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ごめんね、もう少し  作者: 仲町鹿乃子
2・香奈→楡井君
17/50

4―1

 楡井にれいからの提案で、勉強場所はわたしの教室から図書室へと移すことにした。

 二人とも図書委員なのだから、その特権を活かし、カウンターの後ろにある準備室を有効利用しようとなったのだ。


 準備室での勉強初日、図書室へ向かうわたしは、廊下ですれ違う同級生たちの視線に、今もなお同情や憐れみの色があるのを感じた。居心地が悪く嫌ではあるが、彼らの気持ちもかわるのでしょうがなくもある。


 図書室は、新校舎にある。

 本校舎と新校舎を繋ぐ渡り廊下を歩いていると、そこ立っていた一人の男の子と目が合った。身長は、笙子と同じか少し低いくらいで、やせ気味だ。

朝倉(あさくら)さん」

 声をかけられる。知り合い? 

 同じ学校だから、誰もが知り合いと言えば知り合いなのだろうけれど。

「何か、わたしに?」

「勉強なら、ぼくが教えようか」

 そうきたか。笙子、モテるな。

「ごめんなさい。勉強は、楡井君に教えてもらうことになっているの」

「朝倉さんと楡井って、仲が良かったっけ? 以前、ぼくが勉強を教えてもらっているとき、そんな話は出なかったよね」

 彼はいったい誰だろう? 

「ご存知ないかもしれないけれど、わたし、記憶が曖昧なの。だから、あなたのことも覚えてないの。よければ、お名前を教えてくれないかしら」

芦田あしだ 祐仁ゆうじん。1年生の時に、朝倉さんと同じクラスだった」

 芦田の名前は、和可奈の話に出てきたので憶えている。高校1年生の4月にトラブルのあった男の子だ。

「芦田君。こんなこと言うのは気が引けるけれど、以前は、わたしがあなたに勉強を教えていたって聞いたわ。なのに、教えるって、大丈夫なの?」

 控えめながらも、聞きたいことを言うと、芦田は、ふふっと笑った。

「朝倉さんの影響で、ぼくも勉強を頑張ってるんだ。それに、聞くところによると、ここ最近の朝倉さんの成績は、ガタ落ちだそうじゃないか。それなら、ぼくでも力になれると思ってさ」


 カチンときた。

 芦田の言うことは間違っていない。

 事実、その通り。

 あっていますけど。そうですけど。

 その表現にムカつく。


「芦田君、わたしの成績が上がろうが下がろうが、あなたには関係ないわ」

「関係ないっていったら、楡井だって関係ないと思うけど! それに、楡井だって、朝倉さんよりも勉強ができたとは思えないけど!」

 芦田が強い口調で言い返してきた。


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