第9話 罠師についての研究
チート化開始します
「やっとキツイ訓練が終わった・・・」
システィアから剣の特訓を受け始めてから二週間が経ち、ようやく免許皆伝を得ることができた。何度もズタボロになったので、剣を持ったシスティアがトラウマになったりしたが、もうそれは終わり。これからは痛い思いをせずに済む罠師についての研究である。こちらは光明が見えないが。
「大丈夫?水瀬君」
もうすぐお昼だなぁ、などと考えていると、背後から声がかかった。
「ん?桐生か。どうかしたのか?」
みんな大好き桐生さんだ。美少女は目の保養になるなぁ。システィアも美人だか、あっちはトラウマの対象だからなぁ・・・。
「訓練が終わったみたいだから、話したいなと思って。凄く辛そうだったけど、大丈夫?」
おお、桐生さん超健気。ヤバイ惚れちゃいそう。
「大丈夫だよ。システィアはヒールを使えるからな」
そう言うと、なぜか桐生が目を細めた。
「システィアさんのこと名前で呼ぶのに、私は苗字なんだ・・・」
「いや、システィアは平民だから苗字無いから。あと桐生も名前で呼んで欲しいなら名前で呼ぶから」
桐生が笑顔になった。
「本当!?嬉しいな!」
「お、おう」
普段静かな人が大声出すと驚くな。
「じゃあ.私のこと呼んでみてくれる?」
「あ、ああ。雪菜?」
凄い笑顔になった。雪菜がここまで笑顔になるのは初めて見る。・・・わけでもないか。
「ありがとう!じゃあ私、先にご飯食べに行ってるから。待ってるね!」
そう言って、雪菜が小走りで離れていった。
「・・・よし、図書館行くか」
悪いな雪菜。嫌われ者は、昼食時のような誰もいない時しか施設を利用出来ないんだよ。
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「よし、じゃあ研究するか」
図書館に忍び入り、俺に必要そうな本を異世界人の誰もが使える便利な魔法、『アイテムボックス』に入れてパクってきたあと、俺は自室で必要な情報をピックアップしていた。メシ抜いてまで勉強とか俺超健気。ヤバイ自分に惚れちゃいそう。手に入れた情報は、
・スキルを使用すると、経験値を得ることができる。
・スキルはレベルアップにより強化される。
・スキルは既定のレベルで覚える
・罠師は世界的に見ても絶対数が少ない。
・罠師というか非戦闘職の者は大体10レベ前後でその一生を終えており、覚えられるスキルのほとんどが不明で、研究もされていない。特に罠師のような使えない天職はそれが顕著である。ちなみに戦闘職の者は70レベ前後で死ぬ。
・罠師は5レベで『罠高速回収』を覚える。
・罠師が仕掛けた罠で敵が死亡した場合、それは罠師の経験値となる。
・100レベになると、天職が進化することがある。
といった感じだ。
それで思ったことがある。
「・・・あれ?これいけるんじゃね?」
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「システィアさーん」
「どうしたの?」
「いやーちょっと聞きたいんですけどー。この近くのダンジョンで、敵がもの凄く強くて鼻が良くて頭が悪くていっぱい出てくるとこっててないですかねー」
「ここから西に30キロ離れたところにそんなのがあるけど・・・。もしかして行くつもり?なら止めなさい。死ぬわよ」
「大丈夫っすよーどうせ戦わないんでー」
「はあ?じゃあ何するつもり?」
「いやーちょっとある物を仕掛けておこうと思いましてー」
「ふーんならいいけど。でも危なくなったら、いや危なくなりそうならすぐ逃げなさいよ?私は行けないから」
「大丈夫っすよー。じゃあ行ってきまーす」
「いってらっしゃい。そうだ、アキラ」
「はい?」
「その敬語キモい」
「ごめんなさい」
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次の日の朝。
「危うく死にかけた・・・!」
「だから危なくなったら逃げなさいって言ったでしょ!」
ダンジョンから生還出来て良かった。何回も死にかけた。生きるって、それだけで素晴らしいことだね。
「城から色々と盗んだマジックアイテム全部使っちゃったしなぁ」
「何をしてるの!?それバレたら重罪よ!?」
テンション高いなシスティア。なんか良いことあったのかな?
「大丈夫だ。置いてあったとこの警備超ザルだったから絶対バレてない。疑われるかもしれないが」
「駄目じゃないの!捕まる時は一人で捕まりなさいよ!?」
「安心しろよ。もしそうなったら、警備の出し抜き方はシスティアに教えてもらったって言うからさ」
「このクズ!本当にクズ!」
あはは。愉快愉快。
「まあ実際大丈夫だぞ?証拠なんてないんだし」
一応バレないように最善を尽くしたつもりだ。大丈夫だと思う。多分。
「はぁ、もういいわ・・・。それで?わざわざ死にかけてまで何しに行ってきたの?」
「悪いけどそれは秘密だな」
「なんでよ」
まあ、幾つか理由があるんだが・・・
「まだ結果が出てないからな。それまでお楽しみってことで」
「ふーん。まあいいけど。それは強くなるってこと?」
「ああ、そうだよ」
今も強くなってるしな。現在進行形で。
「そうだシスティア。魔法を教えてくれないか?」
出来れば使えるようにしておきたい。
「教えるだけなら出来るけど、魔法職以外が魔法を覚えるのは大変よ?MPだって少ないし」
「それは大丈夫だ。俺は頭いいからな。MPもなんとかなるし」
俺は学校で、あまり勉強しなくてもテストでトップ5に入れるぐらいには頭がいい。魔法を覚えることぐらい出来るはずだ。魔法覚えるのがどのくらい難しいのか知らないけど。
「そう?なら教えてあげるわ」
よし、これで準備は出来た。後はもう真っ直ぐ努力するだけだ。
「よし、待ってろよバカども。今に見返してやるからな・・・!」
こうして半年が経ち、クラス全員でダンジョンに行くことが決まった。
次回無双です