空飛ぶバスみたいなエビフライですの!
日差しに目が眩み、私は自分が地面に倒れていることに気が付いた。
抜けるような青空を横切っていくのは桜の花びらだろうか。
頭が痛い。今日は確か部活勧誘期間の初日で、サーカス部に見学に来てくれた新入生がエビゾウに触って――
「そうでしたの!わたくしのエビゾウがなんてことを!」
状況を思い出した私は、新入生の姿を探す。
ほどなく近くで横たわった彼女を見つけた。……よかった。大きな外傷はないようだ。
「大丈夫ですの!?お怪我はありませんこと?!」
声をかけると、すぐ彼女は目を覚ました。
「太陽が…二つ……エビフライ……」
彼女は何かうわごとを言っている。頭を打ったのでないといいけれど。私は彼女の目の前に手をかざして問いかける。
「しっかりしてくださいまし。わたくしが指を何本立てているかお分かりかしら?」
「1本…です……」
眠そうな目で彼女は答える。少々意識は朦朧としているようだが、目を怪我したわけではなさそうだ。
「そうですのよ。太陽はひとつしかありませんし、空に舞っているのはきっと桜の花びらですわ」
「んぅ……先輩、でもあそこに飛んでいるのはエビフライさんですよ?」
「まあ!面白い冗談ですわね。貴方きっとサーカス部に向いてますわ」
寝ぼけて口ずさんだうわごとを冗談でごまかそうとするかわいらしい後輩の姿に、思わず頬が緩む。
微笑みかけた私の顔を見た彼女が不思議そうな目のまま空を指さすので、私は後輩の冗談につきあってあげようかしらと顔を上げた。
私の目に映ったのは、燦燦と輝く二つの太陽と、その間を舞い踊るバスのような大きさの空飛ぶエビフライだった。