第47話 愛していた
思ったより書けた。次回で過去編終わります。
4月になり2年生になった。すると、私と水瀬君は別々のクラスになってしまった。
と言っても、大した問題じゃない。一緒に授業を受けられないのは残念だけど、休み時間になれば水瀬君のもとに行くから、私はそれで満足だった。
そんな風に、休み時間になれば水瀬君のもとに行く生活を暫く続けていると、
「ねえ桐生さん?ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」
「・・・なに?」
水瀬君のクラスメイトの女子に話しかけられた。この人は確か、水瀬君のクラスの中心人物だったはずだ。私に何の用かな?
「桐生さんってさ、水瀬君と付き合ってるの?」
そんなことを聞かれた。
「水瀬君とは仲が良いけど、別に付き合ってないよ?」
デートみたいなことをしたこともあるけど、水瀬君とは付き合っては、いない。
「へー、そうなんだー。じゃあさ、もう水瀬君に付きまとうのは止めてくれない?」
「え・・・?」
今、何て言ったの?水瀬君に付きまとうのは、止めて?
「彼女でもない他のクラスの女子が休み時間になる度に来られたら、水瀬君だって、鬱陶しいと思ってるわよ?」
「水瀬君はそんなこと・・・」
思ってるはずがない。水瀬君は、優しいから。
「水瀬君がクラスでどんな風か教えてあげる?桐生さんがいつまでもくっ付いてるから、水瀬君、クラスで孤立してるのよ?」
「・・・!」
確かに、水瀬君がクラスの誰かと話しているのを見たことはない。
「でも・・・」
「・・・桐生さん。分かってないみたいだから、直接言ってあげる」
その女子は、冷酷な目になり、
「桐生さん。あんた目障りなのよ」
そんなことを、言った。
「え・・・」
「私達も水瀬君と仲良くなりたかったけど、あんたが水瀬君と付き合ってるんだと思って、遠慮してたのよ?」
「でも、水瀬君に聞いてみたら、別に付き合ってはいない、って言うんじゃない」
「知ってる?水瀬君を狙ってる子って、結構多いのよ?それなのに彼女でもないあんたがいっつも一緒にいる所為で、チャンスが全然ないのよ」
「だから、もう水瀬君に付きまとうのは止めなさい」
その女子は、一切反論を許さないように、強く言った。
「でも、私は・・・!」
「桐生さん。これ以上貴女が水瀬君に付きまとうなら、私達もちょっと過激な手段に出ることになるわよ?」
「過激な、手段・・・?」
「ええ。あんたの事は少し調べたけど、あんたは去年、男子にいじめられていたそうね?」
そうだ。そしていじめられていた私を、水瀬君が助けてくれた。
「そこで水瀬君に助けられた。良かったわねー。助けられた貴女にとっては、水瀬君は王子様の様に思えたんでしょうね」
「でも、助けてくれたのは、男子が分かりやすく、シンプルにいじめたから、止めることが簡単だったからよ」
そこで彼女は、愉しそうな顔になり、
「知ってる?女の子のいじめは、男子よりも陰湿で、残酷なのよ?」
と言った。
「私は貴女のクラスにも何人か友達がいてね。その子達に頼めば、クラスで友達いないあんたを楽しんでいじめるでしょうねー」
「頼みの水瀬君も、他のクラスで、しかも水面化で起こるいじめからは助けようがないでしょうね」
「これは警告よ。覚えておきなさい」
彼女は振り返り、
「あまり調子に乗ってると、潰すわよ?」
その言葉を最後に、去っていった。
「・・・・・」
私は、どうすれば良いんだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから私は、水瀬君のもとへは行かなくなった。水瀬君とは、一度も会っていない。それから2週間が経った放課後、
「桐生」
水瀬君が、私のもとへ来た。
「お前、何故最近来なくなったんだ?一体何がーーー」
私は、その場から逃げ出した。
「おい!桐生!?」
水瀬君が私を呼んでいるが、振り返ったりはしない。振り返れば、私は必ず水瀬君を頼ってしまうだろうから。
気がつけば、校舎裏に来ていた。ここには、誰もいない。
「あ、ああ・・・水瀬君・・・」
涙が溢れてきた。今日で決定的に、水瀬君と決別してしまった。せっかく話しかけてくれた水瀬君から、逃げ出してしまった。
何故こんなにも胸が苦しいんだろう。何故こんなにも焦がれるのだろう。何故こんなにも涙が出るのだろう。
・・・ああ、私は今になって漸く気づいた。私は、水瀬君を好きになっていたのだ。一人の、異性として。愛していた。
だけど、今までの様に、水瀬君といることは出来ない。私は結局、水瀬君よりも自分の身の方が大事だったのだ。私も水瀬君を助けたい、と言ったのに、私は逃げた。愛していたのに、私は逃げた。こんな私には、水瀬君と一緒にいる権利は、無い。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから暫く経ち、水瀬君とは完全に関わりが無くなった。最初は水瀬君も、私を見ると何か言いたげな顔をしていたが、今では眉一つ動かさなくなった。
水瀬君の周りには、あの時私を脅した人達がいる。でも、水瀬君はつまらなそうに、冷めた表情だった。
そして私は、クラスどころか、学校内で仲の良い人がいなくなった。まあ、あの時逃げ出した私には当然の報いだろう。
偶に、男子から告白されることもあったけど、興味は無い。全て断った。彼ら程度では、『水瀬君』を知った私には、何の魅力も感じられなかった。
月日が経った。3年生になったが、私はまた水瀬君と同じクラスにはなれなかった。
それでも良い。偶に水瀬君を見れるだけでも、私は満足だ。
新しいクラスメイトは、男子だけでなく女子からも何人か話しかけてくれたけど、興味は無い。貴方達では、水瀬君に遠く及ばない。
また月日が経つ。受験のシーズンになった。水瀬君と同じ高校に行こうと思う。
水瀬君が選んだ高校はレベルが高いところだったけど、問題は無い。水瀬君がどこの高校を選んでも大丈夫な様に、必要な学力はつけた。
合格発表の日になった。高校に行って合格者の受験番号の書かれた紙を見ると、水瀬君も私も合格していた。これで高校からも水瀬君を見ることが出来る。
そこで誰かに名前を呼ばれた様な気がしたが、気の所為だろうか?
卒業式の日が来た。何の感慨も無いけど。水瀬君も全くの無表情だった。
高校の入学式。またもや水瀬君と同じクラスにはなれなかった。何人かの男子に連絡先を聞かれたけど、全部無視した。
あと、白河君、だったかな?同じクラスで、周りの女子が何度も噂していたので名前を覚えた。その人が、何か言いたげな顔で私を見ていたけれど、一体何だったのだろう。
月日が経つ。10人以上の男子から告白された。上級生も何人かいたと思う。全部断ったし、そもそも顔も名前も覚えてないから知らないけど。
球技大会の日になった。水瀬君はサッカーに参加している。応援したかったけど、他のクラスの生徒を応援するのもどうかと思うし、それで変な噂を立てられたら水瀬君に迷惑なので止めておいた。
水瀬君のクラスは決勝まで進み、私のクラスと戦うことになった。
水瀬君のクラスの方がサッカー部の人は多いけど、私のクラスには白河君と宮野君っていうサッカー部の1年生レギュラーがいて、水瀬君のクラスは1点差で負けていた。
水瀬君がボールをキープしているけど、白河君に奪われそうになっていた。
そこに、宮野君がスライディングをすると、遠くだったのでよく分からなかったけど、白河君が足首を、スライディングをした宮野君が、膝を抑えて苦しみだした。
怪我をしたらしい2人は退場し、主力を欠いた私のクラスは、そのまま敗北した。水瀬君達の勝ちだ。
球技大会の日から暫く経つと、水瀬君についての噂が流れ出した。水瀬君は中学で一度に何人もの女子と付き合っていた、とか、水瀬君は不良グループとの繋がりがある、とか、水瀬君は、球技大会でわざと白河君と宮野君に怪我をさせた、とか。
全部嘘だ。私が言うんだから間違いない。水瀬君は二股どころか女子と付き合ったことすら無いし、不良グループとの繋がりなんて全く無いし、わざと怪我をさせようともしない。水瀬君は冷めていて冷酷に見えるけど、怪我をさせてまで勝とうとはしない。
しかし、大半の人は、その噂を信じた。信じた、というより、その噂のせいで水瀬君は敬遠されるようになり、それが事実のようになった。
それまで水瀬君の周りには女子が何人かいたけど、それからは全く近寄らないようになった。結局、彼女達の好意はその程度だったというわけだ。それまで媚び続けていたのに、悪い噂が流れるとすぐに離れる。
水瀬君を本当に愛しているのは、私だけだ。
月日が経つ。12月頃、変化が起こった。水瀬君は孤立していた。女子は一度堕ちた水瀬君には興味を見せず、男子はそんな水瀬君に好き好んで仲良くしようとはしなかった。また水瀬君も、誰かと関わろうとはしなかった。
だが、ある日から、一人の男子生徒が水瀬君と一緒にいるようになった。
名前は佐藤拓郎。特に目立ったところは無い、至って普通の男子だ。
驚いたことに、水瀬君は、その佐藤君といて、楽しそうにしていた。笑っていた。あんな水瀬君は、見たことが無い。私といた頃も、あんなに楽しそうにはしていなかった。
・・・嫉妬した。出来れば、そこには私がいたかった。
でも、水瀬君は凄く楽しそうだ。大事なのは私が一緒にいることではなく、水瀬君が楽しいかどうかだ。佐藤君には、感謝することにしよう。
・・・あと、水瀬君ってあんな喋り方するんだ。性格変わってないかな?いや、水瀬君は水瀬君だ。気にしないことにしよう。
4月になり進級すると、遂に水瀬君と同じクラスになることが出来た。
これで、授業中にも水瀬君を見ることが出来る。佐藤君と楽しそうに笑っている水瀬君を見ていると、私も嬉しくなる。同じクラスになれて良かったなあ・・・
ずっと水瀬君を見ていると、なんとなく水瀬君が、何を考えているのか分かるようになってきた。だからなんだという話かもしれないけど。
また球技大会の時期になった。すると、クラスの男子から、応援リーダーをやって欲しい、と頼まれた。
私は最初断るつもりだった。あんな恥ずかしい格好、したくないし。
だけど、私は気づいた。応援リーダーになれば、水瀬君を堂々と応援できるのではないか?と。迷った結果、応援リーダーになることにした。
すると、周りにいた男子から歓声が起こった。別に貴方達を応援するわけではないんだけど・・・
そこで、水瀬君の声がした。周りは煩かったけど、何故かその声はよく聞こえた。
「もしかして俺、桐生のことが好きだったのか?」と。
え・・・水瀬君は、私のことが好きだった?
思わず水瀬君の側に行き、「水瀬君」と、呼んだ。呼んでしまった。水瀬君と話す予定はなかったのに。
「何か用か?」
と、水瀬君が応えた。ああ、応えられてしまった。私が呼んだのだから当然だけど。
どうしよう、何を話せば良いんだろう。
「私、中学で水瀬君と同じクラスだったよね?その時のこと、覚えてる?」
と、聞いた。
「ああ、よく覚えている」
と、答えてくれた。
「覚えててくれたんだ・・・」
念の為だったけど、ちゃんと覚えててくれたみたいで良かった・・・
「水瀬君に言いたいことがあるんだけど・・・」
もうここまで話してしまった。恥ずかしいけど、いっそ、ここで想いを伝えよう。
「私、水瀬君のことがーーー」
そこまで言うと、突然、何かが強く光り、私の意識は途絶えた。
今日はバレンタイン!みなさんはいくつチョコをもらいましたか!?筆者は例年通り0です!もし、筆者と同じくチョコを一つも貰えず、暇な方は、感想に『リア充爆発しろ!!!!』とお願いします。その数が多ければ多いほど、筆者のモチベが上がります。
あとシスティア好きの皆様。喜んで下さい。次回から出てきます。




