001
俺が目を開けると、そこは薄汚い路地裏であった。
無事に転生できたかと安堵し、俺は胸をそっと撫で下ろす。
安堵し、色々と考えに余裕が出てきて気が付いたが、俺の着ている衣類はかなりボロボロでめちゃくちゃ着心地が悪い。こんなことなら、神様に良い服を頼むんだったな。
俺はその場から立ち上がる。
まず第一にすることと言えば、魂技が使えるかどうかの確認だ。俺は【魔眼Lv.1】で使うことの出来る鑑定の魔眼を、俺に向かって発動させる。
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本名:ケルニス
年齢:5歳
Lv.1
〔能力値〕
魔力 3.000/3.000
攻撃 900
魔攻 1.100
防御 800
魔防 800
速度 400
《獲得魂技》
【魔王Lv.5】
【使役Lv.1】
【空間魔法Lv1】
【魔眼Lv.1】
【黒魔法Lv.1】
《加護》
【魔神の加護】
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よし。発動できているな。
……って、名前がある。ケルニスか……。
まあ、いいか。神様のセンスか?
あと、能力値ってなんだ? そんなこと、説明なかったぞ? ……いや、質問しなかった俺が悪いのか。
まあ、ステータスはいい。次に発動させるなら、魂技【魔王Lv.3】の魔王剣だ。
俺は手に力を集中し、魔王剣を呼ぶ。
「『来い。魔王剣』」
俺のその短い言葉に反応し、足元に魔法陣がフワリと現れる。魔法陣はその場でクルクルと回転し、その剣は姿を表した。
その紅の刃を見ると、どうしても痛い過去を思い出してしまう。
「むぅ……まあ、魔王が持つにはお誂え向きなんだろうがなぁ」
魔王の魔の字も威厳のない今の俺がこの剣を振るえばただの痛い奴である。
俺は現実逃避をするべく魔王剣に鑑定の魔眼を発動させる。
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銘:スペリアルホーム
武器ランク:S
種類:魔王剣
《性能》
【所有者帰還】【所有者固定】
【譲渡不可】【破壊不可】
【異空間作成】【変形】
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思ったより性能が多かったな。それに、銘がスペリアルホームか……うん。呼び方は魔王剣でいいな。
取り敢えず、見た目を変形で変えよう。こんな剣じゃまともに振ることも出来ない。
魔王剣を変形で見た目を変えようと四苦八苦していると、俺の居る路地の人通りの多い方と奥へと続く道から複数の足音が聞こえてきた。
やがて少し経つと、その足音の正体は俺の目の前で止まった。
人数的には前に三人後ろに三人。その男たちは俺と似たようなボロボロの服を着用し、手には安そうなナイフが握られている。
「なにか用で、、用か?」
一瞬、サラリーマン時代の癖でコイツに対して敬語を使いそうになったが、俺は将来魔王になる男。こんなやつにへりくだる理由なんてない。
当たり前だが、この世界に知り合いなんていない。俺に何か用があるような奴なんてのはいない筈だ。
「おいガキ。その剣をこっちに渡しな。見た目だけだが、高く売れそうだからな」
なるほど。この剣が目的か。まあ、見た目だけなら強そうだよな。いやまあ、実際強いんだけど。
にしてもコイツ背高いな。……いや、俺の背がめちゃくちゃ低いのか。俺五歳だもんな。
……そういや、コイツにも鑑定の魔眼が使えるんだよな。試してみるか。
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本名:ホブゾウ
年齢:34
Lv.14
《能力値》
魔力 645/645
攻撃 198
魔攻 64
防御 209
魔防 156
速度 149
《技能》
〔武〕
【短剣術Lv.2】【棍棒術Lv.1】
〔技〕
【悪食Lv.2】
 ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄
……よっわ。え? カッス。なんだコイツ。
俺のデコピンだけで死ぬんじゃないか?
「おいテメェ! 聞いてんのか!」
「うるせぇよホブゾウ」
「!!??」
待て待て。確かに俺は最強の魔王になるつもりで動く。だが、一般人ならともかく、チンピラがこのレベルなのはどうなんだ?
しかもレベルが14て……。だが、技能が三つか。これに関しては基準がないから多いのか少ないのか分からんな。
「て、テメェ! なんで俺の名前を!?」
「あ? お前には関係ねぇよ。で? なんの用だったか。俺に挨拶でもしに来たか?」
「ふ、ふざけんじゃねぇ! さっさと剣を寄越せ!」
ホブゾウは俺の言葉に逆上する。
まあ、こんなステータスの奴に逆上されてもな。
「まあ、冗談はこれくらいにして……」
俺は魂技【魔王Lv.1】の超身体強化を手加減して身体に張り巡らせ、少し大きかった魔王剣を俺の身体に合う大きさへと変化させる。
「はっ? テメェ、剣を……」
俺は気になっていた。俺は、人を殺せるのか。イメージをするだけなら簡単だ。超身体強化に身を任せ、魔王剣を首へと振るう。だが、それを実行できるかどうかとなれば話は変わる。
俺は剣を握り締め、ホブゾウへと肉薄する。
「ハッ!」
「うおッ!」
ホブゾウは俺の振るう剣を防いだ。
しかし、それによりホブゾウの短剣は向こう側へと弾かれてしまう。
俺は着地すると、すぐに方向を転換しホブゾウの首へと魔王剣を振るう。その瞬間、首が宙を舞った。
肉を斬る感覚が俺の腕を襲った。なんともいえない、不快感を覚える感覚。
俺は、人を斬った。
「ふぅ……」
俺は心を落ち着ける。何か心に来るものがあると身構えるが、罪悪感といったものは感じない。
俺は再び駆け出し、ホブゾウの仲間に斬りかかる。
「て、テメェ! 来る--」
「うるせぇ!」
俺は再び首を斬った。
それに続き一人、また一人と首を飛ばし、気が付けば、チンピラは最後の一人となっていた。
「な、なんで。こんなこと……!」
「……これは持論だが、あらゆる責任の比率は1:1。
俺も悪いし、お前も悪い。つまりこの場合、死ぬお前も悪いってことだ。弱い自分を祟るんだな」
俺は、目の前の男の首を切り落とした。
* * *
「ふぅ……意外と、なんとかなったな」
俺は魔王剣を戻し、足元に転がる死体を見ながら一言。
もう少し躊躇うものかと思ったが、やってみれば意外と早かったな。
さて、この死体をどうしようか。半端な知識でしかないが、死体というのは感染症のリスクが高い。それを放置しようものならなにを言われるか分かったもんじゃない。今はまだあまり悪目立ちはしたくない。
俺が考えに耽っていると、目の前に転がる死体が動き始めていることに気が付いた。
少々怯えつつも恐る恐る動く死体に近づくと、まるで餌を運ぶ働きアリよろしく、死体を運ぶネズミの姿があった。
「ね、ネズミ?」
「チュ?」
俺とネズミの目と目があった。
え? 君たち死体を運んでどうすんの? 食べるの? 人食いなのお前たち。
俺はネズミに鑑定の魔眼を発動した。
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種族名:カニバ・ラッド
Lv.6
《能力値》
魔力 106/106
攻撃 141
魔攻 23
防御 53
魔防 19
速度 107
《技能》
〔武〕
【噛みつきLv.1】
〔技〕
【悪食Lv.2】【補食Lv.2】
《備考》
別名、掃除屋ネズミ。人を襲うことは滅多にない人食いネズミ。基本は住みかへと死体を持ち帰り食べる。個体ごとは弱いが、それ故に集団で行動する。また、人を食べるためなのか体内には人間に有害な病原菌が多くある。
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うわ、人食いネズミか……。まあ、手を出さなければ特に何も無いみたいだし、触らぬ神に祟りなし……いや、待てよ?
俺は一つの案を思い付き、自分に鑑定の魔眼を発動する。
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本名:ケルニス
年齢:5歳
Lv.16
〔能力値〕
魔力 3.023/3.123
攻撃 1.009
魔攻 1.100
防御 800
魔防 800
速度 456
《獲得魂技》
【魔王Lv.5】
【使役Lv.1】
【空間魔法Lv1】
【魔眼Lv.1】
【黒魔法Lv.1】
《加護》
【魔神の加護】
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よし。レベルは上がっているな。そんで、それに伴って色々と能力値が変化しているな。魔力と攻撃と速度が上がったのか。魔攻と防御、魔防は変化無しと。これは何故だ?
っと、それの考察は後にしよう。今は、やってみたいことをしてみよう。
「ふぅ……魔王覇気!」
そう唱えると、俺の回りから紅いオーラのようなものが溢れ、ネズミたちに襲いかかった。
俺はネズミたちに魂技【魔王Lv.3】の魔王覇気を発動させた。効果通りならネズミたちを気絶させられる筈だが……どうだ?
「チュ、チュー……」
レベル差のおかげか能力値の差のおかげか、魔王覇気によってその場にいるネズミたちはバタバタと倒れ始めた。
「うっし。思った通り」
俺は小さくガッツポーズを決める。
俺は辺りに散乱する死体を放り投げ、気絶しているネズミたちを見る。色はイメージ通りのネズミ色で、大きさはバラバラ。大型と呼べるタイプから小型と呼べるタイプまで幅広くいる。
俺がやりたいのは魂技【使役Lv.1】の使役である。正直、初めて使役する魔物がネズミってのは多少やるせない感を感じるが、次にある使役のチャンスがこうまで安全な場所で出来るか分からないため、こういうことは早めに済ましておきたい。
俺はカニバ・ラットに使役を掛ける。
すると、頭のなかに無機質な機械音が響いた。
『使役に成功しました。カニバ・ラッドが使役モンスターになります』
「うお。ビックリした」
唐突に響いた声に驚きつつも、なにか自分に変化がないかを調べてみる。
俺に鑑定の魔眼を掛けてみると、一部分が変化しているのが分かった。
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本名:ケルニス
年齢:5歳
Lv.16
〔能力値〕
魔力 3.023/3.123
攻撃 1.010 (+1)
魔攻 1.100
防御 800
魔防 800
速度 456
《獲得魂技》
【魔王Lv.5】
【使役Lv.1(+1)】
【空間魔法Lv1】
【魔眼Lv.1】
【黒魔法Lv.1】
《加護》
【魔神の加護】
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魂技使役の欄に+1の表記が、能力値の攻撃の欄にも+1の表記が増えていた。
これは、、、使役するほど能力値が増えるのか? 一体で止めるつもりだったが……よし。全員使役しよう。
ネズミたちに向き直ると、次々とネズミたちに使役を掛けていく。
『使役に成功しました。カニバ・ラッドが使役モンスターになります』
『使役に成功しました。カニバ・ラッドが使役モンスターになります』
『使役に成功しました。カニバ・ラッドが使役モンスターになります』
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・
・
『使役に成功しました。カニバ・ラッドが使役モンスターになります』
多いな。全部でいくつだこれ。
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本名:ケルニス
年齢:5歳
Lv.16
〔能力値〕
魔力 3.023/3.123
攻撃 1.074 (+65)
魔攻 1.100
防御 800
魔防 800
速度 456
《獲得魂技》
【魔王Lv.5】
【使役Lv.1(+65)】
【空間魔法Lv1】
【魔眼Lv.1】
【黒魔法Lv.1】
《加護》
【魔神の加護】
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65。マジか。六体の死体をだいたい11体くらいで運ぶのか。こんな小さいのに。
『条件を満たしました。魂技【使役】のレベルが上がりました』
お。レベル上がった。早かったな。さてさて。どんな力が解放されたのか。
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【使役Lv.2】五感共有
使役モンスターと五感を共有させることが出来る。また、思考を共有させることができ、遠距離で念話をすることが出来る。
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思考って五感に入るのか……? まあ、いいか。便利であることには変わらない。
五感を共有させるってのは、触覚、味覚、聴覚、視覚、触覚の五つで良いのか? ますます思考が五感に入るかが分からん。
「……チュ?」
あ、目が覚めた。
起きたばかりのネズミは辺りをキョロキョロとするが、俺を見るなり、まるで王様を前にしたかのように勢いよく跪いた。
「うお、なんだ?」
「アナ、タ、サマ。アル、、ジ」
「しゃ、喋った!?」
俺はネズミに異変が起きたのではと考え、ネズミに鑑定の魔眼を再度掛けた。
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種族名:カニバ・ラッド
Lv.6
主人:ケルニス
《能力値》
魔力 106/106
攻撃 141
魔攻 23
防御 53
魔防 19
速度 107
《技能》
〔武〕
【噛みつきLv.1】
〔技〕
【悪食Lv.2】【補食Lv.2】
《加護》
【魔王の加護】
《備考》
別名、掃除屋ネズミ。人を襲うことは滅多にない人食いネズミ。基本は住みかへと死体を持ち帰り食べる。個体ごとは弱いが、それ故に集団で行動する。また、人を食べるためなのか体内には人間に有害な病原菌が多くある。
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ま、魔王の加護? なんだそれ?
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【魔王の加護】
《効果》
【知性付与】
《備考》
魔王の配下に加わると得られる加護。今はまだ微弱だが、力が強くなるにつれて加護のレベルが変わってくる。
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こんなものがあったのか……【知能付与】か。それで喋れるようになったのか。だが、口の筋肉とかはどうなんだ? 知能を与えられていきなり喋れるって……いや、深く考えるのはやめておこう。
「あー、俺の言葉は理解しているか?」
「ハ、、イ。ワカリ、、マス」
「よし。なら、起きてきたネズミたちを纏めてくれ。お前はコイツらのリーダーだ」
「! ワカリ、マシタ! デシタラ、、ナマエ!」
おおう。いきなりテンション上がったな。
だが、名前か。正直、ネーミングセンスに自信はない。以前、友達と一緒にやっていたゲームの犬型のキャラに付けた名前はドッグ次郎だった。一郎がいないとツッコまれた。懐かしい記憶だ。
まあ、それはいい。うぅむ。なんと付けるか……。
「あー……ラット将軍、とか?」
「ラット、ショウグン? ショウグン!」
やべぇ、なんか罪悪感が……。
ま、まあ、喜んでいるならいいか。
やがて起きてきたネズミたちをラット将軍は纏め始めた。始めこそ納得のいっていないネズミたちであったが、何かを話した後に渋々と集団の中に入っていった。
「集まったが……大丈夫だったのか?」
「モンダイ、アリマセン」
「そうか?」
まあ、ならいいんだが。
俺は大勢のネズミたちを見渡す。マジで多いなコイツら。コイツら全員俺の配下なのか。
「あー、始めまして。お前らの主のケルニスだ。基本はコイツに指示を出す。それの指示に従ってくれ」
「「チュー」」
ネズミたちは一斉に手を上げた。こうして見ていると、段々とかわいく見えてくるから不思議だ。
「よし。じゃあ散ってくれ。用事があればまた呼び出すからな」
「「チュー!」」
とだけ鳴き、ネズミたちは死体を運んで何処かへと走り去った。
……ネズミに用ってなんなんだろうか。
* * *
さてさて。これからどうしようか。森の中ならともかく、ここは町の中だ。マジレスするなら金だろう。神様への事前質問で金銭感覚や通貨などは把握している。早速金策へと移りたいのだか、どうすれば金が得られるだろうか。
俺は考えながら路地を進んで行く。
そうして考え付いた結論は、現地のことは現地の人に聞く。という結論だ。まあ、無難だろう。
まあ、そのお話が物理にならないことを祈るばかりだが。
* * *
どうしてこうなった。俺は切実に叫びたい。
今俺の目の前には、魂技【黒魔法Lv.1】の効果である黒縄で縛られたボロボロの女の子が気絶している。鑑定の魔眼を使うとその子の年齢は六歳。完全に事案である。いや、コイツのが年上だけども。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。ブックマーク登録や評価、感想をいただけるとモチベが爆上がりします。また、「ここおかしくない?」、「ストーリー矛盾してない?」ということがありましたら感想で指摘していただければ幸いです。




