第725話~ドワーフの国の巨大地下墳墓 最終エリアその5 レグルスの最後の悪あがきを粉砕せよ!~
俺の魔法で起こった業火に包まれ、地に伏せ動かなくなったレグルス。
勝っただろうと内心で思いつつも、油断せず慎重に近づくと、レグルスに動きがあった。
俺の魔法の炎の勢いが少し落ちたところで。
「ガルルルルル」
と、雄たけびを上げて立ち上がり、その身を包んでいた炎を吹き飛ばしたのだ。
こいつ、あれだけの攻撃を食らってもまだ立ち上がれるのか。『世界の知識』に書いてあった通り、本当にタフな奴だ。というか、慎重に近づいて良かった。さもなければ、レグルスが吹き飛ばした俺の魔法が俺に当たっていたとこだった。
レグルスが立ち上がったのを見て、そのタフさに感心しつつも、俺は自分の判断の正しさを良かったと思うのであった。
ただ立ち上がりはしたもののレグルスは全身傷と火傷だらけだ。
それに体の軸もフラフラとしていて、何とか立っているという感じだった。
この分ならこいつもあと少しで倒せそうだ。
ただそう思ったのも束の間。
「コウナッタラ、オクノテダ。『獅子の咆哮』」
なんと、ここにきてレグルスは奥の手を使って来たのだった。
★★★
『獅子の咆哮』。
危機に瀕したレグルウがそんな名前の奥の手を使って来た。
『世界の知識』には未記載の技だったので、どんな技なのか正体不明であった技だが、その効果はすぐに判明した。
『獅子の咆哮』を使うなり、レグルスはその身にまとう闇のオーラを増幅させたのだ。
さらにいえば。
「グルルルル」
闇のオーラを増幅させたレグルスはそう叫びながら、物凄い速度で俺に突進してきた。
突進してくるレグルスの目を見ると、その目に先程までの光はなく、俺を刺すように見つめる視線だけがあった。
そこから察するに、レグルスの奴の意識はどこかに飛び、俺だけを狙っているようだった。
どうやらこの『獅子の咆哮』という技は、闇のオーラを増す代わりに意識をなくし、対象の獲物だけを攻撃するという技らしかった。
そして、レグルスはその推測の正しさを裏付けるかのように俺だけに攻撃を仕掛けてきた。
「『闇の閃光』」
先程のように『闇の閃光を放ち、どうやら意識はなくても闇の力を使った技は使えるようだった、俺の事をけん制しながら近づいて来て。
「グガアアア」
俺に爪と牙で襲い掛かって来た。
闇のオーラが増幅している分、レグルスはとても強くなっており。
「チッ。攻撃の威力も上がって、手数も多くなっていやがる。これなら先程レグルスと分身体二体を俺一人で相手にした時の方がましなくらいだ」
と、俺がそんな感想を漏らすくらいには激しい攻撃を仕掛けてきたのだった。
それでも何とか対抗できて吐いたものの戦況は俺の方に不利だ。
なぜならば。
「先程の一撃で大量の魔力と体力を使ってしまったからな。このままでは俺の魔力と体力が先に尽きそうだ」
と、俺の魔力と体力が枯渇して来ていたからだ。
さて、どうすべきか。
俺が対応に苦慮していると、突然。
「ホルスト様。今から拙者が加勢に行きますぞ!」
と、心の中に声が聞こえてきた。
慌てて俺が周囲を見渡すと。
「ネズ吉が俺の方に走ってきているな」
ネズ吉が俺に加勢すべく走って近づいて来ていた。
★★★
心の中でネズ吉に話しかけられた俺は、心の中でネズ吉に返事をする。
「ネズ吉、そっちはもういいのか?」
「はい。こちらは大分神聖同盟の連中の数を減らすことに成功し、拙者の眷属だけで残りをせん滅できるところまで来ました。ですからエリカ様の指示で、ヴィクトリア様がエリカ様たちの加勢に行きレグルスの眷属の相手をし、拙者がホルスト様に加勢することになりました」
「なるほど、わかった」
「それで、そちらの戦況はどのような感じですか?」
「結構まずいかもしれない。実はレグルスをかなり追い詰めたんだが、追い詰められたレグルスの奴、『獅子の咆哮』とかいう技を使って来たんだ。そうしたらレグルスの闇のオーラ量が一気に上がったんだ。その代わりレグルスは意識を手放し、完全に俺だけを狙うようになったんだ。闇のオーラが増えたレグルスは戦闘能力が向上していて、かなり対応に苦慮しているんだ」
「なるほど。確かにここから見るだけでもレグルスの闇の力は増えているようですな。それに目に意志が感じられませんから意識がないのも確かでしょう。ただ拙者の感触では、他にも何か変化がある感じなのでちょっと見てみましょう」
そこまで言うとネズ吉は一旦黙り込んだ。
そして、十秒ほどで調べ終わったのだろう、再び話しかけてきた。
「拙者の探知能力を使って調べてみたところ分かりました。レグルスの奴が闇の力を増すために払った代償は意識を手放すことだけではないようです。どうやらレグルスの奴、生命力も弱くなり、攻撃力が増した代わりに防御能力が大分落ちているようです」
「そこまでわかるのか?」
「はい。何せ我がネズミ族は探知能力に優れた種族ですので。それはともかく、レグルスは闇の力を上げるために意識を手放し、生命力を削り、防御力を落とすという無理をしています。あと少し我慢すればレグルスは自滅するでしょう」
「そうか。でも、俺も大分体力が限界なんだよな。レグルスが力尽きるまで持つかな?」
「でしたら、レグルスに致命的な一撃を与えて倒してしまいましょう。防御能力が下がっている今のレグルスなら強力な一撃を与えれば倒すことができるでしょう。拙者が能力を駆使してレグルスに隙を作りますので、ホルスト様はそれまで耐えて、とどめの一撃を出す力を溜めて置いてください」
「了解だ!」
こうして俺とネズ吉が協力してレグルスに攻撃をすることになったのだった。
★★★
俺と協力してレグルスを倒すことになったネズ吉は早速行動を開始した。
「『超隠蔽』」
と、唱えると同時にネズ吉の姿が消えてなくなる。
姿だけでなくネズ吉が発する音や気配、生命力や魔力などありとあらゆるネズ吉の存在を示すものを感じられなくなった。
後で聞いた話によると、これはネズ吉のとっておきの技でありとあらゆる探知手段から逃れることができるのだそうだ。
そして、俺はネズ吉が姿を消してしまった意図をすぐに見抜いた。
つまりは姿を消した上で、機会をみてレグルスに奇襲攻撃して隙を作るつもりなんだな。
そう考えた俺はネズ吉が攻撃しやすいように行動することにする。
「おりゃああ」
気合を入れてレグルスの攻撃をいなしつつ、ネズ吉がレグルスに一撃を加えやすいように戦場を部屋の端っこの方へと徐々に移動させる。
その上でとどめの一撃を出すため魔力や神気を蓄えておく。
その内に戦場はどんどんと部屋の隅に移動し、外から見る分には俺がレグルスに追い詰められているように見えるくらいに、戦闘領域が狭まって来た。
と、ここでネズ吉の声が俺の心の中に聞こえてきた。
「ホルスト様。吾輩の意図を理解していただき有利な状況を作っていただきありがとうございます。それでは行きますぞ!『げっ歯族の一撃』」
その言葉と共にレグルスの左後輩にネズ吉が現れ、その大きな前歯でレグルスの後ろ足を切り裂く。
奇襲攻撃されたレグルスはなすすべもなく。
「ウガアアアア」
そう絶叫をあげながら、ちぎれかけの後ろ足を抱えてその場に立ち尽くす。
「それでは後はお願いします」
レグルスの動きが止まったのを確認したネズ吉が船上を離脱したのを確認した俺はすぐに行動を確認する。
「行くぞ!」
俺は残る力の全てを振り絞ってレグルスの最後の攻撃を仕掛けるのだった。




