そこにいるあなたは誰ですか?
そして冒頭の話に戻る。
彼女が指を指した先にある『生徒会長』と書いてある席にはメガネの男子生徒が座っている。
入学したばかりの彼女は生徒会長のことを全く知らなかったが、生徒会長と書かれた席に座っていればその人が会長であると思ったし、普通はそうである。
「すいません、今会長は席を外してますので」
しかし、彼から帰ってきた答えはその普通とは違うものだった。
「あ、そうですか、でしたら会長の席にいるあなたは誰ですか?」
「ごもっともな質問です。自分は生徒会副会長の角田秋大と言います。1年生ですか、入学おめでとうございます」
「あ、そうなんですか。会長はどちらに?」
「会長は多忙ですから今いないです。要件がおありでしたら代わりに対応しますので」
「えーと、会長と生徒会長の座を賭けて戦いたいんですが」
あまりにも対応が事務的すぎて、聡美の話し方もやけに固くなる。
秋大はパソコンをしばらく見つめて何かチェックする。
「はいはい、ただいま12人待ちになりますので2ヶ月ほどお待ちいただくことになりますので」
「あ、はい、分かりました。失礼します」
そう言うと聡美は生徒会室を後にする。
「いやいやいや、おかしいでしょ。後にしてる場合じゃないでしょ」
後にしてなかった。
「秋ちゃん、そこにやっぱり座ってると紛らわしいんじゃない?」
「いいんだよ、会長は忙しくて一般的な会長の仕事は全部自分がやってるし」
「でもさっきの人みたいに間違えるかもしれないじゃない」
「それは間違える方が悪い。自分の学校の生徒会長の顔も知らずに話しかけてくるとかさっきの子はただの脳筋としか思えないよ」
「もしもーし、さっきの子はここにいまーす」
聡美が、帰ったと思い世間話、しかも当人の悪口までいい始めるから彼女は止めた。
「あ、まだいたのか?」
「何か不明点でもあったんじゃない?」
彼女は言いたいことがたくさんあった。秋大の口調が雑だとか、本人に悪口を聞かれてるのに冷静すぎるとかたくさんあった。そんなにはなかった。
「本人に悪口を聞かれたんだから謝りなさいよ!」
「えー」
「何でかな、誰も悪くないじゃない」
「え、これ説明必要なの?」
部屋にいる全員が困惑する。
「だって事実を言っただけだよ」
「事実でも悪口は悪口だし、事実でもないわよ!」
「え、脳筋じゃないの? なのにあんなズカズカと生徒会室に入ってきて秋ちゃんを指さしたの? 脳筋じゃないとしたら常識ないんじゃない?」
「ちょっと待って。副会長も大概だけどあなたも可愛らしい顔してなかなか言うのね。あなたは誰ですか? 書記の席にいるけど本物?」
「僕は、豊本明治。本物の書記。めいじって書いてあきはるって読むけどめいじがあだ名で呼ばれてるんだ。君もそう呼んでいいんじゃないかな」
「あきはる? あなたは男なの?」
あなたは男ですか? 女ですか?




