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第71話 水瀬明、劣勢

遅れてすみません。そして、多分次も投稿するの遅くなると思います。

最初に異変に気が付いたのは、天職が進化し、創造罠師になって二週間程が経った時のことだった。


創造罠師になってから、罠師であった時よりも一つレベルが上がった時のステータスの伸びが一段と良くなった。


俺自身の戦いの技術も上がったことで、スキルを使っていないシスティアと互角に戦えるようにまでなっていた。


そしてその日も、模擬戦でシスティアと斬り合いをしていた。無論、刃は潰してある。


互角に戦っていたが、いまいち攻め切れなかった俺が無理に力押しをしようと鍔迫り合いに持ち込んだものの、上手く流され隙を作られ、空いていた横腹を強く蹴られた。


いつものことである。いつものことだった。だが、その時俺に異変が起きていた。


痛い。とにかく痛い。信じられないくらい痛かった。身動きが取れなくなってしまうくらいに。


まあ、その時はシスティアがすぐに異変に気付き、治癒魔法を使ってくれてすぐ痛みは引いたのだが。


おかしなことだった。この世界に来てから、システィアから訓練で嫌という程『痛み』というものを味わされてきた。『痛み』には、慣れているはずだった。


確かに、システィアの攻撃は最初よりもずっと鋭く、強くなっている。だがその分、俺のステータスも上がっていて、『痛み』はそれほどじゃないはずだ。


調べた。何がおかしいのかを。そして気付いた。あるステータスが、信じられないくらい高くなっていることに。


DEX。あらゆる動作の正確さ、そして五感を司るステータス。五感の中には、当然触覚も入っている。


そして触覚を司るということは、『痛み』も司るということだ。


本来であれば、レベルを上げていけばDEXは高くなっていく。が、それと同時に、感覚を鈍くするVITやMDEFも高くなっていくから、痛みに苦しむなんてことはないはずだ。


だが、俺は違った。天職『罠師』。所謂生産職に分類されるこの天職は、DEXだけがその他のステータスに比べ以上に高くなってしまった。


だから俺は、痛みに弱い。それから更にレベルを上げた今となっては、軽く殴られる程度でも、小さな裂傷程度でも、激痛を感じてしまうくらいに。


無論、俺もこれを克服しようとした。時々誰もいない場所で、当時よく会いに来ていた拓郎や雪菜は勿論、システィアにも知らせず、針を片手に一人で痛みに慣れる為の訓練をした。


何度も何度も自分の身体に針を刺し、痛みに慣れようと努力した。


だが、これまでなんの効果も出ておらず、今もなおこの弱点は、俺の最大の壁として立ち塞がっている。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




・・・あ、危なかった


何とかギリギリで傷を治して、あいつの攻撃を避けることが出来た。まさか、『戦線離脱』を使わされるとは思っていなかったが・・・


・・・そういえばキリナは?


「おいキリナ!大丈夫か!」


キリナは、あのロボットのような奴に吹き飛ばされ、建物に突っ込んでいった。あの飛び方を見るに、かなりの怪我を負っていても不思議ではない。


「はい、大丈夫ですよー。ちょっと痛いですけど、平気です!」


そう言ってキリナは、崩れた建物の瓦礫の中から這い出て来た。


「大丈夫ってお前・・・その傷は・・・」


キリナは、体の各所から血を流していた。特に、頭から流れる血の量は、決して軽視していいような傷ではない。


「大丈夫ですよ!このくらいの傷、慣れてますから!」


「いや、慣れてるって・・・」


そんな重傷、普通慣れるようなものではないと思うが・・・。まあ、キリナのこれまでの生活を気にするのは後で良い。今は、あのロボットの相手をしなければ。


「『ヒール』『ヒール』『ヒール』『ヒール』『ヒール』」


治癒魔法を連続で使用し、キリナの傷を治す。一回の回復量は大したものではないが、数を重ねればそれなりの効果になる。


「傷が治りました!師匠、ありがとうございます!」


「・・・いや、寧ろ俺は謝るべきだ。悪い、俺がさっさとあいつを始末していれば、キリナに傷を負わせるようなことには・・・」


「もう、どうしたんですか師匠!いつもと雰囲気が違いますよ?」


ん、ああ・・・。まあ、今は緊急時だし、仕方ないな。


「気の所為だろ。取り敢えず、キリナは離れていてくれ。あいつは俺が殺す」


「大丈夫ですか?さっきは、やられてたみたいですけど・・・」


「安心しろ。もう油断はしない」


そうだ。一旦、キャラ作りは止める。今だけは、本気でやる。


「分かりました。じゃあ離れてますね。でも、もしやられそうになったら、助けに行きますから!」


「ああ、その時はよろしく頼む」


キリナは少し離れた建物の上に飛び上がった。随分身軽だな。


「さて・・・」


何故だか動きを止めているロボット。・・・不意打ちでもするか?だが、俺の罠は相手が動いて居なければ使えないからな・・・。なら、


「『フレイム』」


久しぶりに使う、攻撃魔法。俺は基礎的な魔法しか使えないが、その分大量のMPをつぎ込んだ。それなりの大きさになった炎は、真っ直ぐロボットへ向かって飛んで行き、そしてロボットにぶつかり、爆発した。


「どうかな・・・?」


その辺の人なら軽く死ぬレベルの攻撃だが・・・


「やっぱ駄目か」


炎と煙の中からロボットが勢い良く飛び出し、こちらへ向かって駆けてきた。


だが、その途中で、仕掛けておいた地雷を踏み抜き、爆発させた。


これまでやっていたように、相手が今踏み込もうとしている地面に直接地雷を仕掛けるなんてことは、ロボットが速くて出来ないが・・・ロボットは一直線に向かってくる。なら、その進路にいくつか纏めて仕掛ければいいだけだ。


一つ踏めば誘爆し、複数の爆発が一斉に襲い掛かる。これで、殺せたかどうかは分からないが、足を飛ばすことくらいは出来るはずた。


爆風が晴れると、確かにロボットの足は吹き飛んでいた。だが、


「何だ、それは・・・」


ロボットの足が、再生(・・)していた。再生、だ。まるでビデオの早送りの様に、新しく生え変わった。


数秒で足を再生したロボットは、再びこちらへ向かい飛んでくる。


「チッ・・・!」


『アイテムボックス』から聖剣アルストを取り出し、斬りつけてきた爪を受け流す。


まともに受けてはならない。もし受けて、それで手が痺れたら終わりだ。無駄に高いDEXの所為で、一度痺れたら恐らく一分は手が使えなくなる。


そうなったら不味い。金属相手に俺が蹴りや拳で挑むのは無謀だ。攻撃した反動で動けなくなる。逃げるしかない。相手の実力が未知数である以上、逃げ切れる保証は無いし、逃げきれてもキリナに矛先を向けられたら困る。


先程『戦線離脱』を使って逃げたら、何故かロボットは動かなくなっていた。その動かなくなっているうちに、攻撃するのも一つの手であるが、駄目だな。


また動かなくなるとは限らないし、というかそもそも相手の身体が金属だから、斬りつけた結果手が痺れました、なんてことになり、それでロボットが攻撃してきたら終わりだ。


となると罠で殺すしかない。だが、罠は相手が動いていなければ使えない。だから、『戦線離脱』を使っても仕方ない。時間稼ぎくらいにはなるだろうが・・・


ロボットが動かなくなっているうちに、キリナを連れて逃げる、というのも駄目だな。このロボットは、わざわざこんな場所に現れて、俺に攻撃してきた。多分、俺がターゲットなんだろう。ならば、ここで逃げても仕方ない。また襲ってくるだろう。


ただ単に、このロボットは偶然ここに現れて、近くに居た人間を襲ってきただけ、という可能性もあるが、それなら更に逃げては駄目になる。


俺がここまで追い込まれているんだ。他の奴が襲われたら、確実に殺される。だからもう、ここでこのロボットを殺す以外に選択肢は無い。


キリナと共闘する、というのも無しだ。地雷を仕掛けて、キリナが踏んでしまったらどうしようもないし、罠無しで剣のみで戦うなら俺が戦力外になるし、俺よりキリナが強いなんてことはないだろうから、それなら俺一人で戦った方が良い。


同様の理由で、キリナ一人に戦ってもらうのも無しだ。


さてこの状況、いったいどうしたら良い?

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