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楡井からの提案で、勉強場所はわたしの教室から図書室へと移すことにした。
二人とも図書委員なのだから、その特権を活かし、カウンターの後ろにある準備室を有効利用しようとなったのだ。
準備室での勉強初日、図書室へ向かうわたしは、廊下ですれ違う同級生たちの視線に、今もなお同情や憐れみの色があるのを感じた。居心地が悪く嫌ではあるが、彼らの気持ちもかわるのでしょうがなくもある。
図書室は、新校舎にある。
本校舎と新校舎を繋ぐ渡り廊下を歩いていると、そこ立っていた一人の男の子と目が合った。身長は、笙子と同じか少し低いくらいで、やせ気味だ。
「朝倉さん」
声をかけられる。知り合い?
同じ学校だから、誰もが知り合いと言えば知り合いなのだろうけれど。
「何か、わたしに?」
「勉強なら、ぼくが教えようか」
そうきたか。笙子、モテるな。
「ごめんなさい。勉強は、楡井君に教えてもらうことになっているの」
「朝倉さんと楡井って、仲が良かったっけ? 以前、ぼくが勉強を教えてもらっているとき、そんな話は出なかったよね」
彼はいったい誰だろう?
「ご存知ないかもしれないけれど、わたし、記憶が曖昧なの。だから、あなたのことも覚えてないの。よければ、お名前を教えてくれないかしら」
「芦田 祐仁。1年生の時に、朝倉さんと同じクラスだった」
芦田の名前は、和可奈の話に出てきたので憶えている。高校1年生の4月にトラブルのあった男の子だ。
「芦田君。こんなこと言うのは気が引けるけれど、以前は、わたしがあなたに勉強を教えていたって聞いたわ。なのに、教えるって、大丈夫なの?」
控えめながらも、聞きたいことを言うと、芦田は、ふふっと笑った。
「朝倉さんの影響で、ぼくも勉強を頑張ってるんだ。それに、聞くところによると、ここ最近の朝倉さんの成績は、ガタ落ちだそうじゃないか。それなら、ぼくでも力になれると思ってさ」
カチンときた。
芦田の言うことは間違っていない。
事実、その通り。
あっていますけど。そうですけど。
その表現にムカつく。
「芦田君、わたしの成績が上がろうが下がろうが、あなたには関係ないわ」
「関係ないっていったら、楡井だって関係ないと思うけど! それに、楡井だって、朝倉さんよりも勉強ができたとは思えないけど!」
芦田が強い口調で言い返してきた。




