第72話 水瀬明、苦戦する
遅くなって申し訳ありません。何とか漸く暇になったので、頑張って書きました。久し振りの執筆なのでおかしい部分があると思いますが、文のおかしい所は気にしないでください。ストーリーのおかしい所は指摘してください。直します。
取り敢えず、いくつか試してみるか。
バックステップで距離を取り、俺とロボットの間に睡眠地雷をいくつか仕掛ける。
ロボットは睡眠地雷を踏み抜き、睡眠ガスを大量に浴びるが、
「駄目か」
何の影響も受けた様子が無く、そのままこちらに跳んでくる。
目の前に『見えない麻痺糸』を設置する。が、当然のように引きちぎり、そのまま爪を振るってくる。
アルストを使って受け流し、再びバックステップで距離を取る。相手の動きが直線的で、見分けやすくて助かった。最近ろくに剣の訓練をしていない俺でも何とか捌くことができる。
だが、ここで一つ困ったことがある。
手札が無くなった。
・・・今まで俺は、大体の敵を地雷を使って一撃で倒して来た。だから、全くと言って良いほど攻撃手段を増やそうとしてこなかった。地雷一つで十分だったから。
俺にはもうこれ以上攻撃手段が無い。魔法は効かなかったし、睡眠地雷も効かないし、見えない麻痺糸もあっさり千切られたし、俺の持つ攻撃手段の中で最高の攻撃力を持つ地雷も、それなりにダメージが通ったもののあっさり再生された。これで俺が持つ攻撃手段は使い切ってしまった。
どうしよう。ちょっと本気でどうしたら良いか分からない。
でも、勝つ方法はあるはずなんだ。俺のスキル、『逃走本能』は、何をしても何があっても絶対に勝てない場合には自動で発動し、逃げるように促してくる。
今、逃走本能は発動していない。だから、勝つ方法はあるということだ。
「・・・っ!」
攻撃を受け流すのに失敗し、少し手が痺れてしまった。すぐに治りそうだから、まだ大丈夫だが・・・
どうするか。手詰まりになったこの状況、一体どうするか。
唯一、効果があったのは地雷のみ。となると地雷を仕掛け続けるしかない、か?・・・そうだな、あの再生能力も、何度も使えるとは思えない。使えるならチートにも程がある。多分、回数か何か制限があるはずだ。
よし、何か活路を見出すことを祈りながら、地雷を仕掛け続けよう。
再びバックステップ、そして地雷を仕掛ける。そしてロボットは馬鹿正直に突っ込んで来て、地雷を踏み抜く。
あいつに学習機能が無かったのはラッキーだな。このやり方で暫くはやっていけそうだ。
爆風と土煙が消えると、もう既に再生を終えようとしていた。少なくとも足は飛ばしたと思うんだけどな・・・
地雷を仕掛け続けるといっても、全く同じことの繰り返しではつまらない。火力でも上げてみるか?か?だが、これ以上の火力の地雷なんて無い・・・
いや、スキルで作った地雷は、創った時の気分や調子やその場のノリで威力が変わってくる。今までで最高の思いを込めて地雷を創れば、きっと最高の威力を持った地雷を創れるはずだ。
よし、いくぞ・・・
出来る出来る俺は出来る間違いなく出来るきっと出来る特に根拠とか理由とかそういうのは全く無いけど多分出来る出来るはず出来ないはずない最強の地雷を俺は絶対に創れる!!!!
・・・よし、少なくとも今までのよりはずっとマシなものが出来た気がする。
早速更に下がり、新しく創った地雷とその周りに既存の地雷を仕掛ける。動き始めたロボットは新しく創ったものではないが地雷を踏み抜き、誘爆した複数の地雷の爆風をその身に浴びる。
さて、どうかな?これで倒せるとまでは思っていないが、何らかの変化があると喜ばしい。
爆煙が晴れると、ロボットは、
「・・・っ!?何だ、アレは・・・」
ロボットの足は完全に吹き飛び、胴体もグチャグチャに弾けていた。だが驚くのは、そこに肉があったことだ。
足を飛ばした時には、何やらよく分からない配線の様なものがいくつも見えていて、いかにもロボットだなぁと思うような構造をしていた。魔物なのに配線ってどういうことなの、と思うかもしれないが気にしてはいけない。ここは異世界だ。多少の意味不明さはスルーした方が良い。第一意味不明さで言ったらゴーレムの方がよほど意味不明だし。あれ素材は百パーセントただの石だぞ?脳とかそういうのは一切無くて、完全に石の塊だぞ?それなのに動くんだ、本当に意味不明である。ゴーレムに比べれば、あのロボットの方がまだマシだと思う。
話を戻そう。とにかく、足には配線の様なものがあるだけだったロボットだが、胴体には肉が付いていた。だが、ただの肉じゃない。その肉の中にはやはり配線が巡らされている。何だかよく分からない構造だな。まあ魔物とはそういうものだ気にしてはいけない。
ロボットは既に再生を開始し、胴体は完治し足も程なくして元に戻りそうだ。
火力を上げてみた結果、あっさり治されてしまったとはいえそれなりに損害を与えられて良かった。火力をこれ以上上げるのは難しいだろうが、数を増やせば更に大きなダメージを与えることが出来るだろう。損傷が甚大につき再生不可能、何てことになるかもしれない。頑張ってまた高火力の地雷を作ろう。
よし・・・高火力の地雷を俺は沢山創れるさっき出来たんだからまた創れるはず一個作れたんだから複数の地雷を創れるに違いない間違いなく出来るやれる俺は創れるんだぁぁぁぁぁぁ!!!
・・・よし、先程と同程度の火力の地雷を六つ作れた。これを同時に、あのロボットに喰らわせてやろう。
ロボットも損傷を完治させ、また馬鹿正直に突っ込んできた。再び進路上に地雷を仕掛けて、ロボットは馬鹿なのでまた踏み抜いた。学習しないやつの相手は楽で良い。
火力の分、爆煙も多くて邪魔なので風を生むだけの魔法『ウインドフロー』を使い、煙を吹き飛ばす。煙が晴れると、身体の大部分が無くなったロボットの姿が見えた。
数を増やして正解だったな。なかなかの大ダメージだ・・・あ?何だあれ。
ロボットの身体をよく見てみると、消し飛んだ金属の外装と回路がめぐる肉体の中、胸の中央に、銀色に輝く石のようなものが見えた。・・・もしかしてあれ、あいつの核だったりしないか?あれを壊せば、再生しなくなる、みたいにならないか?
ものは試しだ、やってみよう。アルストを手にロボットに近づき、その銀色に輝く石を斬ろうとした。
斬ろうとしたら再生した肉と金属に阻まれた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛痛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」
痛い!物凄く痛い!手が痺れただけだけど本当に痛い!アルストを手から落としてしまう。
一応金属の外装と肉体の一部は斬れた様だが、肝心の核と思われるものまでは届かなかった。
しかし困った事に、利き手が痺れてしまった。これでは暫くの間斬り込むことが出来ない。勿論逆の左手は使えるが、これで左手も痺れてしまっては不味いため、迂闊に左手を使う訳にはいかない。
途中までは斬れたんだから、後少し頑張って左手で斬れよと思うかもしれないが、もう既にその傷は治ってしまっている。足と比べ、治るの早過ぎないか?あれか、核の近くだから治るのが早いとかそういう事か?だとしたら嬉しい。あれを破壊すればロボットを倒せるということだからな。
仕方ないので左手でアルストを取り、ロボットから距離を取る。
「ししょー、大丈夫ですかー?助けに行きましょうかー?」
キリナが呑気そうな声をかけてきた。そう言えばキリナ居たな。半分くらい忘れてた。
「大丈夫だ!何とか活路が見えそうだ!」
「活路って何ですか?」
知らないのかよ。
「後で説明する」
「分かりました。じゃあ、あいつを頑張って倒してくださいね!」
「ああ」
何でキリナはこんなに呑気そうなんだろか・・・。今死闘を繰り広げていると分かっているんだろうか。
まあキリナがアホの子なのは分かりきった事実なので、気にしない方針で行こう。
さて、ロボットが再生を終えようとしている。相変わらず突っ込んできるので地雷の餌食になってもらう。これは旧来の通常火力の地雷なので、足を吹っ飛ばすことくらいしか出来ないだろうが足止めは出来る。あのロボット、再生中は動かない様だから。
今の内にまた高火力の地雷を創ろう。・・・よし。出来る出来るやれるやれ〜省略〜
・・・よし、作れた。ロボットも再生を終えてまた馬鹿みたいに突っ込んでこようとしている。俺の利き手も痺れが治った、早速やろう。
進路上にあたらしく創った高火力の地雷を仕掛け、それをロボットはやはり踏み抜く。素早く『ウインドフロー』で煙を吹き飛ばし、急いでロボットに接近する。核だと思われるものは完全に露出している。阻むものは何も無い。アルストで斬り裂き、核だと思われるものを破壊する。
よし、これできっと、このロボットを倒せたはずだ。・・・が、
「アアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「うるさっ!?」
今まで一言しか発さなかったロボットが突然叫びたした。高過ぎるDEXの所為で耳も良くなっている俺にはもはや攻撃と言ってもいい。
「シャアッ!」
最後の足掻きなのか、その鋭い爪を顔目掛けて振るってくる。不味い、突然の事で動けない、躱せない。
これまでのことが、何故だか鮮明に思い出される。システィアと出会ったこと、また再び雪菜と仲良くなったこと、キリナと出会ったこと。そして、拓郎と仲良くなった時のこと。
これが走馬灯というやつなのか?身動き一つ取れないまま、爪の先が俺に向かってきてーーーーーーーそのまま普通に空振った。そしてそのまま動かなくなった。
・・・うん。足が吹っ飛ばされていて、倒れ込んでいるんだ。いくら長く鋭い爪でもそりゃ届かないよな。焦って損した。足を狙っていれば届いたんだろうが、顔だもんなぁ・・・。届くわけないよなぁ・・・
強くなってから初めて、ここまで俺を追い込んだ奴の最期がこれとは何だか悲しくなってくる。強かったんだけどなぁ・・・
・・・あ、そうだ。こいつ、『鑑定』してみるか。スキル『鑑定』。文字通り、対象を鑑定するスキルだ。物に対してはその名前とその簡単な説明を。人に対してはそのステータスを表すのに対し、魔物に対しては種族名しか表さないという謎スキルである。
今まで魔物に対しては、種族名が分かったところでどうしようもないので殆ど使ってこなかったが、こいつは初めて見るし、どんな名前なのか少し気になる。鑑定してみよう。
早速『鑑定』を使う。そして、現れてきた文字は・・・
<人間の死体>
「は?」
・・・いや待て。ちょっと待て、頼むから待って欲しい。人間の死体ってどういう事だ?こいつは魔物だろ?人間なわけ・・・
外装の金属の厚さを確認する。 ・・・五ミリ位か。アルストで、顔の金属だけを正確に斬り裂く。俺のDEXは、こんな器用な真似も可能にする。
無論手は痺れる。が、気にしてはいられない。裂けた金属を取るとそこには、
「人の顔、か・・・」
俺のスキルがおかしい訳じゃなかった。目の前には、人の顔が見えている。
「俺は、人を殺したのか?」
今まで地雷で足を吹っ飛ばしたり、半殺し程度ならした事はあるが、こうしてこの手で完全に息の根を止めたのは、初めてだ。
いやまあ、そのことに対して負い目はあまり無い。こんな世界だ、いつの日か人を殺す日が来てもおかしくは無いとは思っていた。が、こんな形で殺人を犯すとは思っていなかった。
「師匠やりましたね!大勝利ですよ!」
振り向くと、すぐ背後にキリナが立っていた。
「・・・ああ、やったぜ」
「はい!じゃあ、システィアのところに向かいましょう!魔物が沢山この街を襲っているらしいですから!」
「・・・そうだな、行くか」
気になることはある、がここで考えていても仕方が無い。システィアを助けに行こう。最も、もうパーレンダーティの大群は全滅している気がしないでもないが。
最後に人間の死体を一目見、その場を後にする。
・・・あれ、誰かが作ったのか?何の為に?分からないことだらけだ。
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「・・・アルファの破壊を確認。これより回収後、B班は本国に帰投する」
「了解。A班は引き続き、ターゲットの確保を続ける。水瀬明は恐らく感知系のスキルを有している。距離を取ることを忘れるな」
「了解」




