容、ひいてはお茶会に誘われた理由を聞かれていることはわかるのだが……とレイアは仕方なさそうに肩をすくめた。
「そうか」
やはりなとゲオルクは合点がいったように呟いた。
「俺も噂では聞いていた」
どうやらゲオルクの耳にもフローラが王太子殿下に急・接・近しているという情報が入っていたらしい。ヤゴナにいた時に言ってもいいんじゃない?とレイアはゲオルクを薄情に思った。我が妹の浅はかな振る舞いを!共有してくれもいいんじゃないの???とレイアは歯噛みした。事前予習を踏まえた上で先程の王太子に引っ付くフローラを味わいたかったと残念に思った。
「ゾフィー様は王太子に悪影響を与えるフローラを何とかしろとおっしゃってましたよ」
そんな無念は置いといてとレイアは話を続けた。
「何とかするのか?」
「い~や?」
レイアはアーハン?とでも言うように肩をすくめ、両手の平を上に向けた。腹立つ顔をしている。
「何とかしたいならゲオルクに頼んでってたらい回しにしました」
「何でさ」
ゲオルクは突然矛先が自分に向かったような気がしたため、素っ頓狂な声を出した。
「初めから、彼女は姉ではなくゲオルク将軍をアテにしていたので、私を介すことなく直接頼んでほしかっただけでーす」
レイアは晴れやかな笑みを浮かべた。フローラ問題に関わることは良いが、ゲオルクとゾフィーの中継役なんて絶対に嫌だ、めんどい。浅はかさを味わうよりも煩わしさでストレスマッハになるのは目に見えている。
「……いいのか」
えらく神妙にゲオルクがレイアの方を見た。
「何がです?」
何が、がレイアにはわからなかった。もう少し話せ、端折りすぎであるとレイアは怪訝な顔をした。
「あなたの妹、果てにはご両親はなかなかの罰を受けるだろう」
「はあ……、まあいいじゃないんですか」
レイアはなるようになるさとどうでもよさそうに馬車の窓から景色を眺めた。
これはレイアの持論だが、たとえどんな目に遭っても素晴らしい浅はか力があれば起死回生を狙えるはずである。つまるところ、何もできなければ、そのまま落ちぶれてしまえば、それまでの浅はか力であっただけなのだ。自業自得の絵に描いた浅はかさで罰を受け、そこから這い上がれなかったとすれば、それは彼らの責任である。
また、レイアは以前、両親、妹の浅はかさを見れないことに残念さを覚えていたが、その気持ちは薄れていた。彼ら以外にも、メラやゾフィーなど感動的な浅はかさ&浅ましさを持つ者がいるとしってしまったからだ。レイアにとって両親と妹は不利益を与えてくる存在ではあったが、それもまた浅はかと相殺していた。では、メラやゾフィーのように、少ない不利益で膨大な浅はかを与えてくる存在をしってしまったレイアは両親や妹に価値を感じるだろうか。
レイアはそんな持続可能な浅はかさよりも、両親と妹が追い詰められた時に噴出する浅はかさ、いわば最後の花火もしくは最後っ屁がどれほどのものか、興味が湧いていた。




