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第27話 手遅れだった。

一ヶ月もかかるとは思いませんでした

「フフフフ、水瀬君水瀬君水瀬くぅん・・・」


エンデス王国の王城で、明らかにヤバイ感じの雰囲気を出している女性が1人いた。大きな釜で明らかに毒です、と言わんばかりの色のドロドロした液体を調合しているその後ろ姿は、完全に童話に出てくる悪い魔女である。


それを見た俺ーーー佐藤拓郎の言いたいことはただ一つ。


怖いです。お願いだから早く帰ってきてくれアキラ。桐生さんをなんとかできるのはお前しかいない。


「フフフフ、もうすぐこの城のゴミ共をぶっ殺して見せるからね・・・」


こんなことになってしまいました。お願いです。ヘルプミー!!


何故桐生さんがこんな物騒なことを言っているのか、その説明をするには、数日前のことから話さなければならないだろう。はい、回想。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


白河から変な絡みを受け宮野達から桐生さんを守った、が気づいたら桐生さんが居なくなっていた悲しい事件の数分後、俺は居なくなった桐生さんを探していた。


「あ、居た」


桐生さんを見つけた。なにやら考えている様子。


「おーい桐生さーん。どうかしたんですか?」


「・・・あのね佐藤君。ちょっと聞きたいんだけど」


何やら問いかけてくる。置いていった事はスルーですか。悲しいです。でもめげないぞ。


「何ですか?俺に答えれることならなんでも聞いて下さい」


「水瀬君が城を出て行ったのって、もしかしたらこの城の人達から酷い扱いを受けてたからなんじゃないかな・・・」


む、これはどう答えるべきか・・・。恐らくアキラは桐生さんに心配させたくないだろう。だから手紙に遊びに行く、なんて書いたんだろうし。桐生さんに本当のことを言ってもいいのだろうか・・・。よし、


「まあ、それも少なからずあると思いますよ?あいつ、平気なフリしてますけどそれでも多少は傷付いてるでしょう。結構酷い扱い受けてたみたいですし」


アキラも結構酷い目にあっていたのだ。それを言わないのは城の人達を庇うみたいになるので嫌だ。が、


その瞬間空間が凍った。様に感じた。桐生さんから発せられる負のオーラによって。


「・・・酷い扱い?どういうこと?私はそんなの知らないんだけど。水瀬君がどんな事されたか、教えてくれる?」


「いや、その・・・。最初は訳のわからない雑用をやらせるのから始まり・・・。まともな食事を与えなかったり、殆どの施設の利用を禁止したり、背後からいきなり魔法を撃ったり、訓練と称して何の武器も持たないアキラに刃の潰してない剣で斬りかかったりとか、色々・・・」


まあ、大体システィアさんがなんとかしてたけど。なんなんだろうねあの人。魔法を剣で斬るとか、一部では奥義扱いされてる事を平然とやってたけど。悪い人じゃないのは確かだろうが。


そして、案の定というかなんというか・・・空気が凍った。


「・・・あの人達そんな事してたんだ。へー。そっか・・・。そんなに死にたかったんだ!」


「ひっ!?」


その瞬間、桐生さんの体から溢れる魔力の奔流。あれ、何でこんなに魔力あるの桐生さん?俺と大してレベル変わらないはずだよね・・・。


呑気に考えてるが、現実逃避してるだけです。別に余裕なんてない。


「そんな事されたなら私に言ってくれれば良かったのに・・・。水瀬君・・・。今すぐ水瀬君に酷いことをした奴らは皆殺しにしてみせるからね。そして、私と一緒に居て?」


なんかかなりバイオレンスなこと言ってる割に望みは結構可愛らしいですね。


いや待て、アキラに酷いことをした奴らには偉い人も居るんだぞ。殺したら絶対指名手配される。そんなことになったら確実に殺される。俺がアキラに。


「あのぅ桐生さん?皆殺しにしたら殺人犯になってしまって、アキラと一緒に居るのは難しくなると思いますよ?」


最近の桐生さんは暴走しがちだが、アキラの名前を出せば冷静になってくれる。アキラマジ偉大。暴走するのもアキラの所為だけど。


「大丈夫、全員毒殺するから。バレないようにする」


だが、今回はアキラの名前も意味を為さなかったようだ。


「いやいや!そういう問題じゃないと思うんですが!?」


「大丈夫。バレなければ何をしても良いんだよ?」


ちょ、それ犯罪者が言う理屈。


「じゃあ早速あのゴミ共を抹殺する為に準備しなきゃ・・・」


そう言ってどこかに行こうとする。


「いやあの!?思いとどまってください!お願いだから話聞いてーー!!?」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


と、こんな感じで現在に至る。その後も頑張って桐生さんを止めようとしたが駄目だった。多分誰の言うことももはや聞かないだろう。


だがアキラなら。アキラ可能性がある。この暴走気味の桐生さんを止める可能性がーーーーーー!


まあ、いないからどうしようもないんですけどね。ははっ、終わった。


「フフフ、後はこのアゼルフィアードラゴンの肝を入れれば完成・・・」


もうすぐ毒も完成しちゃう様子。というかアゼルフィアードラゴンの肝って、そんな凄そうなのどこに手に入れたんだ。


だが止めなきゃいけない。じゃなきゃアキラがブチ切れる。『あのクズ共の所為で雪菜の手が汚れるとは・・・。お前何で止めなかったんだ?死にたいのかお前』とかって言ってキレるに決まってる。俺はまだ死にたくないのだ。意地でも止めてやる!


「やっぱり止めましょうよ桐生さん。あんな奴らの為に桐生さんの手を汚す必要ないですって。そんなことになったらアキラも悲しみますよ?」


さて、どう止めればいい・・・。物理的にではなく言葉で説得しなければならない。物理的止めたらアキラが『何雪菜を傷付けてんだテメェ!!殺す!!』とかって言ってキレるに決まってる。というかそもそも、俺桐生さんに勝てる気しないから物理的に止めるの不可能なんだよな。ホント、どうしよう・・・


「・・・そうだね。水瀬君、優しいから・・・。自分の所為で雪菜の手を汚してしまった、って自分を責めるだろうし・・・。うん分かった。そうする」


・・・・・・・・・・えっ。


え、そんな簡単に止めちゃうの?アキラが悲しむって言ったら一発ですか?・・・俺の今まで心労を返して欲しい。


「じゃあ、今度は特訓しなきゃ・・・。今の私の強さだと、水瀬君には釣り合わないし・・・」


そう言って、どこかに行こうとする。え、俺のことは放置ですか?


「いや、待って下さ・・・」


追いかけようとしたが、なぜか既に桐生さんは俺の視界から消えていた。歩くの速すぎじゃね?





こうして、日々あんまりな扱いを受けることによって俺のドMレベルは着実に上がっていき、鋼の精神を得ることに成功したのだった。


え、どうしよう全然嬉しくない。というか桐生さんをこんなにおかしくしているアキラは、その責任を取って桐生さんを嫁にもらうべきだと思いました。いやホント、さっさと何とかして欲しい。そろそろ俺の心が折れそうです。

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