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炭焼きは丸一日仕事でした…

街づくりパートにひと段落つけば、また冒険パートに戻りますので、しばらくお付き合いください!!


最初の一軒目のハウスが完成した後、コボルト・スミスを中心とした垂れ耳コボルトが自分たちだけで広場に家を建てる試みを行っている。


「ワゥウワァゥッ、グルゥオオォンッ! (アックスの兄者ッ、打ち込んでくれッ!)」

「ワォア、ガルゥッ! (じゃあ、いくよぅ!)」


適度な位置に軽く刺した杭をスミスが横から手で支え、アックスが平らな大石をその筋骨隆々な腕で軽々と持ち上げて打ち下ろす!


ガッ ガッ ガッ


元々、垂れ耳の仲間たちはナックルを打ち倒したアックスに一目を置いているようだが…… しかし、奴はいつの間に“兄者”になったんだろう?


別の場所に目を向けると、高さを揃えて切断した木の枝を妹が器用に石斧で落としていた。それを受け取った垂れ耳のコボルトたちが蔦で木材同士を縛り、家の骨組みを作る。


所々でグリマーの手直しが入りながらも、ほぼ群れの連中だけでハウスを作ることに成功しつつある。


(…… この調子なら、集落に家を建てることはできそうだな)


因みに、朝から実家の巣穴に顔を出して、

マザーに今度建てる家に移るように勧めたら……


“クルァゥ ガゥル ウォアァアン、グォルァ グォァン?

(母さんよりも群れを優先して考えなさい、新しい子たちも加わったのよ?)”


と、やんわり諭されてしまった。確かに、新参ということもあって積極的に働いているのは垂れ耳たちだからな。マザーの言う通り、まだ巣穴を持たない彼らに優先して家の居住権を与えよう。


そして、その日の夕方には猫人職人ズの建てた家よりも少し不格好であるが、スミスたちが建てた家もできあがる。


「ウォオオン、グルゥ グァンォ クァアオォ……

(大したもんだ、俺は巣穴の方が落ち着くがな……)」


いつもの如く気配を消して、俺の隣にやってきたブレイザーが顎に手を当てながら呟く。そういや、こいつ昨日からの作業に一切関わってなかったな。


“石橋を叩き壊して渡らない”性格で保守派のブレイザーとしては、生活上の変化が何某かのリスクを伴うと考えて、内心で反対しているのかもしれない…… 


そこで本日の作業は終了となり、次の日は製鉄に取り組んでいく。



「やっと俺の本職に戻れるぜ……」

「まぁ、まぁ、今度は私たちが補助をするからさ」


始める前からどこか疲れているバラックをグリマーが励ます。


「と、言っても原始的なレン炉しか作れないし、先ずは炭焼きからだけどよ!」

「先ずは穴掘りだね、そこは彼らに任せておけば大丈夫だろう」


“どれくらいの大きさでどのくらいの深さだ?”


俺は石筆で地面に文字を刻む。


「長方形で、風上を“焚口”に風下に“煙突”を作るんだ。煙突は壁材の泥が残ってるだろ? 乾燥してるから多少、加水して使おう」


大体の位置を決めた後、集落の外れに石斧や木杭で今日もコボルトたちが楽しげに穴を掘る。深く掘りすぎて埋め戻したのはご愛嬌だ……


その長方形の穴に焚口と煙突を作って底に枕木を入れ、アックスが暇を見つけては作っている薪を寝かせて穴の中に敷き詰めていく。


「なるべく隙間なく敷き詰めてくれよ、ジョセフさん」

「伏せ焼きぐらいしたことあるから、大丈夫だよ」


さらに隙間を枯草で充填して、土をかけて埋めるところで群れの仲間たちのテンションが唐突に上がる。


「「ワゥッ!グルン!? (えッ!埋めるの!?)」」

「クァ、ガルゥッ!! (じゃ、これもッ!!)」


おもむろに腰袋からキラキラした石を取り出した一匹がそれを埋めようとする。

…… 琥珀じゃねえか、どこで拾ったんだコイツ。


「グルゥガルォ、ガルァオゥ? (炭焼きの際、燃え尽きるぞ?)」

「キュウッ!?」


琥珀の別名は燃える石だからな……

こいつの宝物が悲しいことになる前に止めてやった。


そんなこともあったが作業は恙なく進み、炭材の薪を埋め、土をさらに盛って窯を作り上げる。


「よし、焚口に火を入れて風を送るぜ」


「クァン、ウォアァン (妹よ、火を頼む)」

「ワゥ、キュアン (ん、兄ちゃん)」


昨日と同じく、妹が両手の間にポッと小さな狐火を灯して、焚口に押し込んである枯草に火を点ける。そこに葉っぱと木枝で作った団扇でバラックが風を送り、火勢を強めた。


すると地面から煙が立ち上ってくる。


「すまないグリマーさん、隙間を埋めてもらえるか?」

「あぁ、しっかり密封しないと炭じゃなく灰になるからね」


その作業を俺たちも手伝う。


「さてと、もういいかな?」


火入れから2~3時間後、団扇を動かす手をバラックが止めても自然と土窯の煙突から煙が立つようになった。


(ちゃんと中で燃えているな……)


炭は色々と使えそうなので、しっかりと観察して覚えておくことにしよう…… スミスが齧りつくように凝視しているから、その必要は無いかもしれないが。


「で、次は焚口を少しだけ残して埋めるッ!後は半日以上、根気強く薪が完全炭化して煙が出なくなるまで見張りだ。俺たちの誰か1人と犬人の1匹の組で交代制にしよう。」


「ワォン (分かった)」


俺は返答と共に首を縦に振る。


「ウァォ クゥア、ウァンッ (先ずはランサー、頼むッ)」

「グルゥ? ウォアァオアン (私? 別にいいけどね)」


その後、窯の状態を確認しつつ、煙の漏れを見つけてはそこを補修し、煙が薄青くなって出が悪くなった頃合いで焚口と煙突を塞いで空気を断つ。


完全密封し、消火させてから土中にて数時間ほど冷ます。

その炭を取り出した時には丸一日が経過していた。


炭焼きって、こんなに時間のかかるものだったんだな……

読んでくださる皆様には本当に感謝です!

拙い作品ではありますが、頑張って書いて行こうという励みになります!!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 数日前から読者になりました。 生活描写大丈夫です。 なるべくゆっくりと読み進めています。 なろう小説で転スラ以来のマイベストになりそうです。 ありがとうございます感謝合掌… [気になる点]…
[気になる点] >適度な位置に軽く刺した杭をスミスが横から手で支え、アックスが平らな大石をその筋骨隆々な腕で軽々と持ち上げて打ち下ろす【!】 【ガッ ガッ ガッ】 上記の抜粋のように、やたらと地の…
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