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第32話 桐生さんに感謝

何故か分かんないけど桐生さんが滅茶苦茶ニコニコしてる。


なんとか桐生さんの暗殺計画を阻止した数日後、俺、佐藤拓郎は凄い良い笑顔の桐生さんを発見した。


アキラが居なくなってからだと、こんなに良い笑顔で笑う桐生さんを見るのは初めてだ。いつも怖い笑顔浮かべてるからなあ・・・


見ると写真か何かを見ているようだ。何の写真だろう。いや、桐生さんがあんなにニコニコしてる時点で誰の写真かは想像つくが。


桐生さんの背後に回り覗いてみると、案の定アキラの写真だった。桐生さんも一緒に写っている。


ん?これ、プリクラだな。いつ撮ったんだ?桐生さんがアキラに積極的に関わるようになったのはこの世界に来てからだよな。この世界にプリクラなんてないから撮れないはずだが・・・


その写真をよく見ると、アキラも桐生さんも今より幼く見える。


「あの、桐生さん。もしかしてこれ、桐生さん達が中学生の時に撮ったんですか?」


そういえば前に、アキラが桐生さんとは中学生の時に同級生だったと言っていた。その時に撮ったのかな?


「そうだよ。これは初めて水瀬君とお出かけした時に撮ったんだ」


やっぱりか。というか桐生さん、いつもよりも穏やかな声だな。アキラの写真を見て穏やかな気持ちになったのだろうか。いつもは話しかけても冷たくあしらわれるだけだからなあ・・・


幸せそうに写真を見つめる桐生さん。写真見るだけでそんなに幸せになれるならずっと見ていて欲しい。桐生さんが何かするたびに精神がガリガリ削られるので、俺の心の平穏のためにもずっとそうしていて欲しい。


「あの、すみません・・・」


背後から誰かに話しかけられた。振り返ってみると、


「お、王女様!?」


王女様が居た。俺に何か用があるのだろうか。


「その、桐生さんに話があって・・・」


桐生さんに?何の用だろうか。まあ、今の桐生さんはとても優しいし、話しかけても大丈夫だろう。ちなみに普段の桐生さんに話しかけると、とても冷めた目で見られて怖い。


「あの、桐生さん?」


「・・・何?」


あ、怒ってる。これ話しかけちゃ駄目な感じだった。だが、もう話しかけてしまったので会話を続行するしかない。


「いや、その・・・。王女様が桐生さんに話があるみたいで・・・」


何の感情も見せない目で王女様を見る桐生さん。王女様をそんな目で見ていいのだろうか。


「・・・何ですか。今忙しいんですけど」


いや、写真見てるだけでしょう?まあ、それが桐生さんにとっては最優先事項なのかもしれないが・・・


「いや、その・・・。水瀬さんのことについて話がありまして・・・」


王女様がそういった瞬間、一気に殺気を剥き出してきた桐生さん。王女様にそんな殺気を向けていいのだろうか。いや、良くない。どう考えても良くない。だが、俺に止めることはできない。だって怖いもの。


「水瀬君について?何の話ですか?」


「ひぃっ!?」


王女様滅茶苦茶怖がってるじゃないですか。桐生さん、もうちょっと手加減してあげてください。


「何ですか?早く言ってもらえませんか?」


「いやあの、その・・・何と言うかですね・・・」


王女様たじたじ。もうやめたげてよぉ!王女様威厳ゼロじゃないですか!最初から無かった気がしないでもないけど!


「王女様?」


「えっと・・・その・・・」


ああ、駄目だ。王女様完全にビビってる。仕方ない、俺がなんとかフォローしよう。


「えー王女様?その話、俺にも聞かせてもらっていいですか?」


桐生さんではなく俺に話すようにすれば、多少は桐生さんの恐怖を緩和できるだろう。


「あ、はい。そのですね、もしかしたらなんですけど・・・。水瀬さんが居なくなった原因、お父様にあるかもしれないんです」


その通りです。貴女の父、国王が暗殺しようとしたせいです。というか王女様。それ桐生さんに教えちゃ駄目でしょ・・・


「どういうことですか?詳しく教えてください」


桐生さんが王女様に詰め寄る。


「えっと、本当かどうかわからないんですけど・・・。水瀬さんが行方不明になる直前に、お父様が暗殺者を雇ったみたいなんです」


あ、これ終わったわ。確実に桐生さんブチ切れるわ。


「・・・それってつまり、水瀬君を暗殺しようとしたってこと?」


だが、予想に反して急に静かになる桐生さん。


「はい、その可能性は高いです。あまり、信じたくないんですけど・・・」


「・・・・・・」


黙り込む桐生さん。あれ?おかしいな。てっきり、発狂したかと思われるほどのキレ方をすると思っていたが・・・


ちょっと安心したその直後、膨大な量の魔力と殺気が桐生さんから溢れ出た。


「そっかぁ。あの国王(クズ)、そんなことしてたんだ。なら、その報復をしなきゃいけないね」


「あ、あ・・・」


怖い怖い怖い!滅茶苦茶怖い!王女様がへたり込むくらいには怖い!


「あの毒、とっておいて良かった。こんなにも早く必要になるなんて」


どこかに行こうとする桐生さん。いや、あれは確実に国王を、毒殺するつもりだろう。そんなことさせるわけにはいかない。


アキラが桐生さんに自分が殺されかけた、という事を教えなかったのは、恐らく桐生さんを国王と敵対させないようにするためだろう。なら、俺はアキラの意思を汲み取り、此処は全力で桐生さんを止めるべきだ。


「待って下さい桐生さん!あのクズを殺すのはやめて下さい」


桐生さんの前に立ち塞がる。失禁しそうな位に怖いが、気合いで堪える。此処には王女様も居るのだ。俺も可愛い女の子の前で醜態を晒したくはない。


「なんで止めるの佐藤君。佐藤君は、あのクズが憎くないの」


可愛らしく首をかしげる桐生さん。今そんな事されても別に可愛くないですから。怖いだけですから。


「確かに、あのクズにアキラが殺されかけたと知った時は腹が立ちました。ですが、実際に殺されかけたアキラは、俺たちにクズと敵対して欲しくないんです。なら、俺たちはその意思に従うべきでしょう」


必死に桐生さんを説得する。頼む、これで怒りを鎮めてくれ・・・!もうそろそろ腰が抜けそうなんだ!女の子にビビって腰が抜けるとか恥ずかしすぎるんで!


「・・・分かった。今はクズを殺さない事にする」


そう言って、どこかへ歩いていく桐生さん。良かった、桐生さんは嘘をつかない。これで大丈夫だろう。というか、国王をクズって呼ぶの定着したな。どうでもいいけど。


「ふう、なんかすごい疲れた・・・。あ、王女様、大丈夫ですか!」


気付けば倒れている王女様に駆け寄る。


「あ、気絶してる・・・」


王女様は気絶していた。仕方ないか。戦場に立った事もないであろう王女様が、あんな殺気をいきなり受けたら気絶するのも無理はない。


「・・・どうしよう」


どう考えても放置するのは駄目だろう。かと言って、気絶した王女様を運んでも、処刑ルートへまっしぐらだ。


「仕方ない、目を覚ますまで待つか・・・」


それしかやりよう無いし。さて、どれ位待つ事になるか・・・





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


3時間後


「んー。よく寝ました・・・」


あ、やっと起きた。


グッと背伸びをし、首を回す王女様。そこで俺と目が合った。


「な、何で佐藤さんが!?」


え、忘れてしまったのかな?


「いやあの、王女様が気絶してしまったので、ずっと待っていたんですけど・・・」


そう言うと、やっと思い出したようで、顔を赤く染める。


「そうでした・・・。あの、桐生さんはどうなりましたか?お父様を、殺すとかどうとか言ってましたけど・・・」


「ああ、なんとか止めることが出来ました。」


「そうですか・・・」


ほっと安心する王女様。よく考えれば王女様ってあのクズの娘なんだよな。どうして王女様はこんなに良い人なのに、父親はあんなにもクズなんだろう・・・


「あの、私、どの位気絶してましたか?」


「大体3時間位ですかね」


「え、そんなにですか?」


驚いている王女様。3時間気絶って長いのか?俺、丸一日気絶していた事あるんだけど・・・


ふと何かに気づ様子の王女様。


「あの・・・もしかして、3時間の間、私が目覚めるの待っていたんですか?」


「そうですけど?気絶している女の子を放置するわけにもいきませんし」


そう聞くと、サッと青褪める王女様。


「も、申し訳ありません!貴重な時間を私の所為で無駄にしてしまって・・・」


そう言って、頭を下げてくる。


「いやいや、その位大丈夫ですって!頭を上げてください!」


俺個人の為に、王女様に頭を下げさせるなんてとんでもない。こんなとこ騎士団長あたりに見られたら、俺が怒られてしまう。


「ですが・・・」


「大丈夫ですって。この3時間王女様を守る騎士として過ごせたんですから、楽しかったですよ。寝顔を見る事も出来たんですから、寧ろご褒美ですよ」


言ってから気づいた。これセクハラじゃないか?


「ね、寝顔・・・」


「いや、違います見ていません!いや、ちょっとは見ましたけど・・・見ていません!」


俺は何を言っているんだろう。見てるって言ったり見てないって言ったり。


「大丈夫ですよ佐藤さん。寝顔くらい見られても気にしませんよ。私を守ってくださったんですよね?ありがとうございます」


そう言って、笑顔を浮かべる王女様。その笑顔に俺は・・・見惚れてしまった。


「あの、佐藤さん?」


「あ、はい、ありがとうございます王女様!」


いや、何言ってるんだ俺は。何に感謝してるんだよ・・・


「ふふ、おかしな方ですね。そうだ、私のこと、王女様ではなくミルフィ、と呼んでもらえませんか?」


「え!そんなの恐れ多いですよ!」


「大丈夫ですよ。寧ろ、ここで断った方が失礼ですよ?ダメ、ですか?」


悲しげな顔をする王女様。そんなこと言われたら、断れないじゃないですか。


「駄目じゃないです!えっと、ミ、ミルフィさん?」


「はい佐藤さん」


嬉しそうに笑う王女様・・・ではなくミルフィさん。・・・また見惚れてしまった。


「・・・別にさん付けしなくても良いですよ?」


「それは流石に無理です!これで勘弁して下さい!」


楽しげに笑い合う俺とミルフィさん。今まで桐生さんには振り回されてばかりだったけど・・・。こうしてミルフィさんと仲良くなれたんだし、感謝しようかな?

桐生さんのヤンデレ回、かと思ったらモブのいちゃつき回。リア充爆発しろ。


マイページ公開したいのに出来ない・・・。誰かやり方教えてくれませんかね?掲載出来なかったクリスマス特別回を、活動報告かなんかで掲載したいんですけど。


12月29日より閑話を載せました。調べれば出てくるので、良ければ読んでください。

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